書評「アカデミック・スキルズ(第2版)――大学生のための知的技法入門」(江頭教授)
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「アカデミック・スキルズ」とは一体何でしょうか?本書の表紙には英文で「Academic Skills: Note-taking, Information Literacy, Critical Reading, Making Presentations, Writing Papers, etc.」と書かれています。つまり、「アカデミック・スキルズ」とは、ノートをとりながら講義を聴くこと、意識的に情報を集めること、注意深く本を読むこと、情報ををまとめて発表し、レポートを作成すること、要するに大学において行われている研究の内容そのものだ、といえるでしょう。本書は大学で学んだり研究したりする内容についてではなく、大学での学びや研究そのものについて、とくにその実技(スキル)について解説した本なのです。
表紙の英文で示された本書のエッセンスは目次の構成にも反映されています。第一章で「アカデミック・スキルズとは」何かを説明したあと、ノート・テイキング、図書館とデータベースを使った情報収集、本のクリティカル・リーディング(批判的読解)、情報整理の仕方、研究成果の発表の意義とプレゼンテーション、論文・レポートのやり方、書き方を、それぞれの項目に1章を割いて解説しています。それぞれの章ではそれぞれの活動の意義や対処する際の姿勢に始まって具体的な方法やノウハウが簡潔に紹介・説明されています。まったくの初心者でもこの内容を一読すれば、大体何をするべきか、についてイメージを持つことができると思いますし、あるていど経験と知識のある人でも新たな発見があるでしょう。
佐藤 望 他著「アカデミック・スキルズ(第2版)――大学生のための知的技法入門」東京:慶應義塾大学出版会, 2012。
「はじめに」で「大学1~2年生の少人数セミナーや初級セミナーでの調査・研究に照準を合わせている」と述べられている通り、研究室での卒業研究といった本格的な研究活動にはいる前に、研究とはどのようなものであるか、それを体験することを目的としたセミナー形式の授業の参考書として準備されたそうです。なるほど、研究そのものの具体的な内容を外してテスキル、もっと言うとテクニックの部分に焦点が当てられています。
以前「学生・研究者のための伝わる! 学会ポスターのデザイン術」を紹介した時も述べたのですが、アカデミックな活動、つまり「研究」は実際に何かを研究しながらいろいろな状況に直面しながら学んでゆく必要のあることだと思います。そういう意味ではこの本はこの本を読んだだけでアカデミックなスキルが身につく本ではありません。どちらかといえば、実際に研究をはじめた後で、折に触れて読み返すことでいろいろ役に立つ本、そんな本だと思います。大学の授業として研究体験型のセミナーの教科書として指定された人(これが本来の読者ですね)以外でも、卒業研究など、研究活動を行っている人には一読の価値があるでしょう。
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