電子天秤がくるう話(江頭教授)
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天秤は本来、分銅と測定対象との重さを比較することで、対象の質量を測定するものです。
その一方で電子天秤は実質的には対象に働く重力(重量)を測るものですが、電子天秤内にある分銅によってキャリブレーションを行うことができるので、まあ、時間差で分銅と対象の重さを比較している、とも言えるでしょう。
さて、今回は電子天秤について自分が経験したトラブルについて紹介しましょう。写真は以前、私が自作したスターラーチップです。スターラーチップなので、中に見えている金属片はかなり強い磁石なのですが、この構造だと大きなビーカー(2L)を巧く撹拌できるのが特徴です。
さて、このスターラーをビーカーに入れて実験を行い、電子天秤でビーカーと内容物の重さを、いや質量をはかっていたのですが、スターラーが入っていると安定した質量が表示されないのです。ビーカーの試料皿内での置き場所によって同じ値にならない。場所をずらすと表示が変わる。うーん、これではまともに使えないぞ。
いろいろ調べてみると、どうやら電子天秤の中に磁石が使われていた様なのです。スターラーとしてビーカーに入れられていた磁石と電子天秤内の磁石が引き合うちからが加わって、重力が正しく測定できない。これでは電子天秤内に標準の分銅があってもただしい質量を測ることができません。
で、結局どうしたのか。
磁石同士に働く力は距離が離れると小さくなりますが、重量はそうではありません。(いえ、地球の半径程度に距離が離れれば小さくなることが分かるのですが。)試料皿とビーカーの間にスペーサーを入れて磁石の影響が無視できる程度の距離を取ることにしました。
ちなみに、スペーサーに必要な厚み、いろいろ試して 8 cm としました。発泡スチロールの厚み 8 cm の板を準備したのですが、規格を外れているらしくて特注する羽目になったのを記憶しています。
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