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温室効果ガス削減量認証制度「J-クレジット」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回前々回の記事では「カーボンオフセット」について紹介しました。カーボンオフセットとは炭素排出量削減のための「お布施」ではなくて、「どうしても削減できないCO2の排出を、他の場所での削減や吸収で埋め合わせる」という取引のことです。この取引が有効に作用する、つまり温室効果ガスの排出削減に役立つためには削減量の信頼性が決定的に重要であり、公的な認証機関が必要である、という結論でまとめました。

 さて、今回はその「公的な認証」について紹介しましょう。「J-クレジット制度」はそのWEBサイトにて

J-クレジット制度とは温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。

と紹介されています。CO2に限らず、温室効果ガス全体が対象ですが、実質的には「カーボンオフセット」で説明した「CO2の排出」を埋め合わせるための「削減や吸収」を定量的に表し、なおかつその信頼性を保証する制度ですね。

 実際、「J-クレジット」の用途として「温対法・省エネ法での活用」などと並んで「カーボン・オフセットに使う」ことが挙げられています。

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 さて、このJ-クレジット制度、国が運営していることから社会的な信頼性という点では最も信頼できる制度、という事ができると思います。つまり嘘をついたり、人をだまそうとしたりしない、という意味で信頼できるということですね。

 しかし、J-クレジット制度に認定されたクレジットが信頼できるかどうか、という問題にはもう一つの、科学的な妥当性という観点があります。つまり、J-クレジットは嘘はつかないとしても、間違いや勘違いをしないのか、という問題です。

 再びJ-クレジットのWEBサイトを見てみましょう。温室効果ガスの削減、吸収をJークレジットとして登録するにはどうするのか、「申請手続き」のページにその流れが記載されています。まずは削減や吸収を実施するプロジェクトを登録し、その後実際どのぐらいの量の削減や吸収が行われたかを「モニタリング報告書」という文書にまとめて申請します。この「モニタリング報告書」は一定の書式に従って削減・吸収量を計算したものです。この報告書を提出するだけではクレジットは認められません。独立した「審査機関」によるチェックを受ける必要があり、それをパスしたものが正式なJ-クレジットとして認められるのです。

 J-クレジットの削減量の間違いや勘違いをどう防ぐか。その方法の基本的な考え方は「他者によるチェック」ということになります。これは科学における学術論文のレビュー制度に似たものだと考えられるでしょう。なんだか心許ない?でも、何が正しいかを判断するために、複数の人間で考えてみる、ということ以上の方法はないのではありませんか。

江頭 靖幸

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