マンガン団塊の今(江頭教授)
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前回の記事で「団塊の世代」と「マンガン団塊」という二つの「団塊」について考察したので、今回は「マンガン団塊」について紹介しておきましょう。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のWEBサイトには海洋鉱物資源についての解説がまとめられていますが、マンガン団塊もその一つとして紹介されています。
マンガン団塊は、直径が2~10cm程度の球形をし、米国ハワイ沖やインド洋などの水深4,000~6,000mの海洋底の堆積物上に半埋没する形で分布しています。この中に含まれる主な金属は、鉄、マンガンですが、開発対象元素として銅(約1%)、ニッケル(約1%)及びコバルト(約0.3%)が含まれています。
とあるように、マンガン団塊は水深4,000~6,000mという深海に存在しています。海底に表出していて容易に採取できそうな形状なのですが、この海の深さが採取を困難にしています。地上の鉱山からの採取と比較したとき、どうしても割高になってしまうのです。
ということで、この紹介ページには以下の注釈がついています。
注)これらの海洋鉱物資源は、未だ開発には至っておらず、将来の貴重な資源として期待されています。
つまり1970年代から注目されていたマンガン団塊、実は現在に至るも実用化されていないのです。1970年代から今、2018年にいたるまで、深海からマンガン団塊を引き上げるコストに見合うほどに金属資源の価格が高騰したことはなかった、つまり、それなりの資源供給が行われていたわけです。
1970年代、マンガン団塊が注目された時代には、金属資源の枯渇はすぐそこにある脅威だと感じられたのでしょう。しかし、実際には2018年に今になっても「金属資源危機」は起こっていません。
しかしながら、サステイナブルな生産、具体的には再生可能資源とリサイクル物資によって生産をまかなうような生産が完成されない限り、どんな資源もいつかは枯渇します。サステイナブル工学が持続可能な生産を実現するか、マンガン団塊へのニーズが高まるほどの資源不足が起こるか、さて、一体どちらが現実になるのでしょうか。
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