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ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち? 3年目 (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 これは本学科1年生向けの「サステイナブル化学概論」というオムニバス形式の授業での私のレポート課題、本当は「どちらの業績を評価するか」という質問ですが、まあ、「偉いのはどっち?」、あるいは「どっちが好きですか?」くらいの意味です。私の授業ではハーバーボッシュ法の説明をして、毎年この質問をすることにしています。

 ハーバーボッシュ法は空気に含まれる大量の窒素ガスを植物が利用できる形態に変化させる技術です。この方法でほぼ無尽蔵の窒素肥料を合成することが可能となり、70億を超える人口を支える現在の農業の礎となった偉大な発明です。

 ハーバーとボッシュ、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュ、の名前はこの空中窒素固定技術では必ず一緒に出てきます。

 しかし、その役割は大きく異なっていました。大ざっぱに言えば窒素、水素、アンモニアの平衡関係を解明し、高圧条件下で触媒を用い、比較的低温でアンモニアを合成する方法を考案したのがハーバーであり、高圧で水素を扱う場合に起きるいろいろな困難を一つ一つ解決して実用化したのがボッシュだ、という役割分担になります。

 昨年はほぼ半々に意見が分かれたのですが、今年はハーバーとボッシュで3:2くらいの比率でハーバーを推す学生が多い結果となりました。

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 中には、ハーバーボッシュ法を実現する際、キーとなった鉄系触媒を発見したミタッシュの業績を評価する、というひとも。確かに、ハーバーの使用していたオスミウム系触媒ではハーバーボッシュ法は経済的に成立しなかったと言われています。この学生さんはハーバーボッシュ法の歴史についてよく調べてくれたようです。

 もっとも、ハーバーボッシュ法について調べすぎたのか、「ボッシュがハーバーの義弟である」という謎の新設定を持ち出してくる人も。いやいや、そんな話はないですから。

 ちなみにボッシュ夫人について。

 カール・ホルダーマン 著、 和田野 基 訳「カールボッシュ その生涯と業績」(1964)文陽社(東京)によると、ボッシュ夫人はエルゼ・シルバッハという人で「フォークトランドの名望有る工場一家の出身」だそうです。もともとはボッシュの妹、パウラ・ボッシュの友人だったとか。1902年に二人は結婚し、生涯添い遂げたそうです。

 ねっ、ハーバーとは関係無いでしょう。

江頭 靖幸

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