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「長期低炭素ビジョン」を読む(その7)(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 日本、そして世界の将来はどのような姿なのか。温暖化問題の解決、という立場からまとめられた日本の将来像「長期低炭素ビジョン」についてシリーズで解説しています。

 今回、注目したのは「長期低炭素ビジョン」の第6章「長期大幅削減の実現に向けた政策の方向性」という部分です。温室効果ガス排出の大幅削減の必要性、大幅削減を実現した社会のイメージとその実現可能性を述べてきたこの「長期低炭素ビジョン」の結論に当たる部分であり、大幅削減を実現する低炭素社会をどのように造り出すのか、その処方箋が書かれている部分だと言えるでしょう。

 まず、この第6章、一読して他の章と異なる特徴があります。他の章と比べて図やグラフがぐっと少なくなっている印象なのです。未来のことをグラフにしたり、政策を絵に描くのは難しいのでしょうが、それ以上に内容が抽象的だ、ということもあると思います。

 というわけで、今回は図表として第6章の目次を切り出してきてみました。

Fig1

 実のところ、第6章の内容を理解するには、この目次を見るのが一番分かり易いのかも知れません。

 第6章前半では「基本的な方向性」が3つ示されています。一つ目は、今ある技術は全て使おう、ということです。二つ目は、それでも足りない部分はイノベーションに期待するしかない。だからイノベーションを活発にする条件造りに努めよう。そして三つ目は、うーん、要するにいろいろ頑張ります、というところでしょうか。

 既存技術などの活用もイノベーションもその主体は政府ではありません。消費の面では一般市民が、生産の面では私企業が技術を活用し、イノベーションを起こすのです。これらの主体を動かすのは「温暖化ガス排出を削減するのは良いことだ、必要な事だ」という認識と、それに裏打ちされた投資、つまり「約束された市場」と呼ばれるものです。

 では、「温暖化ガス排出を削減するのは良いことだ、必要な事だ」という意識が一般に広がれば既存技術が徹底的に活用されイノベーションが起こるのでしょうか。そこに政府が果たすべき役割は無いのでしょうか。これについては「政府の役割はなく、干渉は不要」という考えと「政府が積極的に役割を果たすことが必要」という2つの考えがあると思います。後者の立場にたったとして、政府はどのような役割を果たすことができるのか、第六章の後半はその解答なっています。

 それについては次回、観ていきましょう。

江頭 靖幸

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