日本の温室効果ガスの排出量(2016年度版)(江頭教授)
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最大の環境問題である地球温暖化、その原因物質である二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスはだれがどのくらい出しているのでしょうか。温室効果ガス削減のための基本的な指標となるこのデータ、日本国内での発生量については温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)がとりまとめて毎年発表しています。最新版はこの4月に発表された2016年度のデータ。少しタイムラグがあり、一昨年度のデータを昨年度のうちに整理して今年度発表する、というながれになっています。
さて、その結果は
2016年度の温室効果ガスの総排出量は13億700万トン(二酸化炭素(CO2)換算)で、前年度比1.2%減(2013年度比7.3%減、2005年度比5.2%減)でした。
となっています。2014年度から3年連続の減少で、2008年のリーマンショックの影響を受けた2009年、2010年とならぶ低い値となっています。2011年の東日本大震災とそれにつづく原子力発電所の停止によって化石燃料による発電に回帰せざるを得なかった状況に対して、それでも温室効果ガスが減少するという状況は継続的に社会が変化していることを示している思われます。
発表資料では温室効果ガスの減少は
省エネ等によるエネルギー消費量の減少とともに、太陽光発電及び風力発電等の導入拡大や原子力発電の再稼働等によるエネルギーの国内供給量に占める非化石燃料の割合の増加等のため、エネルギー起源のCO2排出量が減少したことなどが挙げられます。
と分析されています。
資源エネルギー庁が公表している「平成28年度(2016年度)エネルギー需給実績」によれば国内の一次エネルギーに占める非化石燃料が占める割合は原子力発電所が稼働していた2010年度の18.8%から2012年度には8.4%にまで低下。その後増加に転じて2016年度には11.0%まで回復しています。この間、原子力のシェアが2010年度の11.2%から一時期0%となり、2016年度でも0.8%にとどまっていることを考え合わせると非化石、非原子力の再生可能エネルギーの導入が進んでいて、それが温室効果ガスの削減につながっていることが分かります。
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