湿度計(乾湿球湿度計)の原理 (江頭教授)
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Q:湿度はどうやってはかるのですか?
A:湿度計を買ってきてスイッチを入れる。
料理を「レンジでチンして皿に盛る」といっている様なもので、これでは説明になっていませんね。そこで今回は湿度計の中でも原理の分かりやすい「乾湿球湿度計」について紹介したいと思います。
気温が高いと人間は汗をかきますが、これは体を熱から守るためです。汗が蒸発すると気化熱が奪われるので涼しくなるわけです。ところが湿度が高いと汗が蒸発しにくくなって冷やす効果が薄くなります。いわゆる蒸し暑い、という状態ですね。「乾湿球湿度計」はこの湿度が高いと蒸発が起こりにくくなる、という現象を利用して湿度を測定する器具です。
アルコールを封入したガラス製の温度計の液溜の部分を水で濡れたガーゼ覆います(これを湿球と呼びます)。これが汗をかいた人間に体に相当するので、その温度が高いか低いかで湿度を測ります。ただし、蒸発による効果だけを判定するためには気温そのものを測っておく必要があるのでもう一つ、普通の温度計(これが乾球です)を用意します。この湿球の温度と乾球の温度(蒸発の効果、という意味なら本来は「乾球温度-湿球温度」)から湿度を求めるのです。
以前このブログでの紹介したことがありますが「湿度100%」とは空気中の水分が飽和蒸気圧に等しい状態をいいます。この状態だと湿球からの水の蒸発は起こりませんから乾球の温度と湿球の温度が等しくなるはずです。ですから乾球と湿球の温度差が0の時は湿度100%。これはハッキリと決まりますね。
問題は湿度が100%未満の場合です。湿度が下がるほど蒸発は盛んになるので湿球温度は下がってゆきます。つまり乾球温度が一定の場合、湿球温度は湿度0%で最小、だんだん上昇して湿度100%で最大となり、ここで乾球温度と一致します。湿球温度と湿度には一対一の対応があるので、計測は可能ですが、具体的に湿球温度何℃が湿度何%に対応するのでしょうか。
これはある程度推算する方法もあり、実験式も提案されていますが、ものは計測器ですから、きちんと検量を行うべきでしょう。つまり、湿度がハッキリと分かった空気のなかで、この湿球乾球温度計がどんな湿球温度、乾球温度を示すのか、をしらべるのです。それぞれの温度と湿度との対応表をつくれば湿度の測定が可能になります。
さて、この湿球乾球湿度計、最初のQ&Aに反して「スイッチを入れる」必要はありません。従来の温度計とガーゼと水の容器だけで出来てしまいますから自作することも可能だと思います。ただ、乾球の温度と湿球の温度から湿度を求める換算表を作るのはそう簡単ではありませんね。
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