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血を吸う試験管(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 おっと、怪談話ではありません。採血の道具に付いてのお話です。

 さて、若い皆さんはあんまり血を採られることはないかも知れません。献血ぐらいでしょうか。でも年をとると定期的に血液検査を受けることになる人も増えてきます。私もその1人。毎年血液を採取されていますが、その際にちょっとビックリした、というお話です。

 看護師さんが注射器をちくりと腕に刺して血液を吸い上げて、さて、その取った血液を専用の試験管(採血管というらしい)に移します。今回たまたま、その様子を眺めていてびっくり。採血管にはフタが付いているのですが、そのフタに注射器の針を刺すだけで、あら不思議。血液が勝手に採血管に吸い込まれていくのです。

 看護師さんは注射器のピストンを押しているわけではありません。そもそも注射器に触ってもいないのに血液はちゃんと採血管に流れ込んでゆきます。それどころかちょうど良さそうな量のところで自然に止まりました。

 これは...。思わず看護師さんに聞いてみました。

「この試験管、減圧されてるんですか?」

Photo

 その通り、だそうです。

 採血管は密封されていて、中の空気が抜かれている。注射器とつなげるとピストンの外側には1気圧の圧力がかかっているのに、内側の圧力が低い。その圧力差でピストンが動かされ、血液は採血管に流れ込むのです。

 ピストンの両端の圧力が同じになったところで流れは止まります。採血管の空気を半分抜いておけば採血管の半分まで血液が流れ込んだところで勝手に吸引がとまるという訳です。空気を抜く量を調節しておけばちょうどいい量の血液が採れる。巧くできています。

 聞けば予め採血量に合った減圧状態で業者から納品されるとか。長期間に渡って真空状態を保持できる試験管のフタのシーリングの技術はすごいな、と最初は思いました。でも病院の採血管ですから、サプライチェーンの管理や使用期限のチェックは厳密に行われているはず。研究室の試験管とは違いますよね。

 この真空採血管、ちょっと調べると1949年からあるそうです(日本BD 採血製品総合カタログ)。いままで気がつかなかっただけで私の採血でも使われていたのかも知れません。

江頭 靖幸

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