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市販のソフトウェアと法的責任(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前の記事(こちらこちら)で紹介した自動運転に関する法的な責任の問題について、ソフトウェアを事例として考えてみよう、それが今回のお題です。

 ここでソフトウェアというのは市販のアプリケーションソフトのことで、メディアを購入したり、ダウンロードしたり、何らかの方法でお金を払って購入するものを想定しています。

 このようなソフトウェアには何らかの「使用規定」がついているものですが、その中にはソフトウェアを使用した結果に対しての責任の免除に関する記述があるものです。

 むかしむかし、アメリカという国で表計算ソフトを使って資産運用計画を立てた男がいたそうな。そのソフトはたいそう便利じゃったが、数値の計算精度が十分ではなかったため、最終的な計算結果に誤差が生じておった。実際に運用された金額が莫大だったから、誤差による損害も大きかった。そんで、男はソフトの製作会社を訴えたそうな。ソフト会社は敗訴し、かなりの賠償を支払うこととなった。以来、ソフトウエアの使用規約には免責事項がつけられるようになったそうな。めでたしめでたし。

いや、べつにめでたくはないのですが、私が学生時代に所属していた研究室にパソコンが導入された頃、上記のような話を聞いた記憶があります。

 つまり、アプリケーションソフトは実のところどのように使われるか分からない。ソフト製作会社がいちいち責任をとっていたらあっという間に潰れてしまうでしょう。だからこその免責事項なのですが、この内容は、以前に紹介した自動制御装置の免責事項に類似したものです。

 

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 「どのように使われるか分からない」という点では自動運転の自動車もソフトウェアとよく似ている様に思います。自動運転の車が事故を起こす可能性がある、だからといって事故が起こらないように制限をかけすぎると車本来の目的である自由な移動も制限されてしまう。運転という領域では安全と自由との境目が曖昧で「自由に移動できるが安全」というバランスを見いだすことが難しい、というかそんなバランスを実現することがそもそも不可能なのだと思います。

 これは自動車の排気ガス規制のケースと対比すると分かりやすいと思います。自動車はNOxなど有害物を放出しますが、べつに有害物を放出するために作られたものではありません。自由に移動できて、なおかつ有害物を放出しない車、は想定可能であり、それを実現できるかどうかは技術の問題なのです。このようなケースでは車を運用する所有者ではなく、車の製造メーカーに排ガス規制の責任をもとめることができる。その一方で、自由に移動できることが事故の可能性と表裏一体であることから、自動運転では、自由に移動できて事故を起こさない車、をメーカーに求めることには無理があるのではないでしょうか。

江頭 靖幸

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