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2017年10月

2017.10.31

熱を伝える物質 伝えない物質(江頭教授)

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 前回につづいて化学で必須となる加熱の問題について考えてみましょう。基本に立ち返って熱についてみんなが知っていることを挙げると

熱は温度の高いところから低いところに流れる

ということでしょうか。これを定式化したのがフーリエの法則と呼ばれるもので「熱の流れる速度は温度の勾配に比例する」と言い表すことができます。

 「熱の流れ」は単位面積当たり、単位時間当たりに流れるエネルギーの量ですから単位は「J/m2s」あるいは「W/m2」となります。「温度の勾配」は温度の距離による微分ですから単位は「K/m」です。この二つが比例する、というのですから比例係数k(単位はW/mK)を温度勾配にかけたものが熱の流れになる、と言い換えても良い。このを熱伝導度と呼びますが、この熱伝導度は、それぞれの物質に対して決まった値をとる、という意味で物性値と呼ばれます。(ただし、温度によって変化します。)

 同じ温度勾配に対して、熱伝導度が大きい物質なら多くの熱が、小さな物質なら少しの熱が流れる、つまり熱伝導度は物質の熱の伝えやすさの指標となります。

 では、熱伝導度はどんな値を示すのでしょうか。以下にそのデータを示します。

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上の図は本学の「化学工学」の授業で使用している「新版 化学工学の基礎」(朝倉書店)という教科書に載っているものですが、もともとは「化学工学便覧」の図だそうです。

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2017.10.30

大きなものを加熱するのは難しい(江頭教授)

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 化学の授業では化学反応に伴う熱の発生や吸収について学びます。でも、熱の伝わり方、伝熱についてまとまった話はありません。伝熱は化学ではなくて物理の範囲ですからね。

 とはいえ、化学反応を起こすには加熱を必要とするケースが多い(というか、温度によってコントールできる反応が興味の対象になっているわけですが……)ので、加熱する、という操作は化学にとって重要だ、ということで今回のお題は加熱についてです。

 化学実験で何かを加熱する際、小学校から高校まではアルコールランプやブンゼンバーナーなど、炎を使って加熱する操作が多かったのではないでしょうか。これは基本的には料理でつかう鍋と同じで、容器の下から加熱する、という形式です。

 普通の実験室スケールであればこの加熱法で何の問題もありません。例えば

直径5cmのビーカーに4㎝の深さで水がたまっている

としましょう。加熱は簡単で火加減によりますが5分あれば沸騰させられます。では、これが10倍になったとしましょう。

直径50cmのビーカーに40㎝の深さで水がたまっている

ことになります。容量は約80L、重さは80kgになりますから、扱うのも大変。これを大きなコンロか何かで下から温めたとしても5分で沸騰させることは不可能でしょう。

 先ほど「10倍になった」と書きました。直径や深さは確かに10倍なのですが、縦横高さ方向に10倍になったことを考えると体積は実は1000倍になっているのです。

 これを下から温めようとする場合、底部の面積は縦横10倍で100倍にしかなりません。100倍の面積を加熱して1000倍の液体を加熱する、単純に考えても同じ面積から10倍の熱量を伝えなければなりません。単純に熱エネルギーが1000倍必要だという事情に加えて、ものを加熱する、とくに大きなものを加熱するにはこのような事情があるのです。

 必要な熱量は体積に比例するのに伝熱するのは面積に比例する、このような関係は二乗三乗則と呼ばれていて、生物の世界でもよく見られる関係です。

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2017.10.27

応用化学科BLOGは三周年を迎えました(江頭教授)

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 本学、工学部応用化学科の公式ブログの開設は2014年10月27日、ちょうど3年目の今日です。そうです。本ブログは今日で三周年を迎えました。

 応用化学科が初めての学生を迎えてほぼ2年半ですから、ブログ開設時にはまだ学生がいなかったわけです。新入生を迎える準備をしながらの情報発信の一つとして始めたのがこのブログで当初は研究紹介などが中心でした。

 一期生に向けた入試、合格発表、入学がブログ開始から半年の出来事、そこからは講義や実験、学生生活に関する記事も増えてゆきました。学科が2年目に入り、一期生の進級に2期生の入学と一気に学科内がにぎやかになって半年後、ブログも2年目に入り、学科内のイベントも増え、学生生活に関する記事も多くなっていきました。3年目には解説記事として化学にとどまらず生物や他の分野にも関連したいろいろなトピックスについて少し踏み込んで説明する記事も多数公開されています。

 そんなこんなで、現時点での記事数は695件。一年あたり230本ほどの記事を公開してきたことになります。

 

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2017.10.26

究極のサステイナブル工学とは(江頭教授)

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 「サステイナブル工学教育」は本学工学部の主要な特徴の一つです。では、「サステイナブル工学」とは何か、すでに確立した分野ではありませんから、我々教員もいろいろに考えを巡らせています。

 さて、今回のお題は「究極」のサステイナブル工学となどんなものか、です。

 まず、サステイナブル工学ということばで強く意識されるのは環境への配慮です。しかし、サステイナブル工学は環境だけに注目しているわけではありません。

 そもそも、産業は人々の暮らしをかして維持し、より良くすることを目標としていますから、人間生活の充実が産業の大目的です。良いものを安く手に入れられる社会、単純化して言えばそれが産業社会の理想であり、より多くの物資とサービスの提供を実現しようとします。

 しかし、人間は一面では物資とサービスを享受する消費者ですが、もう一つの側面として労働者・生産者の側面も持っています。生産の野放図な拡大によって消費者としては天国でも働く者にとって地獄のような社会になっては堪らない。そこにはバランスが必要で、そのバランスをとりながらより高いレベルに押し上げることが工学の役割となります。

 ここまでが工学のお話し。これに環境の問題、それに資源枯渇の問題を考えると、「現在の産業社会を持続させることは不可能だ」つまりサステイナブルではない、という問題が加わります。この問題を解決するのが「サステイナブル工学」という訳です。

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2017.10.25

シリカゲルの吸湿作用(江頭教授)

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 以前、こちらの記事でシリカゲルの乾燥剤について紹介しました。その際、化学の研究室でもシリカゲルを乾燥剤として使う、という述べましたが、私の研究室にも確かにシリカゲルが置いてあります。

 ということで、今回はこのシリカゲルの吸湿性について調べてみることにしました。

 まず、時計皿に適量にシリカゲルを取って加熱(恒温槽で100℃に設定しました)したあとでシリカゲルの重さをはかります。おっと、事前にシリカゲルをのせている時計皿の重量も計っておきました。

 差し引きすると、写真の乾燥した青いシリカゲル、重さは 2.89g でした。

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 さて、これを大気中に開放しておくと湿気を吸って下の写真のように色が変化します。

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 これは乾燥して大気にさらしてから2日後の写真です。ではこのシリカゲル、水を含んだことでどの程度重さが増すのでしょうか?

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2017.10.24

台風の朝(片桐教授)

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 今朝(2017年10月23日月曜日)は台風接近で大学は休講です。休講だからといって、先生はお休みではありません。

 朝3時半に強い風と雨で目が覚めた。4時頃、NHKの速報で台風が御前崎に上陸したことを知る。まっすぐ進むと八王子だ。

「直撃か」まいったなあ。」もう眠れなくて6時ごろまでぼっとテレビを見ていたら、「台風の中心は現在八王子付近…」とのニュース報道があった。

 西の空が明るく、青空も見える。「しめた」と思い、すぐに奥さんにお願いして大学へ送ってもらった。6時15分の時点で雨は降っていない。イチョウの葉っぱもそよともゆれていない。台風の目に入っているようだ。傘をさすこともなく正門から片柳研究棟へ入ることができた。研究室の窓から見える西の空が明るい。15階から写真を撮った。午前3時から5時台までは1時間あたり30~40mmの土砂降りだったのがウソのようだ。

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2017.10.23

本日(10月23日)、東京工科大学八王子キャンパスの授業は休講となりました(江頭教授)

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 本日(と言ってもこれを書いている時点では明日なのですが)東京工科大学の授業はお休みです。理由は全学向けに送られたメールに

台風21号の移動速度が速まり、日中に接近、通過する可能性が高まったことから、10月23日(月)の授業は終日休講といたします。

と、ある様に大型の台風21号の影響です。

 このメール実は先週の金曜日に送られてきたものです。ずいぶん早くに決めたものだ、予報が外れることだってあるだろうに、とも思いますか?実のところ私もそう感じるのですが、本学には学生寮もありますが、それでもかなり時間をかけて通っている学生さんもいます。そのことを考慮して,早めに決断した、ということなのでしょう。

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2017.10.20

健康診断で飲まされるのはバリウムじゃなくて硫酸バリウムですから(江頭教授)

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 今回のお話は東京工科大学の健康診断からスタート。でも学生諸君の健康診断ではありません。我々、教職員向けの健康診断です。

 労働安全衛生法によって事業者は労働者に対する医師による健康診断を定期的に、通常は1年ごとに、実施することになっています。東京工科大学も事業者、そして労働者は教職員ですから、教職員の健康診断が年に一回ある、ということになります。学生向けの健康診断は年度替わりの春、そして教職員の健康診断は秋、と決まっているらしく、毎年今ぐらいの季節に健康診断が行われます。

 さて、学生向け健康診断と教職員向け健康診断、なにか違いがあるのでしょうか。大学生ともなれば「身長が伸びた」ということも希でしょう。これは教職員も同じ。体重の増減で一喜一憂するのも同じですが、私たち教職員の方が少し真剣かもしれません。

 でも、一番の違いはレントゲン検査ではないでしょうか。普通、レントゲンと言えば肺を観る「胸部」レントゲン検査。上着を脱いで金属製品を外して、「はいっ、息を止めて」というやつを想像します。しかし、職員の、なかでも我々中高年のレントゲン検査には「胃部」レントゲン検査というものがあるのです。これは胃がんや胃潰瘍を見つけるための文字通り胃のレントゲン検査です。

 おそらく、年齢に応じて胃がんや胃潰瘍のリスクが上昇していることへの対応なのでしょう。でしょうが、これが仲々の難物です。

 まず、胃を膨らますために粉薬を飲まされます。水に触れるとどんどん気体が発生する粉薬。胃が膨らんだ感覚があり、ゲップをしたいのを我慢させられてまず愉快ではない。それに加えて、胃の内面をはっきり映し出すために「バリウム」と呼ばれる白いクリーム状の物質を飲まされます。「一生懸命飲みやすく味付けしました」感はあるのですが、やっぱり変な口当たり、のどごしです。

 さて、レントゲンの撮影が始まります。担架状の台に寝そべるのですですが、これが遊園地のアトラクションばりに上下左右に動きます。ベストショットを探してレントゲン技師の人が台を動かし、右向け、左向け、とポーズを要求してきます。はいっ、息を止めて。うーん、年に一度ならなんとか我慢できるか。

 さて、この白い液体「バリウム」、原子番号56番、アルカリ土類金属の Ba つまりバリウムから来た呼び名ですが、もちろんバリウムの単体ではありません。

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本学の厚生棟前に止まっているレントゲン車。これで胸部レントゲンと胃部レントゲン、両方を撮影します。

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2017.10.19

霧の朝(片桐教授)

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 今朝(2017年10月18日水曜日)はすごい霧だった。外気温は10℃。昨日の雨で湿度が上がり、明け方の冷え込みで霧が発生したのだろう。八王子市を含む多摩地方全域に濃霧注意報が発令されている。

 正門前のロータリーから片柳研究棟の先端が見えない。片柳研究等の入り口から研究棟ABが見えない。お馬さんの銅像も見えない。かろうじて手前の松の木が見えている。

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2017.10.18

京王線の「サスティナ」って何だ?(江頭教授)

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 今月の初め頃でしょうか、大学に行く途中、京王八王子に向かう列車に乗り込むと、何かいつもと車内の様子が違います。

 座席がいつもの長いいすではなく、個別のいすになっています。室内の色合いも違って落ち着いた感じ。

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 おっ、これは新しい車輛だな、と思って何か情報がないかと車両番号表示板をみると「sustina」という名前に行き会いました。「サスティナ?これって何だろう。サステイナブルな何かかな?」

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 「J-TREC」「総合車輛製作所」という名前から検索してみましょう。

 こちらのページにSustinaのコンセプトが端的に示されていました。「サスティナブルモビリティを世界へ」「sustinaの時代を創る」

 車輛のデザイン、車両プラットフォームの共通化によるコスト削減、高い安全性に加えて、いろいろな技術を利用した環境調和型の車両、というポイントを強調していますから、本学工学部の考えているサステイナブル工学の概念とも通じるものがありますね。

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2017.10.17

研究倫理に関する講習会が開かれました。(江頭教授)

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 東京工科大学では月に一度、八王子キャンパス、蒲田キャンパスでそれぞれに「全学教職員会」と称した講習会を開いています。最近はネットワークを利用した中継によって八王子キャンパス、蒲田キャンパスで同時に「全学教職員会」を行うことができます。学長が大学の運営方針を説明する回もありますし、各学部がそれぞれの教育目標を発表する回もあります。時には外部講師をお願いして大学の教育にかかわる最新の話題を解説していただくこともあります。

 今回開かれた「研究倫理」に関する講演もその1つ。新日本有限責任監査法人の教育セクター支援室マネージャーの赤池 知広氏を講師としてお呼びし、研究倫理について、とくに公的資金の適正な利用について、お話をいただきました。

 研究倫理、公的資金の適正な利用、これらの言葉は大学の人間以外にはなじみの無い言葉かも知れません。とくに公的資金については大学生にとっても良く知らない話、と感じられるでしょう。ですが、「公的」というくらいなので多くの人に関係のある話です。公的資金というのは要するに税金のこと。それも取られる方の税金ではありません。これは税金の使われ方についての話なのです。

 東京工科大学は私立大学ですが、収入の一部には公的資金が含まれています。その中でも特に研究を実施するための助成金、例えば文科省の科研費(科学研究費補助金)などは、研究の内容に応じて多種多様な使われ方がありますので、その管理も難しい、という問題があるのです。

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2017.10.16

工学部の就職支援(江頭教授)

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 我々応用化学科を含めて、本学工学部は開設から3年目。第一期生は3年生になっています。そろそろ就職活動が気になる頃合い、ということで今回のお題は本学工学部での就職活動支援体制についてです。

 まず、強調しておきたいのは、本学部の特徴の一つである「コーオプ教育」。特に、8週間の企業における有給での実務経験を内容とする「コーオプ実習」は学生諸君にとってテクニカルな就職活動以前に、本来の「就職とはなにか」「働くとはどんなことなのか」を具体的に意識してもらう、という意味での本質的な就職支援なのだと自負しています。

 この「コーオプ教育」を前提として、それにプラスする形で就職活動支援があります。写真は先日行われた「就職ガイダンス」の様子です。

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2017.10.13

ロケ地としての東京工科大学八王子キャンパス(江頭教授)

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 本日(10月12日です。このブログ記事の公開日なら昨日ですね。)、大学に到着、いつも通り片柳研究棟に入ろうとするとなにやら建物前に人が集まっています。しかも、よく見るとコートにマフラー姿。10月とはいえ、最高気温が27℃に達した暑い日。一体これはどうしたことか、と思って研究室へ。やがて、片柳研究棟まえに集まった人たちにアナウンスする声が聞こえてきました。

 どうやら、映画かドラマの撮影をやっていて、集まった人たちはエキストラの人たちだったようです。撮っていたのは入試の合格発表のシーン、冬という設定ですので、受験生を演じるエキストラの皆さんは暑い中、コート姿で演技をしていた、ということでした。

 本学のキャンパスはユニークなデザインの建物と、それらの見晴らしの良い配置が相まって印象的な風景を創り出しています。それを活かして映画の撮影に利用されているとのこと、以前の記事では国連Gフォースの基地として撮影に利用されていることを紹介しています。 

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2017.10.12

ヘモグロビンはなぜ酸素と結合しやすいのか、一酸化炭素ともっと結合しやすいのか(江頭教授)

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 生物が持つ機能を説明するとき、よく「何々に役立つから」という言い方をします。人間や動物、ほ乳類の体内には血流があり、血流には赤血球が含まれ、赤血球にはヘモグロビンが存在しています。ヘモグロビンは酸素と結合・分離を行うことで体内に酸素を運ぶ役目を果たしています。

 ですから、「ヘモグロビンが酸素と結合しやすい」ことの理由は、血流に乗せて酸素を体中に運ぶため、と説明することができますね。

 さて、以前このブログでも紹介しましたが、「一酸化炭素が危険なのはヘモグロビンが、酸素より一酸化炭素と結合しやすいため血流と共に酸素を体内に運ぶ機能が障害されてしまうから。」です。

 二つ目の疑問「ヘモグロビンが酸素より一酸化炭素ともっと結合しやすいのはなぜか」にはどのように答えれば良いのでしょうか?

 ヘモグロビンが一酸化炭素と結合することで何かの役に立っているのでしょうか?

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2017.10.11

大学院の勧め-5(片桐教授)

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 私は皆さんに大学院への進学を強く勧めます。少なくとも修士、可能なら博士号の取得をお勧めします。

 さて、前回は日本における生涯賃金の学歴による格差をご紹介しました。今回は今後のこの傾向が大きくなるのではないかという懸念についてです。最近の社会はグローバル化が進んでいます。業界によってはその給料の格差はアメリカ的になってきていることが知られています。

 アメリカの学歴による生涯賃金の格差のデータを米国政府統計局のWeb Pageで見つけました。https://www.census.gov/prod/2002pubs/p23-210.pdf

この資料は少し古いversionですが、わかりやすいグラフがついています。

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2017.10.10

映画「不都合な真実」(江頭教授)

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 「不都合な真実」はアメリカのクリントン政権時の副大統領、アル ゴア氏の地球温暖化に対するキャンペーンを中心としたドキュメンタリー映画です。講演で観客に語りかけるゴア氏の姿、世界各地で起きている温暖化の影響についての印象的な映像、ゴア氏の個人的な回想を織り交ぜて地球温暖化の危機を理解させ、対応を促す内容となっています。

 ゴア氏が副大統領を務めた期間は1993年から2001年まで。京都議定書の採択が1997年ですから、彼の任期中に地球温暖化問題へ関心が高まった事がわかります。実のところ、ゴア氏は地球温暖化問題へ関心を高めた立役者の一人であり、2007年にはその功績でIPCCとともにノーベル平和賞を受賞しています。

 この映画でのゴア氏の温暖化問題についての説明は、彼が学生時代に教授から見せられた大気中の二酸化炭素濃度の上昇についてのグラフから始まっています。現在では広く認められている人為的な温室効果ガス(主に二酸化炭素)の排出による地球環境の変動、温暖化ですが、当時は懐疑的な人も多くいました。その状況でこのデータを最初に示している点、「わかっているな」と感じます。二酸化炭素の放出から温暖化まで、その因果関係にはいくつものステップがあり、確実性の高いものと低いものがあります。その中で地球の大気中の二酸化炭素が増えている、という事実は特に確実性の高いものです。

 映画という媒体の特性でしょうか、やや映像で煽るような場面もありますが、それでも落ち着いたトーンで分かり易く温暖化のメカニズムとその影響について説明した内容は2006年の公開から10年以上経過した今でも充分通用する内容だと思います。

 

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2017.10.09

紅華祭開催中。化学サークルも参加しています。(江頭教授)

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 前回の記事でご紹介したとおり、本学の学園祭、紅華祭が10月8日、9日の予定で開催されています。初日の9日は雨が降るか、と心配もしましたが、幸い天候に恵まれさい先の良いスタートでした。

 さて、紅華祭のメインステージは厚生棟と図書館等に挟まれた研究棟前のスペースですが、我々工学部応用化学科が位置する片柳研究棟でも幾つかのイベントが行われています。高層16階ではOBを出迎えるホームカミングデーのイベントが。これは東京工科大学同窓会のイベントです。

 応用化学科の学生実験室がある7階では化学サークルの展示・デモが行われています。

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2017.10.06

紅華祭(学園祭)が開催されます(江頭教授)

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 「紅華祭WEB」(下の画像にリンクしています)には

紅華祭とは、東京工科大学と日本工学院八王子専門学校が、毎年10月に合同で開催している学園祭です。

とあります。工科大学の学際だから「こうかさい」。工科際では味気ないので、「紅華祭」となったのでしょう。秋の学園祭にはふさわしい名前ですね。

 さて、今年の紅華祭は10月8日と9日に開催です。例年、土曜日、日曜日の開催でしたが本年度は日曜日、月曜日の開催となります。10月9日は月曜日ですが体育の日。休日を利用した2連休での開催です。

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2017.10.05

工学部長賞表彰式(江頭教授)

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 本学の学生に対する表彰制度、学長賞・学部長賞についてはこのブログでもこちらの記事で紹介しました。学長賞は成績優秀な学生に対する表彰制度ですが、学部長賞はすこし違った視点から表彰者を選びます。個人またはグループが対象で、各学部がそれぞれの学部の特性に応じた選考基準を設けることができます。応用化学科は工学部なので、本学科の学生は「工学部長賞」の対象者となります。

 昨日(10月4日)、本年度の三年生に対する工学部長賞の表彰式が行われました。工学部の学部長賞、三年生に対する表彰は「地域連携課題」(こちらこちらの記事を参照してください)を審査の対象としてグループを表彰する形式です。

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2017.10.04

大学院の勧め-4(片桐教授)

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 私は皆さんに大学院への進学を強く勧めます。少なくとも修士、可能なら博士号の取得をお勧めします。

 最近、研究室の学生さんに大学院への進学を勧めたところ「大学院へ進学することのコストパフォーマンスはよくないと聞いている」といわれ、愕然としました。

 確かに、いろいろなWeb Pageを見ると、「大学院へ進学すると2年間(あるいは5年間)の学費が余分にかかり、その間の給料も手に入らないから、不利である」というふうな記述がありました。これはまったくの誤解・誤謬です。

 学生さんの多くは軽部学長が入学式の時に「大学院へ進学した方が生涯賃金は高い」というお話をされたことをお忘れのようです。この根拠となったのは内閣府2014年の「学院卒の賃金プレミアム―マイクロデータによる年齢-賃金プロファイルの分析―」という報告書です。

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 この報告書は内閣府のWeb Pageからダウンロードできます。http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis310/e_dis310.pdf

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2017.10.03

シリカゲルの乾燥剤(江頭教授)

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 子供の頃、お菓子の入れ物に入っていた乾燥剤、それが「シリカゲル」という名前であることを知ったのは「シリカ」や「シリコン」、「ゲル」といった言葉を知るよりずっと前の事でした。白い半透明の粒が入れ物の中の水分を吸収するのですが、中に混ざっている青い粒が赤く変色したらもう使えない。なんとなく不思議なものだと思っていた記憶があります。

 「シリコン」の酸化物が「シリカ」、シリカのコロイド粒子の溶液が固化したものが「シリカゲル」ですが、実際に乾燥剤として利用されているものはここから溶媒(水)を蒸発させて乾燥させたものです。シリカゲルには溶媒の抜けた細かい穴(孔)がたくさん開いているので「多孔質」とよばれています。シリカゲルの表面は親水性で水となじみやすく、多孔質なので孔の内側の表面を含めると重さ当たりの表面積が非常に大きくなります。このためシリカゲルは空気中の水分を吸着する力と量が大きい理想的な乾燥剤となるのです。

 これも子供の頃の話ですが、シリカゲルを水に浸けてみたことがあります。熱くなってパチパチと音を立てながら丸いシリカゲルの粒が砕けていくのをみて驚きました。

 シリカゲルの表面に水が吸着して安定化。その分のエネルギーが熱として解放されて全体が熱くなったのでしょう。シリカゲル粒子の周りから水が中にしみ込んでゆくとシリカゲルの中に入っていた空気には逃げ場がありませんから中心に向かって押し込められる。その圧力が高くなってもろいシリカゲルの粒はその圧力に耐えられなかったのだ。今ならそう理解できます。

 さて、シリカゲルの乾燥剤に含まれている青いシリカゲル。これには他のシリカゲル粒子と違って、コバルト塩がしみ込ませてあります。

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2017.10.02

AO入試が行われました(江頭教授)

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 9月30日の土曜日、東京工科大学八王子キャンパスにてAO入試が行われました。われわれ応用化学科が属する工学部のAO入試も、8月の末ごろから募集を開始し、9月30日での試験実施となりました。

 試験の面接形式ですが、それ以上の具体的内容については書く事はできませんので、今回は私が昔の職場で経験した面接試験のお話をしましょう。

 何事にもはじめというものがありまして、いままで面接形式の入試を行っていなかった学部がはじめて面接を実施する、という場面もあるものです。前職の大阪大学基礎工学部でちょうどそんな場面にいき合ったときのお話。私は受験生を控え室から面談室に案内する役割でした。最初の最初の面談のとき、面談を受ける側の受験生達が緊張しているのは当然なのですが、面接官の先生達もそわそわして落ち着きがありません。両者ともの緊張しながらの初面談となりました。

 ところが、二人目を面談室に連れて行くと、学生はやっぱりはじめての面談に緊張しているのですが、面接官の先生達は経験値が上がったためでしょう。ぐっと落ち着いて余裕が出てきたのです。面談は教員のペースに。

 「なるほど、学生より先生の方が有利だ、というのはこういうことか。」

と一人で納得していました。

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