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電子天秤は(かろうじて)天秤である(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 重さを量る道具を大きく分けると、一つは天秤の仲間、もう一つはバネ秤の仲間に分類できると思います。

 天秤は重さを比べる道具。支点で支えられた腕の両側にモノをのせる皿があり、基準となる分銅と比較することで重さ、正確には質量をはかります。

 一方、バネばかりでは対象物をバネに吊り下げて、その伸びを測ることで重さをはかります。バネの伸びが物に作用する重力に比例することを利用するので、バネばかりは対象の質量ではなくて重量を量る道具だと言えます。

 さて、化学の実験室に置かれている電子天秤は、このどちらに分類されるのでしょうか。形はキッチンスケールとよく似ています。重さを量る機構も似ていて、電子天秤は測定対象物に働く重力に比例する値をセンシングする機械です。

 もうこれはバネばかりの仲間だ、と言いたいところですが、そうでもないのです。

 「バネばかりを月に持って行けば測定値は6分の1になるが、天秤は地球でも月でも同じ値になる」質量と重量の測定について、これは正しいのですが、では電子天秤を月に持って行ったらどうなるのでしょうか。

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 地球から月に持って行った電子天秤、おそらくそのまま測定すれば地球での値の6分の1の値を示すはずです。

 ところが、電子天秤には「キャリブレーション」という機能があるのです。電子天秤の内部には基準となる分銅が入っていて、その分銅を使って正しい質量が量れるように校正(キャリブレーション)することができるのです。

 月でキャリブレーションを実行すると基準の分銅も6分の1の重量になっていますから、校正後の電子天秤は正確な質量を示すことになるでしょう。

 上皿天秤や直示天秤は分銅と対象物の重さを同時に比較する装置です。電子天秤は分銅と対象物とを同時に比較することはできませんが、適宜校正(キャリブレーション)を行うことで時間差で分銅の質量と対象物の質量を比べています。

 このキャリブレーション機能があることを考慮すれば「電子天秤は天秤である」と言えると思いますが、でも「かろうじて」とつけたいですね。

江頭 靖幸

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