続 入試問題の作成について(江頭教授)
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先日「入試問題の作成について」という記事で入試問題の出題の訂正に伴って合格するはずだった学生が不合格になっていた、という話題を紹介しましたが、今度はセンター試験の問題で出題ミスではないか、という問題提起がされているそうです。(産経ニュース「「ムーミンの舞台はフィンランドではなくムーミン谷」 ネット上で「出題ミス」の指摘相次ぐ」)
これが出題ミスかどうか、私は判断する立場ではありません。ただ件の地理のセンター試験の問題をみてみると、どうも試験問題というよりクイズ問題の様に見えてしまいます。試験問題が何を問うているのか、物理や化学の問題と比べて不明瞭なようです。
今回話題になった地理B問5の問題文では、選択肢の例示の際は「スウェーデンを舞台にしたアニメーション」と書いているのに、設問自体では「フィンランドに関するアニメーション」と巧妙に言い換えています。
ですから「ムーミン」の舞台がフィンランドだ、と主張している訳では無いと言い逃れることはできるのですが、逆に「関する」が具体的に何を示しているのかは不明です。
「ムーミン」がフィンランドに「関する」アニメーションだ
とは言えるでしょうが逆に、
「小さなバイキングビッケ」はフィンランドに「関する」アニメーションではない
とは言えないでしょう。
これが具体的な会話などの文脈で現れるのであれば、即座に相手に問い直すことで解決する話ですが、試験、という不自然な状況下では迂闊な(あるいは迂闊さを装った狡猾な)コミュニケーションだと思います。
「試験」というもは受験者と意思の疎通を図る、という意味では極度に制限の多い、一方通行のコミュニケーション手段です。結局は「そんなの常識で考えれば」という言い方にならざるを得ないのですが、その常識はだれが決めているのか、少なくとも受験をする学生ではないでしょう。(学生は毎年入れ替わってしまいますからね。)学生の視点からすればなるべく常識という名の「他人のルール」に煩わされたくはないはずです。
とはいえ、全く誤解の無い様に設問を作ろうとすると煩雑になるか、ほとんど答えを言っているような、どうにも不格好なものになってしまいます。私は、これはテストが「一方通行のコミュニケーション」であることの弊害だと思います。現時点では受験生からのフィードバックに個別に対応することは難しいのですが、将来的には(AIなどを使って)より満足のできる学力測定手法が開発されるのではないでしょうか。
PS: ムーミンは「ムーミントロール」なので(カバじゃなくて)トロールだ、と思っていたのですが、トロールが何かは良く知りませんでした。指輪物語の映画(ロード オブ ザリングス)を見てびっくり!トロールってあんなのなんだ!
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