« 「洋上風力発電」と法整備(江頭教授) | トップページ | スタンド・クランプ・ムッフ...ムッフって何?(江頭教授) »

実は微妙な呼吸のバランス(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先日、関西の観光施設で動かなくなった猫の様子を見にいった男性が突然倒れて死亡した、というニュースがありました。

 このニュースを最初に聞いたとき、「ガスが発生していたらしい」という表現だったので、有毒な火山性ガス、たとえば硫化水素(H2S)ガスが原因なのか、などと思ったのですが、もう少し詳しい情報がTBS NEWSの22日 23時46分の記事、「有馬温泉の観光施設で男性死亡、何が?」に載っていました。

 以下、このニュース記事から引用しましょう。

「(消防の話では)普通は酸素濃度が21%だが、搬送直後に測ると13~14%の酸素濃度だったと。1~2回息を吸うと倒れてしまうレベルだそう」(有馬温泉観光協会 金井啓修会長)

消防士の方の話を聞いた観光協会会長の発言を報道するニュースから引用しているので、又聞き以上の伝聞なのですが、それでも「13~14%の酸素濃度」では酸欠になる、ということは納得できるところです。

 通常の空気には21%の酸素が含まれています。「13~14%」というこは酸素は2/3くらい残っているのですが、それでも人間は酸欠になるのです。

Photo_2

 人間の呼吸と酸素濃度については、このブログでも何回は触れています。例えばこの記事では、吐く息には「酸素が16.44% 二酸化炭素が3.84%」含まれている、というデータが猪飼道夫編「現代保健体育学大系 ; 13 人体生理学」大修館書店(1984)という本にあることを紹介しました。

 空気の中の酸素は血液に溶け込んで体中に運ばれるのですが、血液に空気中の酸素がすべて吸い取られてしまう訳ではありません。

 水がひくいところに流れる様に、熱が温度の低いところに流れる様に、空気中の酸素も空気から血液に流れていますが、その空気中の酸素濃度が急に低くなれば、逆に血液中の酸素が体の外に引き抜かれてしまうのです。

 一旦低濃度の空気を吸い込むと体が酸素不足を感じてもっと酸素を取り入れようと大きく呼吸をするようになります。ところが、この状態では全くの逆効果。呼吸をくり返すほど酸素が奪われるので、どんどん酸欠状態になり、意識を失ってその場所から逃れることもできなくなってしまいます。

 酸欠状態にある場所から一歩でも歩けば逃れられるとしても、こと呼吸に関しては自分の意志でコントロールすることはきわめて困難です。そう考えると、酸欠の危険はとても大きいですね。

 

 

江頭 靖幸

« 「洋上風力発電」と法整備(江頭教授) | トップページ | スタンド・クランプ・ムッフ...ムッフって何?(江頭教授) »

解説」カテゴリの記事