大学院の勧め-4(片桐教授)
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私は皆さんに大学院への進学を強く勧めます。少なくとも修士、可能なら博士号の取得をお勧めします。
最近、研究室の学生さんに大学院への進学を勧めたところ「大学院へ進学することのコストパフォーマンスはよくないと聞いている」といわれ、愕然としました。
確かに、いろいろなWeb Pageを見ると、「大学院へ進学すると2年間(あるいは5年間)の学費が余分にかかり、その間の給料も手に入らないから、不利である」というふうな記述がありました。これはまったくの誤解・誤謬です。
学生さんの多くは軽部学長が入学式の時に「大学院へ進学した方が生涯賃金は高い」というお話をされたことをお忘れのようです。この根拠となったのは内閣府2014年の「学院卒の賃金プレミアム―マイクロデータによる年齢-賃金プロファイルの分析―」という報告書です。
この報告書は内閣府のWeb Pageからダウンロードできます。http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis310/e_dis310.pdf
この報告書の11ページには
学部卒の男性で生涯賃金は2億9163万円
大学院卒男性で生涯賃金は3億4009万円 差は 4846 万円
学部卒の女性で生涯賃金は2億6685万円
大学院卒女性で生涯賃金は3億1019万円 差は 4334 万円
という調査結果が記載されています。
おおよそ学長さんが入学式でおっしゃったとおりですね。生涯賃金は大学院卒の方が4,000〜5,000万円多いという結果です。2年間400万程度の先行投資が10倍以上になって帰ってきます。この後のグローバル化に伴い、この差はますます大きくなると予想されます。「明日の100より今日の10」という考え方でなければ、大学院のコストパフォーマンスは悪くないどころか、とても良いことがわかります。
では、なぜこのような事実と反する風評=フェイクニュースが流布されているのでしょうか?。
ここから先は推測ですが、このようなコメントを発する方は、20代〜30代前半のブログ世代ではないでしょうか。確かに若いうちだけで見ると「損」に見えます。しかし、生涯賃金は働き盛りの40代50代で大きく影響されます。そして、その恩恵を受ける世代は、このような話をブログで発信しないため、世間の風評は先に述べたように「大学院進学はコストパフォーマンスが悪い」となってしまうのでしょう。
そのような短期的な視点の風評ではなく、信頼できるデータを見れば、やはり大学院進学はそれなりの価値があります。もっとも、生涯賃金を上げるためには、その大学院の2年間あるいは5年間でしっかりと実力をつけることが前提条件になります。進学すれば無条件で生涯賃金が上がるわけではありません。さらに深く学修し研究に専念する覚悟は必須です。
「若い時には金がない、歳を取ると時間がない」。最近そのように感じます。その金のない時期に易きに流れずに、目先の楽しみを我慢して、自分へ投資することが後々豊かな人生には必要なのでしょう。
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