推薦図書「「健康食品」ウソ・ホント 「効能・効果」の科学的根拠を検証する」(江頭教授)
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高橋久仁子 著
「健康食品」ウソ・ホント 「効能・効果」の科学的根拠を検証する (ブルーバックス)
講談社(2016)
先日、「代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?」という代替医療の問題点を取り扱った本を紹介しましたが、今回紹介する本は「健康食品」の問題点を指摘したものです。
この本で取り扱われている「健康食品」は、具体的には「トクホ」や「機能性表示食品」など、体に良いと表示をつけて売られている食品のこと。これらの「健康食品」は本当に体に良いのか、きちんとした根拠があるのだろうか、という問題意識がこの本の出発点です。
そもそも、医薬品などのいわゆる薬は勝手に販売することはできません。その薬が安全で医薬品として効果があることが実験的に確認され、製造方法も適切であることを示し、許可をとってはじめて医薬品として販売し、その薬の効果を宣伝することができます。
その一方で「健康食品」は薬ではありませんから、効果を確認する必要はありません。その代わりに医薬品の様な効果を謳った宣伝は出来ません。でも、これでは「健康食品」を売り込むのは難しい、ということである程度「健康食品」の効果を確認した上で、ある程度の宣伝を認めよう、というのが「トクホ」などの考え方です。
問題は「効果の確認」と「宣伝」がそれぞれどの程度なのか、「宣伝」と比べて「効果の確認」がお粗末なのではないか。ということで実際の商品の宣伝内容とその根拠となった研究の内容を照らし合わせて検証する、というのが本書の中核となっています。具体的な商品名と宣伝に使われている図表などを示しながら、実験データが如何に頼り無いものか、宣伝が如何に誇張されいているかをこれでもかとばかりに示されていて、なかなか圧巻です。
特に、広告で使われるグラフと対比して論文中のデータをそのまま著者がグラフ化したものを示す、という手法が何回か用いられています。グラフの作り方によってデータの見え方が違うこと、頭では理解しているつもりですが実際に目にするとハッとさせられます。
「健康食品」の過剰な宣伝に惑わされないよう本書をおすすめします。
と書いて終わりたいところなのですが、もう少しだけコメントしたいことがあります。
別に本書の趣旨や内容に疑義がある訳ではありません。私個人の読後感の問題なのですが、以前「代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?」を読んだとき、誇大広告で患者を惑わせる悪徳業者について激しい怒りの感情が湧いたのですが、本書で指弾されている「貧弱な根拠で課題な宣伝を行う」業者についてはあまり怒りが湧いてこないのです。
本書の主観を排した抑えたトーンの影響もあるのです。しかし、一番の理由は「代替医療」の被害者に比べて「健康食品」の被害者に同情しにくいことです。
「健康食品」を愛好する人たちは本当に食品だけで健康が維持されると思ってその「健康食品」を購入するのでしょうか。本書のなかで述べられている「バランスのとれた適量の食事」こそ本当に健康を維持するために必要だということ、これはほとんどの人が理解していて、それでもなお「気休めで」「自分への言い訳として」「日常のちょっとした変化として」購入しているのではないでしょうか。
標準医療から見放されて藁にもすがる思いで代替医療に頼る人たちは冷静な判断が出来ない状態にまで追い詰められた人たちでもあります。一方、「健康食品」で健康を金で買える信じる、信じ込もうとする人たちが冷静な判断が出来ない状態とも思えない。
はっきり言いましょう。「健康食品」では消費者は被害者ではなく、実は共犯なのではないかと思うのです。
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