推薦図書「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(江頭教授)
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河合 雅司
「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)」
講談社(2017)
戦後のベビーブームを起点として増加を続けていた日本の人口ですが、2008年にピークを迎え、今は減少に転じています。本書は人口が減少してゆく将来の日本で起こると予想される事象を年表形式でまとめたものです。具体的な年と事象を並べることで、日本社会の未来をよりはっきりとイメージすることができるようになっています。
未来に起きる事象、具体的には
2021年 介護離職が大量発生する
2027年 輸血用血液が不足する
2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
2039年 深刻な火葬場不足に陥る
2042年 高齢者人口が約4000万人とピークに
など、現在の延長上で考えられる事柄からスタートして、「えっ、そんなことが?」と思う様なことまで、ずらりと並んでいるのです。
ここで予測されていることは、現在既に生まれて暮らしている人が年をとることによって生じる事象です。今から本格的な少子化対策を行い、成果がでたとしても少なくとも18年の間、生まれてきた子供は働くことはできません。ですからこの年表は、ほぼ確実に起こる事態、すでに決定した未来だと言えるでしょう。
最初に紹介したように、現在日本の人口はほぼピークを迎えています。つまり、今の日本社会は人口が増える社会から人口が減る社会へとちょうど切り替わろうとしている社会だと言えると思います。
人口が増える社会は「若者が多く、年寄りが少ない」社会、人口が減る社会は「若者が少なく、年寄りが多い」社会であり、全く様相が異なっています。人口が増える社会には増える社会なりの、減る社会には減る社会なりの固有も問題が起こるはずですが、それぞれに属する人間はそれにふさわしい対応策をもち、それに適応した価値観や人生観を持つようになるはずです。
それに対して、これから日本が経験してゆく変化は人口が増える社会から人口が減る社会への変化である。つまり、程度の問題ではなく、質の問題としての深刻さがある。本書に示された未来予想から分かるのは、この様な意味での深刻さです。
実はこの変化はずっと前から始まっていたのですが、2008年の人口のピークが人口増加社会から人口減少社会への切り返し点であり、これ以降、どんどんスピードを増しながら社会の変化が進んでゆくのです。
この社会変化は一応、2042年の「高齢者人口が約4000万人とピークに」なることで一つの頂点を迎える思われます。これからの25年間で人生のピークを迎えることになる若い人たちにはこの状況を良く理解していて欲しいと思います。本書はそのための良いガイドマップになるでしょう。
私自身は人生のピークを過ぎた身ですが、本書を読んで「あと25年は健康でいたいな」と切実に思いましたね。
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