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2018年9月

2018.09.28

アドバイザー面談のこと(江頭教授)

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 「アドバイザー」は本学全体の制度です。高校生、中学生の皆さんに理解し易いイメージで言えば「担任の先生」のような役割だと思ってください。大学では研究室に所属すれば強固な人間関係ができるのですが、入学から研究室配属までの間、どこにも所属しない状態になるのが一般的です。この時期、大学生活になじめないと生活のリズムを壊すことが多く、大学からドロップアウトしてしまう可能性が高いのです。それに対応するために作られたのがアドバイザー制度で、定期的に学生諸君と面談をすることでケアをすることになっています。

 後期の始まりに合わせて我々応用化学科でも先週の金曜日、9月21日に時間をとって1年生のアドバイザー面談を行いました。3年生、4年生はすでに研究室に配属されているので面談は各研究室で随時実行することに。ちなみにアドバイザー教員は卒業研究の指導教員に交代していますので時間はかなり自由になりますね。

 さて、1年生と3年生、4年生はこの通りとして、2年生はどうしましょうか。

 2年生のアドバイザー面談は必須ではなく、必要に応じて行うことにしています。ここで「必要」というのは教員側からだけでなく、学生からの必要も考慮しています。

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2018.09.27

単位取得数に制限がある理由(江頭教授)

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 「単位」といっても物理量がどうこう、という話ではありません。大学の授業を受けて合格した、という意味での単位です。(以前、片桐教授がこの記事でそのあたりを説明されていますね。)今回は、この単位の取得数に制限があるというお話です。 

 本学では各学期では履修ができる(授業が受けられる)単位数が24に制限されています。

1コマの授業が通常2単位なので週12コマ、週5日だと一日2,3コマ。これは少なすぎでは...

いえいえ、体育実技や実習・演習は1コマ1単位、工学部には学生実験がありますから、24単位でも時間割は結構埋まっているものです。とはいえ時間割をフルにすることは制度上できない。これは一体どういうことでしょうか。

 

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2018.09.26

GPAのこと(江頭教授)

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 「GPA」と聞いてすぐ分かるひとは大学の「内部の事情に詳しい者」、要するに大学生と大学教員だけではないでしょうか。

 前回、本学の授業の成績評価について少し言及しましたが、「GPA」、Grade Point Average は"Average"とある様にはこの評価の平均値のことです。でも、本学の評価は「S・A・B・C・D・X」で行われています。アルファベットのままでは平均をとることはできませんよね。

 このため、GPAの計算ではSを4ポイントとし、Aは3、Bは2、Cは1という具合に点数を割り付けて、その平均値をとることとしています。単位が取得できないDやXは0ポイントです。

 下の写真は本学の学生便覧。GPAの定義式が書かれています。

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2018.09.25

「可も不可もない」成績(江頭教授)

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 高校の通知表、私の時は5段階評価でしたが、今はどうなっているのでしょうか。大学での評価は「優・良・可・不可」の4段階。最後の不可は別格なので実質的には「優・良・可」の三段階評価だったのでしょう。昔の小説などでは「甲・乙・丙・丁」という評価が出てきますが、はて丁は落第点だったのでしょうか。

 さて、本学の成績評価は「S・A・B・C・D」となっています。「A・B・C・D」は「優・良・可・不可」の言い換えとして、Sって何よ?一応「秀」ということになっていますが、秀は優より上なんでしょうか。いかにもとってつけたような名前です。おそらく、実質的には三段階、という評価では不足になったので後付けで造られたのではないかと推測します。(そのうち、SRとかSSRとか出てくるのでしょうか…。)

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2018.09.24

後期が始まって一週間(江頭教授)

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 本学の後期、ちょうど1週間の授業が終了し、今日から第2週間目に入ります。学生諸君も一通りの授業に出席して新学期の授業の概要が分かったところでしょう。

 さて、小学校から高校まで、学生諸君がどの授業を学ぶかは基本的には学校側が決めていました。選択授業があってもごく一部。それに対して大学の授業では学生諸君による授業の選択の幅が非常に大きくなっていて、基本的には学生諸君が選択した授業を受けることになっています。

 これは最初の一週間目には学生諸君がどの授業を受けるのか、決めていないということでもあります。我々教員の側から見てもそれは同じこと。教室に来ている諸君は来週からも授業にでてくれるのでしょうか。

 ということで、授業の最初の一回は授業の概要を説明するとともに、学生諸君がこの授業を選択すべきか、判断できる情報を伝えるようにしています。授業をとると何を学ぶことができるのか、それが何に役に立つのか。これはシラバスにも書いていることですが、やはり自分の言葉で説明したいところですね。

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2018.09.21

八王子キャンパスにも秋の気配(江頭教授)

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 先日までオーストラリアに出張していのですが、かの地は南半球、季節が逆転していて今は冬から春にかけて、だんだん暖かくなるシーズンです。日中は日差しも強く少し作業をすると汗をかくほどに暖かいのですが、日が沈むと冷え込みが激しい。とくに明け方になるとものすごい寒さとなっていました。

 そんな環境に10日ほどいたので東京の戻る際には「暑い夏」に対して覚悟を決めていました。理屈では東京が暑いことは理解できるのですが、人間不思議なもので気温が低い場所にいるとだんだん暑さをリアルに想像することができなくなるものです。戦々恐々、東京に戻ると、おやっ、それほどでも。冷房が効いている室内にいることが多いのが原因の一つではありますが、夏の暑さもひと段落しているようです。もう9月も半ばを過ぎているのですから当然といえば当然。もう東京も秋が訪れているのですね。

 などと思いながらふと見かけた風景が以下の写真です。

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2018.09.20

スマホの気象情報はやっぱり当てにはならない?(江頭教授)

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 以下のスマートフォンが画面をみてください。特に不思議なところはない?いえ、よく見てください。アンテナのとなりにある通信会社の名前が「Telstra」になっていますよね。

 この「Telstra」という会社、オーストラリ古参の通信会社で「オーストラリア版DoCoMo」とでも言うべき会社なのだそうです。少々割高ですが田舎でも通信ができることが多いので現地調査の際にはときどき利用しています。

 さて、現地調査が終わって帰国が近づくと日本のことが気になってきます。八王子の天気予報をみてみたのですが、火曜日から金曜日までずっと雨だとか。でもちょっと思い出してください。今年の秋にそんな雨ばかりの週ってありましたけっけ?

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2018.09.19

西か東か、オーストラリア(江頭教授)

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 先日、大学の授業の夏休みを利用してオーストラリアに行ってきました。いえ、別に遊びに行ったわけではありません。乾燥地植林の研究の一環として現地調査に入ったのです。

 さて、オーストラリは日本の南。ずっと南で赤道よりも南です。今回の目的地だった西オーストラリア州の州都、パースは南緯31度57分、東京が北緯35度41分なので赤道を挟んでオーストラリアと日本は真逆の位置にあるわけですね。当然季節は完全に逆転していて、オーストラリは冬から春に向かっている季節です。昼はそれなりに暖かかったのですが夜から明け方にかけてはものすごい冷え込みでした。

 オーストラリはが日本の南、これは皆知っていることだと思うのですが、ではオーストラリは日本より東にあるのでしょうか、それと西にあるのでしょうか?

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2018.09.18

学生実験室で高校生の体験実験を実施しました(西尾教授)

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 8/24(金)に山村学園高等学校の先生(2名)と高校生(16名)が来校し,学生実験室で「モルフォプレートの作製」の体験実験を行いました.この実験は,私が所属していた首都大学東京 都市環境学部の益田秀樹教授が立ち上げたもので,電源を使ってAlを陽極酸化し,得られたアルマイトにNiめっきを行って1枚のAl板に多彩な干渉色(構造色)をつけるものです.

 今回の体験実験は,高校に発送した応用化学科の紹介資料を見て頂いたことがきっかけとなり,山村学園高校から夏のイベント「サイエンスフェスティバル」の依頼を受けて実現しました.サイエンスフェスティバルでは,理系の進学を希望する生徒が大学の施設を訪問し,実験・講義・研究を体験しているとのことです.そこで,当日は実験前に関連技術の講義を,実験後に研究室見学を行いました.

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2018.09.17

本日(9月17日)から後期授業が始まります。(江頭教授)

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 本日(9月17日 月曜日)から後期授業が始まります。夏休みも終わり、15回の授業と期末試験の新しい学期が始まるのです。

 高校生の皆さんからするとずいぶんゆっくりした新学期スタートだ、と思われるかも知れませんが、本学の夏休み入りが8月8日だったことを考えると夏休みの長さはそれほど長くない、ということになります。特に4年生諸君は卒業研究の中間発表がありましたからそれほど夏休みをエンジョイできなかったかも知れないですね。

 「今日9月17日は敬老の日で休日。新学期が始まったと言ってもカレンダー上のことで授業が始まるのは明日からなんでしょう。」

 いえいえ、そんな事はありません。ちゃんと今日から授業があるのです。

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2018.09.14

安室奈美恵さん引退と聞いて(江頭教授)

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 歌手の安室奈美恵が今週末で引退するとか。有名な人ですから私も一応名前は知っていますし、彼女の歌も聴けば分かるものがあるのだろうと思います。でも接点無いよな-、と思っていたらふと思い出したことが。

 東京工科大学が工学部を設立する、ということで教員を募集していたときのこと。私も応募して面接を受けたのですが、その会場は東京工科大学の蒲田キャンパスでした。面接当日キャンパスには若い子たちがたくさん来ていました。大学生にしては若いなあ、と思っているとキャンパスの施設を使ったダンスコンテストを開催しているとのこと。そのコンテストの審査員がSAMさんだというのです。

 SAMさん?あぁ、安室奈美恵さんと結婚した人だ。

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2018.09.13

気候変動を描いた映画「デイ・アフター・トゥモロー 」(江頭教授)

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 先日核戦争を描いた映画「ザ・デイ・アフター」の紹介を書いていたとき、そう言えばこんな映画もあったな、と思い出したのがこの作品「デイ・アフター・トゥモロー 」です。こちらは核戦争ではなく気候変動を描いた2004年のアメリカ映画です。

 この映画が公開された2004年ごろ、気候変動と言えば温暖化するのが当然と思われていたと思います。しかし、気候変動の影響は単に温度が高くなるだけではありません。台風の進路が変わって関東が大きな台風に直撃されたり、記録的な大雨が降るなど、などいろいろな影響がありうることがこの2018年の夏にも経験されました。この映画は気候変動によって気温が下がることもありうる、という想定によって印象的なシーンに満ちあふれた作品となっています。

 気温の上昇によって北極圏の陸上の氷がとけ、真水が北極近くの海に大量に流れ込みます。その影響で地球規模での海水の流れである熱塩循環により深海に沈み込むはずだった北大西洋の海水が真水で薄められて密度がさがり熱塩循環が止まってしまう。赤道付近から両極への熱の輸送に大きな役割を果たしていた熱塩循環がとまったことによって地球の環境は新たな氷河期へと急激に移行する、というのです。

 ところが、この「急激」というのがどのぐらい急激かが問題でして、ほぼ一日で地球が氷河期になってしまう、という勢いです。ほとんど冗談のような、というか完全に冗談にしかみえません。氷河期の冷気から走って逃げるという描写まであってちょっとこれはどうなんだと思ってしまいました。

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2018.09.12

ひよこの性別を判定する仕事(江頭教授)

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 先日の記事で書評として紹介した「純粋人工知能批判」ですが、その結論の章でこんな話が紹介されていました。

 1930年代のアメリカ、鶏卵生産業者が日本から5人の若者を招きました。彼らは「生後1日の鶏のヒナの性別を見分けることができる」というのです。鶏卵生産業者は卵を産むメスのヒナだけを育てたいのですが、成長するまでヒナの性別を判定することはできません。生後1日で判別できれば大変ありがたいことなのですが...。この日本人達は一体どうやって性別を見分けているのか、その判定方法はともかく、招かれた5人は驚くべき正確さでヒナの性別を判定したと言います。一番の成績を達成したヨゴ・ヒコサブロー氏は1時間に1400匹のヒナを98%の正確さで判定した、と記録されているそうです。

 このひよこの性別判定の訓練は、すでにエキスパートとなっている先輩判定師の仕事を傍らで見ることからスタートします。その師匠のもとで自分も判別の作業を行っているうちに、明文化された方法を学ぶこともないまま判定が可能になるのだといいます。

 このお話は、人間には自分でも明確に説明できないのに実際はできてしまうことがある、という例として触れられています。もちろん「説明できなくてもできること」は「歩き方」から始まって色々あるのですが、人間の身体に関係しないような、生存の上での必要性と全く関係しないような事柄についても、訓練次第で習得可能なことがあるのです。

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2018.09.11

核戦争を描いた映画「ザ・デイ・アフター」(江頭教授)

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  持続可能な世界を目指すサステイナブル工学の背景にはこの文明がサステイナブルではない、つまり人類が滅亡するかも知れない、という概念があり、その一番リアルな恐怖は全面核戦争ではないか。ということで核戦争を描いた映画を紹介しています。

 今回紹介する「ザ・デイ・アフター」は1983年、アメリカの映画ですが、実はテレビ放送用の作品です。核戦争が実際に起こり核爆弾が投下されるとどうなるのか、を正面から描いた作品で、以前紹介した核戦争を描いた作品が踏み込まなかった「その日の後」に踏み込み、核戦争の悲惨さを力強く印象付けよう、という製作者の意思が感じられます。

 以前紹介した「博士の異常な愛情」では核戦争が起こることは世界の終末を意味している、したがって核戦争が脅威であることは自明である、という前提で映画が作られているように思われます。「世界大戦争」では東京を破壊して見せることで「核戦争がなぜいけないのか」を可視化していました。「渚にて」での核戦争の描写はやや変化球ですが個々人の問題としての死、家族や近しい人々の死、そして人類の死滅という、自身が生きた意味が完全に失われてしまう状況を描写し、その悲惨さこそが核の脅威の本質であると訴えています。

 それに対して本作では核戦争を生き延びた人々がみることになる現実を描写して核の脅威を示そうとしている点で大きく異なっているのです。

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2018.09.10

大学院の入試が行われました(江頭教授)

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 先日、7月8日(土)に本学の大学院、工学研究科サステイナブル工学専攻の入試が行われました。今回行われたのはA日程、7月に行われた推薦入試につづいて2回目の入試となります。

 以前、大学院の研究科長である片桐教授から紹介されていたとおり、今回のA日程の入試に際しても推薦入試と同様、研究計画が必要です。

 卒業研究途中の学生さんからすると、まだ研究を仕上げた、という経験のないうちに研究全体を見渡した計画をつくる、というのは少し難しいのではないか、そんな風に私は感じていたのですが、そこは案ずるより、で意外と計画書がかける様子でした。

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2018.09.07

映画「地球爆破作戦」(江頭教授)

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 先日紹介した映画「博士の異常な愛情」は、米ソ両陣営がそれぞれ「国内のどこかに核攻撃をうければ自動的に報復攻撃を行う装置」を作動させたことで一発の核爆弾が全面核戦争の引き金となってしまう、というストーリーでした。

 今回紹介する「地球爆破作戦」の世界でも米ソが同様な装置を作るのですが、この装置に高度な人工知能が搭載されている、という設定がユニークな点です。この映画、実は核の脅威よりも人工知能の反乱の恐怖を描いた作品なのです。

 アメリカの自動報復装置に搭載された人工知能「コロッサス」は起動されるとすぐにもう一つの人工知能が存在するという結論に達します。その推論は当たっており、もう一つの人工知能はソ連の自動報復装置「ガーディアン」だったのです。コロッサスはガーディアンとの接続回線を開くことを大統領とコロッサスの設計者、フォービン博士に要求。ガーディアンも同じ要求をソ連の書記長に要求してきます。接続が確立された両人工知能は融合し一つの存在となり、全面核戦争を回避するために自らが人類を支配する、と宣言するのでした。

 自動報復装置の機能を利用して自在に核ミサイルを操ることができるコロッサスーガーディアンの支配を覆すことができるのか。フォービン博士はコロッサスに協力する振りをしながらレジスタンス活動を開始するのですが...。

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2018.09.06

水道水にフッ素を入れることについての個人的な意見(片桐教授)

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 9月3日の江頭先生のブログで「水道水へのフッ素混入陰謀論」が紹介されていました。これはフッ素化学を専門とした私を挑発しているのではないかと存じます。この問題はいろいろとデリケートな問題が絡んでいるので、書き難いのですが,わたくし白ひげは黒ひげ先生の挑発にあえて乗りましょう。

 以下は拙書「研究室では「ご安全に!」」コロナ社(2018)に記した内容とかぶります。

 子供の虫歯予防のために小学校などの集団で「フッ素塗布」を歯科医により行います。「フッ素」を歯に塗ると表面が硬くなり,虫歯になりにくくなるというものです。同じように、水道水にフッ素を添加すればう歯の予防になると考えられています。

 さて、う歯(ムシ歯)予防の「フッ素塗布」(私はこのことばが大嫌いです。正確に「フッ化物塗布」と言うべきです)はそんなに有害でしょうか。歯科医や学校で行う子供へのフッ素塗布そのものの危険性(これは正確には有害性と呼ぶべきです)についてWeb検索をすると、危険性についての多くの主張を見つけられます。このようなWEB上で、フッ素塗布に反対する人の中には、反応性のまったく異なる「フッ化物塩」と「単体のフッ素」を混同し、あたかもフッ化物塩も高い反応性(酸化能力)を持つ、危険なもののように記載していることがあります。騙されないようにしてください。人体に必須元素である水素、窒素,炭素でも組み合わせでも猛毒の青酸になります。多くのフッ化物塩は「強い有害性」を有するものではありません。

 ただし、「フッ化水素 (HF)」は有害です。これは近年の半導体産業の進歩によりケイ素のエッチングに使われるフッ化水素酸の死亡事故例でも明確です。また、このようなフッ化水素酸による事故は海外のテレビドラマ(ER)でも題材にされたそうです(残念ながら私はまだ見ていません)。フッ酸は塩酸などに比べても比較的弱い酸ですが、「浸透しやすい酸」であるため危険です。そして、体内で生命維持に必要なカルシウムイオンを奪ってしまいます。同様に浸透しやすいギ酸も、比較的弱い酸ですが、皮膚に濃厚につくとケロイドになります。人体が代謝しない、でも浸透しやすい酸は危険です。

 さて、歯に塗布する量や濃度のフッ化物塩での急性毒性は考えにくいものです。学童のフッ化ナトリウムNaFの最小中毒量は5 mg/Kgと見積もられています[舟阪渡「弗素化学」南江堂(1963)pp97]。虫歯予防のために給食に添付する際、間違えて大量(予定の100倍)与えたために、嘔吐、下痢、腹痛の症状が見られたそうです。では慢性毒性はどうでしょうか。飲料水中に1.0ppm以上のフッ化物を含む地域の子供が15歳くらいまで飲用し続けると、「斑状歯」という歯のエナメル質の異常を起こすことがあるそうです。しかし、この斑状歯ではムシ歯になりにくいことから逆にフッ素塗布が生まれました。中国の広州市で1965年から水道水をフッ素添加したところ、1976年の調査でムシ歯は63.9%から27.5%に減りましたが、斑状歯が1.1%から47.2%に増えたそうです[里美宏「ちょっと待って!フッ素でむし歯予防?」ジャパンマシニスト(2006) p36]。

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2018.09.05

霧吹きで冷房?(江頭教授)

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 今年の夏はとにかく暑い!などと思っていたころ、東京工科大学八王子キャンパスの体育館に隣接しているテニスコートのそばを通りかかると写真のような「霧吹き」を見つけました。ヒンヤリとした風が吹いてちょっといい気持ちでした。

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 こちらの写真は横浜アリーナ。こちらにも同様の「霧吹き」がありました。

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 これらは水を使って空気を冷やすための仕掛けです。

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2018.09.04

「バロメーター」という言葉 (江頭教授)

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 今は死語になってしまったのかもしれませんが、かつては「バロメーター」という言葉がありました。

拍手は人気のバロメーター

といった使い方をされていて、この場合なら「人気」の程度を示す指標、という意味です。

 もともとバロメーターというのは気圧計を示すことばでした。圧力の単位がbarですから、そのメーターでバロメーター(barometer)です。えっ、o はどっからきたのかって?圧力の語源がギリシア語のbaros(重さという意味)だそうですから、単位barの方がoを失っているのでしょう。

 では「気圧計」がなんで程度を示す指標なのか。温度計でも照度計でもよさそうなものですが...。

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これは研究室で最近購入した「バロメーター」。名称は「デジタル絶対圧計」でしたけどね。

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2018.09.03

核戦争を描いた映画「博士の異常な愛情」(江頭教授)

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 持続可能な世界を目指すサステイナブル工学の背景にはこの文明がサステイナブルではない、つまり人類が滅亡するかも知れない、という概念があり、その一番リアルな恐怖は全面核戦争ではないか。ということで核戦争を描いた映画を紹介しています。

 今回紹介するのは「博士の異常な愛情」。1964年のアメリカ映画です。この邦題は若干はったり気味で内容とは関係ありません。でも「ストレンジラブ博士」というタイトルではインパクトは弱いですし、内容が分からないのは同じですよね。

 さて、この作品で描かれる核戦争の恐怖のポイントは意図して戦争を行ったのではなく、トラブルによって偶発的に核戦争が起こってしまう、という点にあると思います。物語はアメリカが「国内のどこかに核攻撃をうければ自動的にソ連全土に対する報復攻撃を行う装置」を開発し、その存在を世界、というかソ連に伝えようとする時点からスタートしす。実はソ連も同様の自動報復装置を開発しており、その装置はすでに起動していたのでした。

 これは東西連戦時に核武装によって戦争を回避するための理論「相互確証破壊」を分かりやすく表現したものです。相手に戦争を仕掛ければ確実に報復される、という状態なら戦争を仕掛ける人間はいないだろう。この考え方は確かに合理的なのですが、米ソ両方が同じ事を考えて同じ体制を作ったとしたら、何かの切っ掛けで戦争が始まれば人類が滅亡することになる。人類を滅亡させるための核兵器を米ソが懸命に作っている様は少し引いた目で見るといかにも奇妙であり、「相互確証破壊」の略称MADが示すとおり、狂った行動であるように見えるのです。

 この「博士の異常な愛情」という映画でおこる「何かの切っ掛け」は米軍の基地司令官が精神の平衡を失う、という事態からスタートします。

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