大きいシリコン栓も外れやすい(江頭教授)
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えっ、外れやすいのは小さいシリコン栓なのでは?
先日の記事を読んだ人には突っ込みを入れられるところなのですが、実は大きなシリコン栓にも外れやすい、という問題はあるのです。
シリコン栓は試験管やフラスコなどのフタとして利用されています。試験管内の圧力が外気より低い場合は混入を防ぐために、高い場合は漏出を防ぐために使われているわけです。
シリコンゴムの柔軟性のおかげでシリコン栓は試験管のガラスの口にぴったりと密着して外気を遮断することができますが、これが逆に問題を起こすケースもあります。まず、試験管内の圧力が低くなる場合は問題はありません。外気圧によって試験管とシリコン栓は密着するようになります。
一方で、試験管の内圧が高くなるとシリコン栓が外れる力が働くことになります。大きなシリコン栓はこの圧力に意外と弱いのです。私自身、普通のサイズのガラス管とシリコン栓の組み合わせで行っていた実験を、管のサイズを大きくしてやり直したところ栓が外れやすくなって困った経験があります。
内圧によってシリコン栓が抜けそうになっているとき、この力に対抗するのは、試験管のガラスの内壁と、そこに押しつけられたシリコン栓のゴムの側面と、の間に働く摩擦力です。
シリコン栓のサイズが大きくなる、例えば直径が2倍になったとすると、摩擦力が働くシリコン栓の周の長さは2倍になります。
その一方で、シリコン栓がガラス管の内圧から受ける力はシリコン栓の断面全体に作用するので、4倍に増えるのです。
面で受ける力を線で受け止めている、サイズの2乗で増える力を1乗でしか増えない長さで受け止めているので、サイズが大きくなるほど弱くなってしまいます。
この例は「面積で作用するものと体積で作用するもの」のバランスによってサイズ依存性が決まる、といういわゆる「二乗三乗則」とよく似た関係です。
試験管とシリコン栓には適当なサイズがあって、それを変えるといろいろな影響が生じるということですね。
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