マンガン乾電池とアルカリ乾電池(江頭教授)
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高校の化学の教科書で「乾電池」として紹介されているのは「マンガン乾電池」ですが、電池を購入しようと思って店頭に行くと「マンガン乾電池」はほとんど見つかりません。おいてある乾電池のほとんどは「アルカリ乾電池」です。
「そうか、マンガンの代わりにアルカリを使う乾電池なのか」
などと思ってしまいますが、実はアルカリ乾電池は「アルカリマンガン乾電池」の略称です。亜鉛を陰極に、二酸化マンガンを陽極に、という構成は「マンガン乾電池」でも「アルカリマンガン乾電池」でも同じですが、電解液が酸性の「マンガン乾電池」に対して「アルカリマンガン乾電池」ではその名の通りアルカリ性の電解液が使われている、というのが本当のところです。
「酸の代わりにアルカリを使うマンガン乾電池なんだ」
というべきですね。
電池工業会の「なるほど電池Q&A」というページには乾電池についての分かりやすい解説がまとめてあります。その中の「アルカリ乾電池とマンガン乾電池の違いは何ですか?」 という項目ではアルカリ乾電池の特徴は「パワーがあり、長持ちです。」とされています。「パワーがある」という表現は何となく「高電圧」をイメージしてしまいますがどちらの電池も電圧は1.5Vなので「パワーがある」=「長持ち」と解釈すべきでしょう。
でははアルカリ乾電池はマンガン乾電池の何倍の電力を発生させることができるのでしょうか?
そう思って乾電池の容量を調べようと思うと、これが意外と書かれていません。なんで?
そのものずばりのQ&A「乾電池には電池の容量を表示していないのはなぜですか?PZ18153」という項目がパナソニックの「よくあるご質問」のページで見つかりました。乾電池は使用時のどれくらいの電流を流すかによって発電できる容量が大きく変化してしまうので一つの「容量」を決めることができないのです。
では、電流を一定にして比較するとどうなるのか?それに対する回答は「[アルカリ・マンガン] 乾電池の電池容量はどれ位? PZ29060」にグラフ付きで示されています。以下はそのページから。単三の「マンガン乾電池」と「アルカリ乾電池」のデータをピックアップしてきました。
どちらの電池も電流量が大きい部分では持続時間が(電流に反比例する以上に)短くなっていますから一定の容量を決めることはできないというのはわかりますね。電流が同じならアルカリ乾電池はマンガン乾電池の3倍くらいの寿命といったところでしょうか。縦軸が対数なので今一つ大きな差に見えませんが、実際に使用する際には大きな違いでしょう。
なお、先に紹介した電池工業会の「アルカリ乾電池とマンガン乾電池の違いは何ですか?」のページではマンガン電池の特徴として
「休み休み使うと、電圧が回復するという特徴があります。」
とあります。そういえば「電池がなくなった」と思って新しい電池を買ってくると「あれっ、まだ使えるじゃないか」となることが時々ありましたね。
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