電球あれこれ(江頭教授)
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先日、実家に帰ると「階段の電球が切れたので替えてくれないか」と頼まれました。階段の照明は60Wの白熱電球で、時々(年に一回くらい?)切れてしまいます。階段の途中で位置が高いので年寄りには交換が難しくなっています。
さて、話変わって「サステイナブル工学」のお話。「人々が求めているのは物質そのものではなく、物質の持つ機能である。だから、同等の機能をなるべく少ない環境負荷で実現できる新たな物質を開発しよう」というのはサステイナブル材料工学の一つの方針ですが、この考え方の基本は物質合成だけに限られるものではありません。えっ?冒頭の振りとどんな関係があるのかって? 件の白熱電球はその典型的な例だと思うのです。
電球の機能は照明です。明かりを提供できるなら「フィラメントを加熱して白熱させることで光を発するもの」以外でも代用できるはずです。
照明の手段として電球に次いで古い歴史のあるものは蛍光灯でしょう。蛍光灯は放電によって蛍光物質を光らせるもので白熱電球に比べてエネルギー効率が高く、今の言葉でいえば「地球にやさしい」製品でした。私の子供のころからあるもので、私の実家を父が建てた時(40年くらい前です)にも蛍光灯は一般に十分普及していました。では、なぜ実家の階段の照明は蛍光灯ではなく、白熱電球だったのでしょうか?
当時の蛍光灯はスイッチを入れてから実際に光るまでに少し時間がかかったのです。長い時間を過ごす居間や食堂の照明では大した問題になりませんが、階段を上る前のオンにして上り終えたらオフにする(下るときもですが)使い方ではスイッチを入れてから照明が点灯するまでのタイムロスは非常に気になるもになります。それに、照明として利用される時間が比較的短い階段の照明ではエネルギーの少量自体が少ないので蛍光灯による省エネ効果も限定出来です。
その後、蛍光灯の点灯時間の問題が改善され、電球の金口にそのまま刺せる「蛍光灯電球」が発売されました。これを見て、実家の階段の照明用に、と思って実家に買って帰ったことを覚えています。省エネルギーであることもありますが、白熱電球に比べて寿命が長い、つまり取り換えの頻度が少なくなるのは魅力的だな、と思ったのです。
早速、実家の階段に取り付けたのですが、どうやらこれは不評だったようで次に帰った時には取り外されて白熱電球の戻っていました。話を聞くと、点灯時間が改善されたといっても十分ではなかったようです。当時で30年以上暮らした家では、ちょっとしたタイミングのずれが気になってしまったようです。
先ほど、「同じ機能」と気軽に書きましたが、機能の内容は実に多様なものを含んでいる、ということなのでしょう。白熱電球の機能は照明ですが、それも「瞬時に点灯する」照明、という機能を含んでいたのです。サステイナブル工学の研究対象は幅広い、といったところでしょうか。
さて、そんな経緯を経て、今回また階段の白熱電球の交換を頼まれました。うむ、今ではLEDを利用した「LED電球」が発売されています。色合いも白熱電球と似た色のものが用意されているし、点灯時間の問題も気にならないようです。今度は「白熱電球はやめてLED電球にしよう」と提案したのですが、以前不評だった蛍光灯電球の記憶が残っているらしく反対されてしまいました。仕方なく、今回も白熱電球を使おう、ということに。
結局、廊下の電球は私が交換して、現在も満足してもらっているようです。
「母さん、ごめん。それ、実はLED電球なんだ。」
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