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エコロジカル フットプリントのはなし(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「フットプリント」とは足跡のことですが、「エコロジカルフットプリント」になると別な意味があります。人間が生活するために必要な土地の面積と言う意味。それも「立って半畳寝て一畳」のような物理的に占有している面積ではありません。(それも含みますが。)人間が生活してゆくために必要な作物を生産する農地の面積、肉を生産する牧畜を行うための面積、海産物を供給する海の面積、そして化石燃料によって発生したCO2を吸収させるための森林の面積。この様な意味での「人間が生活するために必要な土地」の面積の合計が「エコロジカルフットプリント」なのです。

 NGO、Global Footprint Network のWebサイトには、このエコロジカルフットプリントを実際に計算した値が載っています。

 現時点で地球の人口70億人のエコロジカルフットプリントを合計すると地球1.6個分になるといいます。つまり地球1個では人口70億人を支えることはできないのです。

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エコロジカルフットプリントの推移。1970年代以降、地球一個分の面積を超えています。

 「えっ、でも今でも70億人の人が暮らしているはずだけど」と思った人。それはその通りなのですが、先に示した「人間が生活するために必要な土地」の意味は、サステイナブルに生活するために必要な土地、という意味なのです。化石資源を利用すれば、その分大気中に放出されるCO2を吸収させるための森林の面積が必要だ、として地球1.6個分という1個より大きい数字が算出されるのですが、実際にはすべの化石燃料の使用に見合っただけの植林が行われているわけではありません。

 つまりサステイナブルではないやり方で化石資源にたよって70億人は生活している、ということをこの地球1個分よりも大きなエコロジカルフットプリントが教えてくれるのです。

 前回の記事で「70億人は地球には多すぎるのではないか」と書いたのですが、エコロジカルフットプリントの計算結果はまさに「多すぎる」ことを示しています。では、多すぎる人口をどうすれば良いのでしょうか。ひとつは人口を減らすこと。もうひとつは一人あたりのエコロジカルフットプリントを小さくすることが考えられます。後者は各自の生活レベルを下げることの他に、生活レベルを維持しつつエコロジカルフットプリントを小さくするような技術を開発することも含まれていますが、これこそが「サステイナブル工学」の役割なのです。

江頭 靖幸

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