人間に必要なエネルギーはどのぐらいか(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回は「人間にはどのぐらいのエネルギーが必要か(江頭教授)」と題して、現在の日本人が1人平均でどのぐらいのエネルギーを消費しているか、調べてみました。結果は
一次エネルギー供給で毎年 150GJ、 エネルギー消費では 100GJ
というものでした。エネルギー変換でのロスを考えると実際に利用されるエネルギーの消費は一次エネルギーの供給よりすくなくなるのでしたね。
さて、この年間 100GJ とか 150GJ といった値、一体どの程度の値なのか簡単にはイメージできないのではないでしょうか。今回はなるべくイメージできる形でこのエネルギーの量を表現してみたいと思います。
まず、エネルギーが全て電力だと考えてみましょう。1年間は 365×24×60×60 = 3.15×107秒ですから、100GJ=100×109Jをこれで割り算して
100×109J/3.15×107s = 3.17×103W
となります。電力として考えると約 3kW となります。100Wの電球30個を付けっぱなしにする、というイメージですね。(LED電球が普及してきたので、この表現もそのうち通じなくなるのでしょうか。)
こんどは、エネルギーが全てガソリンだったとしたらどうでしょうか。ガソリンの発熱量を33.37MJ/L とすると(この値は2013年以降の統計で用いられている値を「エネルギー源別標準発熱量一覧表」から引用しました)、
100×109J/33.37×106(J/L) = 3.00×103L
となります。年間ガソリン3kLです。一日当たり 8.2L。燃費12km/Lの車なら毎日100km走る計算です。
さて、エネルギー源別に最終エネルギー消費に占める割合が総合エネルギー統計に示されています(下図)。
それぞれの割合は年々変化していますが、石油が約半分、電力が四分の一。残りの四分の一は石炭と都市ガス、蒸気・熱で占められています。
車で一日50km走って、100Wの電球7個と50Wの電球1個をつけっぱなしにして、これで年間100GJの四分の三、という計算になりました。
さて、皆さんはこのエネルギーの量、どのように感じますか?
私の個人的な感覚では、生活のなかで意識して使っているエネルギーの量と比べると、1人当たりということも考慮して、かなり多い様に思えます。とはいえ、桁違いに多いこともありません。変な言い方ですが、頑張ればこのぐらいのエネルギーを使う事もあるだろう、そんな感覚です。
生活の中で使っているエネルギーの他にも、私たちの目に見えない部分で使われているエネルギーがある。そのため、1人あたりの最終エネルギー消費は個々人が自分自身で使うエネルギーよりは大きくなります。そう考えると、今回例示したエネルギーの量が大きく感じるのは当然ですが、それが極端に大きくはない、というのはエネルギー消費のうち目に見えない部分で使われているはそれほど大きくはない、という事を示唆しているのでしょう。
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