熱を伝える物質 伝えない物質(江頭教授)
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前回につづいて化学で必須となる加熱の問題について考えてみましょう。基本に立ち返って熱についてみんなが知っていることを挙げると
熱は温度の高いところから低いところに流れる
ということでしょうか。これを定式化したのがフーリエの法則と呼ばれるもので「熱の流れる速度は温度の勾配に比例する」と言い表すことができます。
「熱の流れ」は単位面積当たり、単位時間当たりに流れるエネルギーの量ですから単位は「J/m2s」あるいは「W/m2」となります。「温度の勾配」は温度の距離による微分ですから単位は「K/m」です。この二つが比例する、というのですから比例係数k(単位はW/mK)を温度勾配にかけたものが熱の流れになる、と言い換えても良い。このkを熱伝導度と呼びますが、この熱伝導度は、それぞれの物質に対して決まった値をとる、という意味で物性値と呼ばれます。(ただし、温度によって変化します。)
同じ温度勾配に対して、熱伝導度が大きい物質なら多くの熱が、小さな物質なら少しの熱が流れる、つまり熱伝導度は物質の熱の伝えやすさの指標となります。
では、熱伝導度はどんな値を示すのでしょうか。以下にそのデータを示します。
上の図は本学の「化学工学」の授業で使用している「新版 化学工学の基礎」(朝倉書店)という教科書に載っているものですが、もともとは「化学工学便覧」の図だそうです。
まずは図の縦軸に注目してください。0.01未満から1000を超えるところまで実に5桁、10万倍以上の変化を示しています。熱の伝わり易いもの、伝わりにくいものがある、ということはたいていの人が知っていることだと思いますが、その違いが10万倍にもなる、と言われるとちょっと驚くのではないでしょうか。
さて、図をみると液体を中心に、気体は図の下側に、固体は図の上側にあることが分かります。ガスは熱を伝えにくく、固体は伝えやすい、ということです。熱の本質は分子の運動だ、ということを考えれば密度の高い固体の伝熱係数が大きく、密度の低い気体の伝熱係数が小さい、というのは納得できるのではないでしょうか。
密度は高くとも、分子同士の結合の弱い液体では熱は伝わりにくい。液体の中を振動が伝わろうとしても分子がふわふわと動いてクッションになっていしまう様子を想像すれば液体の伝熱係数が固体よりも小さくなることがイメージできると思います。
固体の中でも金属はとくに高い熱伝導度を示していますが、これは金属内の自由電子が熱を伝える役割を果たしているためです。たしかに、液体でも自由電子をもつ水銀は比較的大きな熱伝導度を示していますね。
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