「長期低炭素ビジョン」を読む(その1)(江頭教授)
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未来の日本はどんな国になっているのでしょうか?別に日本に限らないのですが、未来に人々の生活がどのようなものになっているのか、はとても気になる問いであると同時に、自分の人生を考える時、特に若い人たちには切実な問いであると思います。
私にはもちろん、そんなことを見通す力はありませんが、それは基本的に誰でも一緒です。では未来を予測することは無意味な(でも面白い)遊びなのでしょうか。
そんなことはありません。
「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創りだすことである。 」(The best way to predict the future is to invent it.)
これはパーソナルコンピュータの父と言われる、アラン・ケイの言葉だそうです。私たちが未来を予測するのは、好ましくない未来を避け、望ましい未来を実現するためです。好ましい未来をより具体的に思い描くことができれば、その実現に向けて今やるべきことが見えてくる。これは個人の人生についても企業の将来についても、そして国や世界の未来についても同じことです。
特に大きなレベル、例えば一つの国レベルではその国に住む人々とその政府とが同じ未来の予測を共有していれば、個々人の努力と政府の施策が相まって、その未来を本当に「創りだすこと」ができるかも知れません。
このような共有された未来予測は単なる将来の予想ではなく、望ましい未来を実現させるための目標でもあるのです。その意味での未来予測を未来の「ビジョン」と呼ぶのでしょう。
日本の未来と一言でいっても、それは多分野に渡るものであり、その多くは共通の目標を定めることができないし、定めるべきでもないのです。しかし、人間の生活の基盤となる部分では共通の理念、人類の存続や人々の健康的な生活のような誰もが納得できる理念、に即した目標が定められるべき分野があります。温暖化問題の解決がそれであり、そのためのビジョンをなるべく広い範囲の人々が共有することが温暖化問題の解決に有用なはずです。
このような意味で環境省の中央環境審議会で策定されたのが「長期低炭素ビジョン」です。