可逆反応・不可逆反応と言いますが(江頭教授)
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高校の化学の教科書には化学反応には「可逆反応」と「不可逆反応」がある、と書いてあります。可逆反応は正反応、逆反応どちらにも進む反応で一定条件で充分な時間が経つと平衡に達する。で、その平衡の条件は...と続くわけです。
一方、不可逆反応は「逆反応が普通は起こらない」反応だ、とされています。この「普通は起こらない」というところがミソで普通で無ければ起こるのか、という話になりますね。
さて、不可逆反応の例として良く挙げられる水素ガスと酸素ガスの反応を例にどんな条件が普通でないのか考えてみましょう。
2H2+O2=2H2O+484 kJ
水素ガスと酸素ガスの反応、というか要するに水素の燃焼ですから大きな発熱を伴う反応です。この反応は高温ほど進みにくくなり、逆反応は高温ほど進みやすくなるはずです。ですから、温度が高ければ高いほどこの反応は可逆反応に近づいてゆくでしょう。
もう少し定量的に扱ってみましょう。まず0℃(273K)でのこの反応の平衡定数Kpを計算すると、なんと10の88乗のオーダーとなります。反応式の右辺側(平衡定数の分子側)に圧倒的に傾いています。ともかく10の88乗というのはすごい数値です。1 mol (6.02×1023 個)の水分子を考えた場合、平衡状態の水素分子、酸素分子は1個より遙かに少ない、というのですから。室温付近でなら「逆反応が起こらない」というのは全くもって正しい表現です。
では高温ではどうか?
上に示した図はこの反応の平衡定数の温度依存性を計算した結果です。温度が上昇するに従って平衡定数が小さくなる。これはルシャトリエの法則が予測する通りです。
平衡定数が1程度の値になるのはだいたい4000K(3727℃)程度になったところです。ここまで高温になれば「水の酸化反応は可逆反応で...」となるわけですね。
ただし、この計算では水素、酸素、水の定圧比熱を使っていますが、その実験式の適用範囲4000Kまでは及びません。ですから上記のグラフには若干の誤差が含まれている可能性はあります。
ともかく、「すごい高温では水の燃焼反応も可逆反応となりうる」と覚えておいていただければとおもいます。
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