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大学院の勧め-7 (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 私は皆さんに大学院への進学を強く勧めます。少なくとも修士、可能なら博士号の取得をお勧めします。と言う書き出しで、学生さんたちに、これまで大学院への進学を強く勧めてきました。しかし、今回は大学院進学において,大きな覚悟が必要なことを述べたいと思います。

 大学院は大学の延長ではありません。大学は人類の知の限界・能力の限界を学びます。一方、大学院は、人類の知の限界・能力の限界を押し広げる人材の養成機関です。つまり、教員から学ぶのではなく、自分で自分に実力をつける場です。

 したがって、大学院へ進学する者は、自分で自分を高める意思と意欲が必須です。言い換えれば、先生を乗り越えて、その先へ行く覚悟です。先生はその指導や手助けはできます。しかし、正しい結果を教えてあげることはできません。この大学とは大きく異なる「学修」に耐えられないと大学院でつけるべき「実力」を身につけられません。

 大学院で身につけるべきは実力です。学位(学士、修士、博士)はその実力の保証書にすぎません。その保証書には、機能はあっても価値はありません。本体(実力)に価値があります。大学での学修で単位を取ることを目的にしていた人には、大学院進学をお勧めしません。単位の取得も、博士修士の取得も、目標にするとしても、目的としてはいけません。大学院進学の目的は、あくまで、修士・博士たるに十分な実力を着けることです。

 では、つけるべき実力はどのようなものでしょうか。

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 学士は、先生の与えた課題を、先生の与えた方法で解決できるようになることを目指します。つまり、戦闘能力の獲得です。先生の指示にしたがい、言われたことをやっていれば認められます。だから「学士は参加賞」と揶揄されます。

 修士は、先生の与えた課題を自分で解決できるようになることを目指します。つまり戦術立案能力の獲得です。先生の出した課題は決して簡単なものではありません。その解決には人並み以上の努力を必要とします。つまり、努力する能力を必要とします。だから「修士は努力賞」と呼ばれます。

 博士は、自分で課題を見いだし、自分で解決できるようになることを目指します。つまり、戦略立案能力の獲得です。評価されるためには、自分で人類の知の先端に到達し、それを押し広げたことを示さなければなりません。努力だけではなく、運や運を引き寄せる能力も必要になります。そのため、「博士は一等賞」と称されます。

 大学院への進学には、なによりも覚悟が必要です。自分を高めたいという意欲が必須です。「仕事は給料を得るための手段」、「大学での学修は単位取得、卒業が目的」と考えている方へは、大学院への進学を、止めはしませんが、お勧めできません。

片桐 利真

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