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2018年5月

2018.05.31

教員向け授業参観(江頭教授)

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 高校や中学、小学校でも「先生」と呼ばれる人たちは教員免許状を持っているひと、つまり教育に関して学んだ人たちです。それにくらべて大学の先生、つまり私たち大学教員は必ずしも教育についての教育を受けているわけではありません。では大学教員はどうやって授業のやり方を学んだのでしょうか。

 これは人それぞれでしょうが、大抵は自分が受けた授業の見よう見まねでスタートしたのだと思います。中でも面白かった授業、分かりやすいと思った授業を思い出しながら、自分もそれに近づけるように頑張るわけです。とはいえ、大学の授業で教える内容も変化しますし、教室の設備も新しくなってゆきます。いずれは学生時代の記憶だけでは間に合わなくなります。さて、どうしましょう。

 大学の教員ですから、まず「自分で考える」のは大前提ですが、どんな授業は有効なのか、ヒントや前例が欲しいところです。

 本学で行われている授業点検(こちらの記事で紹介しています)は、本来は授業内容を相互評価する目的で行われていますが、自分の授業の参考にするための授業参観としても有意義ではないか。という発想で本学では授業点検と並行して授業参観を実施することになりました。

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2018.05.30

3年生の授業「地域連携課題」発表会(江頭教授)

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 「地域連携課題」という授業、このブログでも何回か採りあげています(たとえばこの記事)が「学生が地域の関係者と連携しながら地域・社会的な課題等に取り組む」ものです。この授業、本学科の3年生前期の授業、つまりクォーター制(前期を1期、2期の2つに分ける制度)で実施されるコーオプ実習の際、大学に残っている学生に向けて行われている授業で、週3コマ、短期集中でかなりの労力をかけて行われるグループワーク型の授業です。1期、2期の発表会を経て、優秀な班が最終結果の発表会に進出。しかも、優秀者は学部長賞を受賞する、というおまけ付きです。

 本学部は八王子キャンパスにありますから、この場合の「地域」は具体的には八王子市のことです。八王子市の「担当者等を講師に招いて地域が抱える各種の課題を学んだ後」に、「学生が自ら主体的に地域から課題を選定」し、その解決方法を提案する、それが地域連携課題の授業内容です。この授業では、いろいろな施設や企業を訪れて課題の解決方法を調査・分析、結果を比較検討することで効果的で具体的な提案を目指します。

 今週の月曜日、5月28日には1期の成果発表会が開かれたので、私も参加してきました。

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2018.05.29

サステイナブル工学基礎 学内施設見学(2018年度)(江頭教授)

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 本学の工学部が掲げる「サステイナブル工学」、その最初の授業として本学2年生が履修している授業が「サステイナブル工学基礎」です。本年四月からは2017年度入学の第3期生が受講を始め、第3回目の講義が行われています。

 この「サステイナブル工学基礎」で行われるのが学内施設の見学。工学部三学科が代わる代わる学内のサステイナブル工学に関係の深い施設を見学します。5月28日には我々応用化学科の見学が行われました。

 見学は、まず「スマートハウス実習棟」という専門学校の施設からスタート。太陽電池が乗っている建物です。ここにはいろいろな家庭向けエネルギー関連技術の設備があり、その運用や施工方法を学ぶ場所となっています。たとえば太陽電池。200Wの太陽光パネルが30枚。これに施工実習用のパネル6枚を加えて全体で7200W、つまり7.2kWの発電能力があります。

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 さて、この写真をみて分かる様に見学当日は曇天。太陽電池の発電量は実測で1.5kWだ、ということがタブレットで確認できるようになっているそうです。

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2018.05.28

コンビニエンスな八王子キャンパス(江頭教授)

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 本学八王子キャンパスの食堂、書店、コンビニエンスストアの複合施設 FOODS FUU のサンクスが閉店した、という話を紹介したのですが、今回はその後日談。いま FOODS FUU に行ってみると...

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良くみるコンビニの立て看が出ています。

 そして建物に入ると

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このとおり。セブンイレブンが営業しています。

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2018.05.25

ゲリラ雷雨 in 八王子キャンパス(江頭教授)

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 2018年5月24日、お昼過ぎのことです。どこからか聞こえる「ゴロゴロ」という音、重苦しい曇り空にせん光がひらめいたかと思うとあっという間に雨が降り始めました。雨の勢いはどんどん激しくなって嵐のような状態に。

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 なんか雨の音がおかしいぞ、と思って研究室前の犬走りを覗いてみると写真のような氷片が。

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 写真では対比物がなくてサイズが分かりませんが、1cm 弱といったところ。そうです、雨だけではなく雹が降っていたのです。

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2018.05.24

八王子キャンパスの「ノーサンクス」時代(江頭教授)

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 学科ブログを書いていると「一体どんな記事が人気なんだろう?」と考えることがあります。本学の広報担当の人に話を聞くと「いろいろ考えてみても、結局何が人気になるかわからない」とのこと。そこで話題になったのは、本学の作っている動画(Youtubeで公開中)の中で一番アクセス数が多かったのは本学内にあるコンビニエンスストア、サンクスの店舗の紹介だった、という話。一般のサンクスより売り場の作りが広々としていて特徴的なのが注目されたようですが、大学の広報としてはどうなんでしょうか。

 さて、このサンクスについて。まだ冬のころのある金曜日に学生さんたちが「サンクスは今日の昼までだ」という噂話をしていました。年中無休が原則のコンビニエンスストアも大学キャンパス内ではキャンパスの時間に合わせて週末はお休みです。金曜日にサンクスが閉まるのは普通のことなので、昼に閉まることが特別なのかと思って話を聞くと、なんと「閉まる」のは休日という意味ではなく、「閉店」という意味だというのです。

 こんなやり取りがあって数日後、サンクスに行ってみるとこの状態。

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 そして閉店のお知らせも。

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2018.05.23

期間限定!八王子キャンパス屋台村(江頭教授)

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 東京工科大学、八王子キャンパスのお昼ご飯事情については、こちらの記事で紹介しました。厚生棟には学生食堂があります、と紹介したのですが、その一部は現在工事中でお休みです。

 そこで登場したのが屋台村。工事中の期間限定ですが数台のキッチンカーに来てもらって厚生棟まえの広場が臨時のフードコートになりました。ラインアップはカレー、ローストビーフ丼、たこ焼き、ケバブ、唐揚げ丼、オムライス、ガパオライス、焼きそば、タコライス等々。若干ジャンクフードっぽい気もしますが、学生諸君はいつもと違ったお昼ご飯を楽しんでいる様子です。

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2018.05.22

応用化学科 安全巡視、三回目(江頭教授)

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 安全巡視とは、大学や企業において現場の安全にたいする取り組みの状況をチェックするためのパトロールのことです。応用化学科が所属する本学の工学部では月に1回、この安全巡視を行っています。(以前こちらの記事でも紹介しています。)

 今回、5月21日の工学部安全巡視は応用化学科、三回目の安全巡視でした。九つの研究室と学生実験室とがあるのですが、今回はそのうち三つの研究室を対象として、大山工学部長、山下応用化学科学科長、そして安全委員の片桐教授が研究室を回り、現場を見ながら安全上の問題点が無いかチェックする、そこまではいつも通りなのですが、第3回目ともなると目立った問題点は対応済みとなっています。

 そこで、安全上の問題点に加えて、研究室における安全上の工夫などを紹介するのも、安全巡視報告の一つの役割となってきます。

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 例えば天井に固定されたこの棚。壁をつくり、その壁にロッカーを固定するスタイルに比べてコンパクトで自由度も高く、固定という点でも安全性が高いですね。そしてなにより省スペース。棚の荷物に両側からアクセスできるのもメリットです。

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2018.05.21

東京工科大学、お昼ご飯事情(江頭教授)

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 大学のキャンパスというものは多数の人間が集まるところです。その人たちがお昼休みに一斉に食事をしよう、というのですからそれなりの施設が必要になります。

 本学の八王子キャンパスにもお昼ご飯を食べられる施設がいろいろとあります。まず、厚生棟には学生食堂が3カ所あります。安くて量が多い、定番の学生食堂です。

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 隣接する FOODS FUU という建物には牛丼店、ラーメン店などの食堂が入っています。こちらはチェーン店ですから、一般の飲食店ですね。

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 それにマクドナルド。特徴的なデザインの店舗です。

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 これに加えて、FOODS FUUにはコンビニエンスストアなどが入っていて、多くの学生諸君が利用しています。それ以外にも学生向けのお弁当の販売も行われていますから、大学内での昼食にはそれなりの選択枝があります。

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2018.05.18

触媒としての水銀(江頭教授)

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 水俣病の原因物質となったメチル水銀、この物質が当時のアセトアルデヒドの製造プロセスで使用された水銀触媒から発生したものだった、という話を先日こちらのブログ記事で紹介しました。現在のアセトアルデヒド製造プロセスでは水銀触媒は使わない、ということも併せて紹介しましたが、では水銀触媒は現在まったく使われないのか、というとそうでもないのです。

 環境省の”「水銀に関する水俣条約」の概要”という資料をみると、世界での水銀需要の20%が「塩化ビニルモノマー製造工程」で使用されていることが分かります。(同資料には13%が「塩素アルカリ工業」で使用されていることも記されています。これは水銀法による食塩の電気分解に対応していますが、日本ではすでに全廃されています。)

 水銀のリスク低減を目指す「水俣条約」では

塩化ビニルモノマー、ポリウレタンなどの製造プロセスでの水銀使用を削減。

とされていますから、塩化ビニル製造用の触媒としての水銀の利用も廃止に向かうと思われます。

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2018.05.17

工学部教員の懇親会を八王子日本閣で行いました(江頭教授)

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 新学期が始まって一ヶ月と半分。授業も5週目に入り前期の三分の一が終わり、学生諸君も落ち着いてきた様子です。教員にとって大きな行事であるオープンキャンパスにもあと少し時間がある。このタイミングで、工学部教員の懇親会が開かれました。

 さて、会場は「八王子日本閣」。ご覧の通り、結婚式場でして大学教員の懇親会には少しオーバーかも知れませんが、ちゃんとここを選んだ理由はあるのです。

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2018.05.16

水俣病とアセトアルデヒド(江頭教授)

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 水俣病の原因は水銀、それも有機水銀と呼ばれたメチル水銀が体内に取り込まれたことによる重金属中毒である、ということは良く知られていると思います。メチル水銀を放出したのはチッソの水俣工場だった、これも良く知られているのではないでしょうか。

 では、チッソ水俣工場では何を作っていたのか。正確にはチッソ水俣工場のどのプロセス、何を造るプラントからメチル水銀が流出したのでしょうか。ここまで来ると知っている、という人は少ないと思います。

 答えは「アセトアルデヒド」。アセトアルデヒドを造っているプラントからメチル水銀が流れ出たのです。(まあ、化学に詳しくないひとは「アセトアルデヒド」とは何ですか、となるだけでしょうが...。)

 さて、今回のお題。このアセトアルデヒドは今、どのように作られているのでしょうか。他のアセトアルデヒド製造プラントから再びメチル水銀が流出し、新たな水俣病を起こす可能性はないのでしょうか。

 まず確認しましょう。アセトアルデヒドは炭素、酸素、水素からなる有機化合物であって、水銀を含んではいません。アセトアルデヒドは当時、アセチレンと水を反応させて作られていましたから、原料物質にも水銀は含まれていません。

 当時のアセトアルデヒド製造プラントでは水銀は触媒として利用されていました。触媒は「自身は変化することなく、反応を加速させるもの」なので、本来はプラントから排出する必要はありません。水銀は安価な物質ではありませんから、廃液から水銀を回収した方が有利なはずなのですが...。

 実際に、水俣病が発生した当時、水銀を触媒として利用していたアルデヒド製造プラントは日本国内にも6基以上あったそうですが、メチル水銀が流出して水俣病が起こったケースは2件だけです。なぜ、こんな事が起こるのか、についてはこのページで紹介した書籍「水俣病の科学(西村 肇, 岡本 達明 著 日本評論社)」に詳細な考察が述べられていますので参照してください。

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2018.05.15

「公害の輸出」と「水俣条約」(江頭教授)

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 先日、こちらの記事で「公害の輸出」と呼ばれる現象、グローバル化した世界では環境規制の緩い国に化学工場が集まって公害の原因物質を出し続けること、を説明しました。グローバル化した世界では、規制の緩いところに問題が集中する。これは一般的な傾向で、化学工場の廃棄物による環境汚染もその例に漏れない、ということです。

 この「公害の輸出」を防ぐためには世界で一斉に規制を行うことが必要ですが、「世界政府」が存在しない現在の世界では、法的規制は多国間での条約締結という形をとるになります。

 その具体例として思い浮かぶのは以前こちらの記事でも紹介されている「水俣条約」です。

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2018.05.14

保護者懇談会のこと(江頭教授)

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 先週末、5月12日、13日の土日に、本学の厚生棟で保護者懇談会が開催されました。対象者は2年生以上の学生です。

 本学の保護者懇談会は春と秋、二回行われています。春の懇談会では全国の地方都市でも開催し、希望される保護者の方々と広く面談をする機会を用意しています。今年は5月19日から6月10日までの期間、昨年同様、全国15箇所の会場(盛岡、仙台、水戸、松本、広島、福岡、札幌、静岡、名古屋、郡山、新潟、宇都宮、長野、富山、高崎)で開催の予定です。

 この保護者懇談会、八王子キャンパスで行われた懇談会では学生の家族の方で東京近郊に在住の方々が大学を訪れましたが、学生さん本人が一緒に面談をうけるケース、保護者の方だけでの面談となるケース、どちらのケースもありました。懇談会は事前登録制ですが、一昨年、昨年と申し込み数は増えています。工学部は開設4年目に入ったところなので、今年までは対象者が増え続けているので順当なところです。

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2018.05.11

グローバル化と公害の輸出(江頭教授)

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 先日、本ブログの「化学工場と法規制」という記事で化学物質の製造に伴って発生する有害な副生物の処理についての考え方を述べました。化学物質を製造している工場から有害な副生成物が放出されると公害問題が起きる。これを防ぐためには法的な規制が必要だ、という話です。ここで重要なのは法的な規制はすべての化学工場、すべての化学会社に例外なく適用されなくてはならない、という点です。廃棄物処理を免れた化学工場が一部にでも存在を許されれば、真面目に処理を行っている化学会社は市場競争に負けて淘汰されてしまいます。

 このお話、一つの国の中の話として説明していましたが、現実の世界ではグローバル化が進行し、世界の市場は一つになろうとしています。一つになった世界の市場では世界中の国の企業(化学会社も含む)が自由な市場競争を行うことになるのですが、実は、ここで先に書いた「廃棄物処理を免れた化学工場が一部でも存在を許され」るという状態が発生する余地があるのです。

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2018.05.10

全学教職員会にて「コーオプ教育」に関する発表が行われました。(江頭教授)

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 本学の工学部の特徴の一つであるコーオプ教育は、最大8週間の企業での有給の就業体験であるコーオプ実習を中心とした実学に基づいた教育プログラムです。

 今回、本学の教職員、全員が参加する「全学教職員会」において、このコーオプ教育、とくにコーオプ実習についての発表が行われました。ご担当は戸井コーオプセンター長。工学部設立に合わせてコーオプ教育導入が決定された経緯から始まって、コーオプ実習に学生が派遣されるまでの教育内容、実習のスケジュール、終了後のフォローアップなど、コーオプ教育の一連の流れまでをまとめて解説する内容でした。工学部以外の教員・職員の皆さんも、このコーオプ実習について耳にしたことはあったかと思いますが、本格的に内容について聞くのはこれが始めてではないかと思います。

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2018.05.09

化学工場と法規制(江頭教授)

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 「化学工場は何をするところですか?」 という質問に皆さんなら何と答えるでしょうか。

 原材料から有用な化学物質を製造している。

 素晴らしい。でもこの答えは50点です。

 原料から人の役に立つ物質を造る、このプロセスでは、大抵の場合別に役に立たない、そして時には有害な物質、副生成物も同時にできてしまいます。役に立たないからといって勝手に捨ててしまうことはできません。何かの方法で無害化してから廃棄する必要があります。そこまで考えると化学工場で行われていることは、

原材料から有用な化学物質を、副生成物から無害な廃棄物を製造している

となるでしょう。

 廃棄物を製造、というのは変な言い方ですが副生成物も化学物質の一種ですから、それを変化させるための作業が必要な点では有用な化学物質の製造と同じです。そのための施設も必要ですし、エネルギーも消費します。

 こう考えると化学工場を運営する費用の半分は廃棄物処理だ、というのは言い過ぎだとしても、廃棄物処理のコストがそれなりの割合を占めることが理解できると思います。化学工場は原則的には有用な化学物質を販売した費用で運営されているので、化学物質の価格には副生成物の処理費用も上乗せされていて、その割合は決して小さなものではない、ということですね。

 さて、ここまでは「副生成物の処理を行う」という前提で話をしてきましたが、誰かが副生成物を処理しないで捨ててしまう、と決めてしまったらどうなるのでしょうか。

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2018.05.08

SDGs ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」(江頭教授)

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 サステイナブル・デベロップメント・ゴールズ(Sustainable Development Goals, SDGs)、つまり「持続可能な開発目標」については以前このブログの記事でも紹介しています。「アジェンダ21」「ミレニアム開発目標」といった国連の行動計画の最新版であり、2030年に向けて世界(正確には国連加盟国)が目指すべき17の目標を掲げています。

 今回は、そのうちの6番目の話をしましょう。

 ゴールその6は「安全な水とトイレを世界中に」です。

 世界に全体出考えると安全な水をやトイレにアクセスできない人がたくさんいる、だからこそのゴール設定なのですが、日本にいると何をいまさら、と思えます。

 そもそも、日本は降水量が大きな地域にある海に囲まれた島国で、豊富な雨が川となり、比較的短い距離で海に注ぐ環境にあります。島国なので複数の国をまたぐ「国際河川」もありません。この豊富な淡水資源を背景に、上下水道の設備も良く行き届いていて、すでにこのゴールは達成している、と言えるでしょう。

 では、水資源に恵まれた日本にとって、ゴールその6は苦もなく達成される低いハードルなのでしょうか。いえいえ、この「安全な水とトイレを世界中に」もゴールを短く表現したものなので、実際にはもっと広い意味があるのです。

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2018.05.07

さあ、今日から授業再開です(江頭教授)

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 今日(2017年5月7日)は月曜日。もちろん、月曜日はいつも「授業再開」の日なのですが今日は特別です。何しろ、ゴールデンウィーク、臨時の休校日を含めて9連休のお休みからの授業再開ですからね。

 休み明け、私自身は月曜日の1限に授業があります。本学工学部の2年生向けの授業「サステイナブル工学基礎」がそれです。工学部3学科の学生が一同に会する数少ない授業の一つなのですが、実は休み明けの第4回目の授業は特別で、この回からの授業は3学科で別々の授業を、いままでとは違う教室で受けることになるのです。

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2018.05.04

貧困ではないが飢えている人たちのためのSDGs?(江頭教授)

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 サステイナブル・デベロップメント・ゴールズ(Sustainable Development Goals, SDGs)、つまり「持続可能な開発目標」については以前このブログの記事でも紹介しています。「アジェンダ21」「ミレニアム開発目標」といった国連の行動計画の最新版であり、2030年に向けて世界(正確には国連加盟国)が目指すべき17の目標を掲げています。

 今回は、そのうちの1番目と2番目の話をしましょう。

 1番目の目標は「貧困をなくそう」、そして2番目の目標は「飢餓をゼロに」。どちらも世界の目指す目標として文句なしですが、2つ並べてみると変な感じがします。

 最初の1つ、「貧困をなくそう」だけで良くありませんか?

 最初の目標が達成されて世界から貧困な人がいなくなったとしたら、二つ目の「飢餓をゼロに」も同時に達成されているのではないでしょうか。この2つの目標が並べられているということは「貧困ではないが飢えている人たち」がいる、という想定をしている様に思えます。

 でも、貧困の何が問題なのか。問題はたくさんあると思いますが、「食べ物が手に入らない」ことは一番目の問題か、そうで無くてもかなり高い優先度の問題でしょう。貧困を抜け出した人が最初にやることは毎日ちゃんと食事を摂ることだと思うのですが…。

 そう考えると二つ目の目標は一つ目と重複している様に見えます。

 実は、この二つ目の目標、正確には「飢餓をゼロに」だけではありません。

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2018.05.03

2018年5月2日 8時26分北野駅発高尾山口行き (江頭教授)

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 下にリンクした動画、表題通り「2018年5月2日 8時26分北野駅発高尾山口行き」の電車です。まず動画の最初のコマのクローズアップをサムネイルにしたのですが、よく見るとドアの内側に見える反対側ドア、その上にある電光掲示板には「八幡山」という駅名が見えています。この電車は八幡山駅に停車している様に見えます。

 では動画を再生してみてください。

動画の終わりはこの画面。ローマ字表記ですがこの駅が「北野」であることがわかります。

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車内の電光掲示板の表示する駅名と実際の停車駅の名前が一致していない。なるほど、八幡山駅は北野駅のとなりなのか。

いえいえそんなことはありません。

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2018.05.02

「6.02E+23」の"E"って何?(江頭教授)

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 アボガドロ数は 6.02×1023 ですが、これが「6.02E+23」などと書かれていることがあります。学生諸君がつくるレポートはともかく、学会の発表などでもこの書き方を見かけることがあるのですが、これは科学における数値の正式な書き方ではありません。

 おそらく、ですがこの書き方はプログラミング言語 FORTRAN の数値表現から始まったものだと思います。FORTRANは最初のプログラミング言語であり、今のようなスクリーンではなく、タイプライターの様な機械的な端末で結果を出力していた時代から使われていました。そのような端末では「1023」の23の部分のような上付きの文字を表現することができなかったのです。

 では、6.02*10^23 の様な表現もあり得たのでは。(BASICではこう書きますよね。)たしかにこれならタイプライター型の端末でも表現可能です。でも「*10^」の部分は毎回おなじなのですから、一文字にまとめても構わないだろう。まとめる方が効率的だ。いや、まとめるべきである、ということなのでしょう。「でもプラスとマイナスを明確にするために+は付けるべきだ」というところが几帳面ですね。

 さて、「*10^」をどんな一文字でまとめれば良いのでしょうか。「べき乗の指数」を表す"Exponent”からとって"E"。確証はありませんが、おそらくそんなところではないかと思います。

 FORTRANでは"E"以外の文字を使った表現もありました。「6.02D+23」のように"D"を使う書き方です。"D"は倍精度変数、と呼ばれる普通の変数より高い精度でデータを表現できる変数に使用される表現方でした。(図は手元のFORTRANの処理系をつかった実例です。倍精度ではない変数にD指定子を使ってもエラーはおろか警告も出ないところが、ある意味FORTRANらしいところです。)

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2018.05.01

森林総研が「木のお酒」をつくるらしい(江頭教授)

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 「木からお酒をつくる」そんなニュースを見つけました。発信元は森林総合研究所(森林総研)の

木を発酵して香り豊かなアルコールができました ―まだお酒未満ですが、新たな可能性を拓く技術開発に挑戦します―

という発表です。

 木材を構成しているセルロースはデンプン同様、糖(単糖)が重合した多糖類です。米から造られるお酒は、お米の中のデンプンを分解し、酵母で発酵させてアルコールを造るわけですから、デンプンの代わりにセルロースを分解できれば木のお酒ができる、というわけですね。

 お米からお酒を造るとき、デンプンを分解するのは麹(こうじ)に含まれるコウジカビの酵素ですが、この酵素ではセルロースを分解することができません。今回発表された技術ではセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどの酵素を別途準備して木のセルロースを分解させ、それと同時に酵母によってアルコールを生成させたそうです。

 実は、この研究とよく似た実験を見たことがあります。私が大阪大学基礎工学部にいたころ、PBLの授業で学生さんのグループが選んだテーマの中に「竹を利用したお酒」がありました。

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