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減少する世界のエネルギー起源のCO2排出量(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 地球温暖化の作用をもつガスはいろいろありますが、人間の活動によってもっとも大量に排出されていて、地球環境にも大きな影響を与えているガスはCO2であるということは良く知られています。なぜCO2ガスが排出されるのか、それは現在の社会では十分なエネルギー供給のためには化石燃料の利用が不可欠だから、ということも知られていると思います。

 では、その化石燃料から発生するCO2ガスの量はどのぐらいなのでしょうか。エネルギーに関する国際機関のIEA ( International Energy Agency ) から正にその点についてまとめた資料が出ています。

”CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION”

この資料はIEAのWEBサイトのこのページに記載があります。正規の報告書はダウンロード販売されていますが、概要(OVERVIEW)は無料でダウンロードできます。(IEAへの登録が必要。)

 2017年版の資料では2015年までのデータが整理されています。世界の総排出量は 32.3 GtCO2 、つまり 323億トンとなります。日本の温室効果ガス排出量の約30倍で、やはり非常に大きな値というべきでしょう。

 その一方で、この排出量を2014年の値と比較すると 0.1% の減少だったそうです。日本ではここ数年、温室効果ガスの排出量が減少するトレンドにあるのですが、世界的にみても同様の事が起こっているのです。

 同資料の概要から以下の図を見てみましょう。

Photo

 図の縦軸は2015年と2014年の CO2 排出量の変化を表しています。図中の棒グラフ、上向きは排出量の増加、下向は排出量の減少分に対応します。また、横軸は化石エネルギーの種類を示しています。そして、色の違い。深緑色の線は京都議定書の付属書Iの国々。要するに先進国のことですね。一方、黄色の線は付属書Ⅱの国々、つまり発展途上国のデータを示しています。(中国は付属書Ⅱ、つまり発展途上国として分類されます。京都議定書の成立当時はその分類に異を唱える人はいなかった様ですね。)

 さて、図をみると2015年の Total のCO2排出量は発展途上国では増加していますが、先進国ではそれ以上に減少していて、全体としても減少していることが読み取れます。

 また各種の燃料についてみると、左から石炭 (Coal) は先進国、発展途上国共に減少。石油 (Oil) は共に増加。天然ガス (Gas) は先進国ではわずかに減少していますが発展途上国では増加しています。その他 (Other) は先進国、発展途上国、どちらもごくわずかです。

 減少している項目をまとめるとまずは先進国と発展途上国の石炭。それに先進国の天然ガスも減少していますが、これはごくわずかな減少にとどまっています。結局、石炭から他の燃料へのシフトが起こっていること、とくに先進国では石炭の利用が大きく減っていることがCO2排出量減少の主な要因であると言えます。

 石炭は石油や天然ガスにくらべて発熱量当たりでより多くのCO2を排出します。石炭から他の化石燃料への転換はCO2の排出削減に有効な手段なのです。

江頭 靖幸

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