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色が変わる化学実験(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 化学の実験で思い浮かべるのは「二種類の液体を混ぜると…、ドッカーン!」でしょうか。これはいささか漫画チック。もう少しリアリティがあるものを考えると「二種類の液体を混ぜると色が変わる」という情景でしょうか。色が変わる、というのは化学実験では非常に分かりやすいトピックです。

 色の変わる化学薬品としては酸塩基滴定などで用いる指示薬が数多く知られていますから、これを使えば色の変わる実験を行う事ができます。化学の知識がない人に面白く見えるでしょうか。

 「CGでしょう」

 いやいやリアルに現物でやってるじゃないですか!

 「わかった、プロジェクションマッピングだ!」

 えっ!もしそうなら、それはそれですごい技術ですが…。

見た目はちょっと面白いですが、いまの世の中、映像だけなら驚異に満ちあふれています。この反応の本当の面白さを理解するにはちょっと化学の知識が必要ですよね。

 まず、色とは何でしょうか。指示薬の分子が光を吸収する、しかも目に見える光、可視光領域の光を吸収することが色の本質です。水自体にも赤外領域、紫外領域に吸収があるのですがそれは私たちの目には色として認識されません。可視光領域の光は水に吸収されないので、純粋な水は無色透明になるのです。(というか、人間の体、とくに眼球の大部分が水でできていることを考えると、水に吸収されない光が可視光なのでしょう。おそらく因果関係は逆です。)

 光の吸収は、分子の持つ電子が、よりエネルギーの高い軌道に跳ね上がること、に相当します。電子軌道間のエネルギーの差が大きいと紫外線が吸収されますが、これは色として目には見えません。可視光程度のほどよいエネルギーの差のある分子であること、それが指示薬の最初の条件です。そのためには分子の軌道がなるべく広がっている方が良くて…、となるといささか専門的になってきますね。

 さて、指示薬の話に戻りましょう。

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 指示薬がpHの応じて変色する、これは指示薬の分子構造が変化するためです。pHで変化する、というのですから、指示薬自身が酸または塩基であってpHによって電離したりもとにもどったり、その変化が電子軌道にも影響し、そのエネルギー差に変化がおこる。その結果、吸収される光のエネルギーが変わり、色が変化する。

 ここまで理解すると、こんどは指示薬の分子の具体的な構造に興味がでてくると思います。pHによってどう変化するのか、構造変化が色とどのように関係するか、それぞれの構造でどんな電子の軌道となるのか。

 さて、色の変わる実験で考えられるのはここまででしょうか。

 ところで、指示薬の変色、これは酸と塩基の中和反応を可視化するために開発されたものですの。酸と塩基、たとえば塩酸と水酸化ナトリウム、どちらも非常に危険な薬品で身近なものとはとても言えない物質です。

 ところが両者が反応してできあがるのは食塩(と水)です。考えてみるとこっちの方がすごい気もしますね。

江頭 靖幸

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