「長期低炭素ビジョン」を読む(その4)(江頭教授)
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日本、そして世界の将来はどのような姿なのか。温暖化問題の解決、という立場からまとめられた日本の将来像「長期低炭素ビジョン」についてシリーズで解説しています。
今回は低炭素社会が実際にどのような社会になっているか、というかどのような技術を使って未来の私たちは暮らしているのかにつてみてみましょう。「長期低炭素ビジョン」では第5章「長期大幅削減の絵姿」としてそのようなビジョンを示しています。(たいしたことでありませんが、絵姿とビジョンはどう違うのでしょうk?絵姿の英訳がvisionなのでは...。)
さて、まずは家庭生活のイメージした下図をみてください。
家の外見は、太陽電池パネルを屋根に載せている以外、現在の家とそれほど変わりません。
「長期低炭素ビジョン」参考資料集(p95)より
細かく書き込まれた注釈をみると、この絵姿の意味が分かってきます。住宅は断熱化によって冷房・暖房のエネルギー消費が抑えられるようになっています。建築資材は木材など再生可能な資源を使用。照明にはLEDをつかうなど、家電製品についても省エネ化が徹底されています。HEMS(家庭にある電化製品を総合し効率的に管理するシステム)などが導入されていて家庭で発電された電力と電線から供給される電力を巧く効率的に活用しているのでしょう。車は電気自動車。短距離の買い物にはより使用エネルギーの少ない小型電気自動車が活用されています。
さて、このような絵姿、皆さんはどのように感じるでしょうか。まず,当たり前のことですがここに挙げられている技術はすでにコンセプトは確立しており、中には実用可能なものもあります。その結果、2050年でも我我の暮らしは少なくとも外見上は大きく変わらないと考えられている、あるいは変わらないことが良いことだ、と考えてビジョンが組み立てています。
2050年は今から33年後の未来ですが、33年前の過去、1984年を思い出してみても家の姿や町並みは現在と大きく異なっているわけではありません。その意味でこの「長期低炭素ビジョン」が描く現在の延長としての未来は納得のゆくものです。ただし、1984年には携帯は普及しておらずスマートフォンも存在していませんでした。当時の人々の生活と現在の生活が内実としては著しく異なっていることを思うと、2050年の人々の生活も外見はともかく、人々の手にするもの、目を向けるものは著しく変化しているかも知れませんね。
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