書評「学生・研究者のための伝わる! 学会ポスターのデザイン術」(江頭教授)
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ポスター発表、A1やA0の大きなサイズのポスターを前にした face to face での発表、は最近では一般的な発表のスタイルで多くの学会で採用されています。本学のカリキュラムでもコーオプ演習やサステイナブル工学プロジェクト演習などの授業の一環としてポスター発表を取り入れています。
以前は一枚物のポスターを印刷できるプリンターが希だったのでA4に印刷したものを貼り合わせたり、大きな台紙にはり付けたりしたポスターが主流で、その内容は口頭発表で用いるスライドと同様に、1枚目、2枚目と順を追って話が進む一本道のものでした。
本学のメディアセンターには大型のプリンターが設置されていて学生諸君の依頼を受けて大判のポスターが印刷できるようになっていますが、この様なプリンターが普及によってポスターの中での自由なレイアウトが可能になりました。表現できる事が増えたのは良いのですが、ではどんなレイアウトにするか、どんな色使いをするか、迷うことも増えてきます。ポスター発表での良いポスターの造り方を知りたい、そんな希望に応えるのがこの「学会ポスターのデザイン術」というわけです。
宮野 公樹 「学生・研究者のための伝わる! 学会ポスターのデザイン術」 化学同人(2011)
本書の構成、まずはイントロに当たる第1部に加えて以下の三部構成となっています。
- 学会発表用のポスターとは何か、何が求められるのかを語る「原理原則」編
- ポスターの具体例を出して、ステップごとに修正を加えてゆく疑似添削体験、ポスター修正ライブ
- 質問形式でポスターの要点・難点を解説するQ&A編
学生諸君にポスター作成の指導をしているとき、ポスター作成の要点をまとめた冊子がほしいな、と感じることは多々あります。しかし、実際にその内容を考えると意外と難しい。普通にポスター作成に関する注意事項を書き並べると、「分かっている人には分かるが、あたりまえで発見はない」一方で、「分かっていないビギナーには何を言っているか分からない」内容となってしまうでしょう。
そう考えると、この本の著者も述べていますが、ポスター作成について学生諸君が学習する一番の方法は、実際に自分でポスターを作成し、それを先輩や先生に手直ししてもらうことでしょう。とはいえ、それを書物の形式で行うことはできません。本書の中心部部分が「ポスター修正ライブ」となっているのは、その体験を擬似的に経験してもらうことを意図しているのでしょう。自分のポスターを添削してもらえる機会があればそれをフルに利用しましょう。しかし、そのチャンスがない、あるいは少ない場合、この本は役に立つと思います。そして、ポスター作成に慣れてきたらもう一度本書を読み返してみてください。本書の構成に込められた意味が実感を伴って分かってくると思います。
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