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ひよこの性別を判定する仕事(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先日の記事で書評として紹介した「純粋人工知能批判」ですが、その結論の章でこんな話が紹介されていました。

 1930年代のアメリカ、鶏卵生産業者が日本から5人の若者を招きました。彼らは「生後1日の鶏のヒナの性別を見分けることができる」というのです。鶏卵生産業者は卵を産むメスのヒナだけを育てたいのですが、成長するまでヒナの性別を判定することはできません。生後1日で判別できれば大変ありがたいことなのですが...。この日本人達は一体どうやって性別を見分けているのか、その判定方法はともかく、招かれた5人は驚くべき正確さでヒナの性別を判定したと言います。一番の成績を達成したヨゴ・ヒコサブロー氏は1時間に1400匹のヒナを98%の正確さで判定した、と記録されているそうです。

 このひよこの性別判定の訓練は、すでにエキスパートとなっている先輩判定師の仕事を傍らで見ることからスタートします。その師匠のもとで自分も判別の作業を行っているうちに、明文化された方法を学ぶこともないまま判定が可能になるのだといいます。

 このお話は、人間には自分でも明確に説明できないのに実際はできてしまうことがある、という例として触れられています。もちろん「説明できなくてもできること」は「歩き方」から始まって色々あるのですが、人間の身体に関係しないような、生存の上での必要性と全く関係しないような事柄についても、訓練次第で習得可能なことがあるのです。

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 説明できなくても判断できる、という特徴は最近話題のAIとよく似ていると思います。

 AIを使えば判断の方法が明文化されていなくても、正解と不正解の例を数多く与えることで同じレベルの判断が可能になる。明文化できない判断基準を如何に明文化するかに多くの人の努力が費やされていてもなお、巧くいくとは限らないのですから、これは社会を変革する力となるだろう。

 これはその通りなのですが、判断の方法が明文化されていなくても判断ができるようになる、というのはAIだけの特技ではない。人間の、というか人間の無意識にも同じような機能が備わっていて、これも人間の知能の一部なのだ、といえるでしょう。その意味でAIはやはり人工知能なのですね。

追記

 この「ひよこの性別を判定する仕事」があるという話、知っている人は多いのではないかと思います。私も中学生のころ見た記憶があるんですよね。英和辞典で。

江頭 靖幸

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