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2018年10月

2018.10.31

"development"は「開発」か「発展」か(江頭教授)

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 「あ! どっちもデス」

なんて言われると返す言葉もないのですが、これは一般的な話ではありません。「sustainable development」という用語の中の"development"、これをどう訳すべきか、というお話です。

 最近有名なところでは「SDGs = Sustainable Development Goals」がありますが、これの邦訳は以下の外務省の説明にもあるとおり「持続可能は開発目標」となっていて、development = 「開発」と訳されています。

 では「持続可能な発展」という文言は?探してみると「環境基本法」に「持続的発展が可能な社会」という理念が示されています。

 さて、両者にはどんな違いがあるのでしょうか。「持続可能」とわざわざ断っているのですから、気を緩めると「持続不可能」になってしまうものだ、と考えると分かりやすいと思います。

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2018.10.30

書評 井上純一「キミのお金はどこに消えるのか」角川書店(2018)(片桐教授)

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 本屋さんでこの本を見かけたので購入しました。

 私はこの作者の別のマンガ「中国嫁日記」を昔から読んでいます。夫婦という密接な関係の中で、日中の異文化の衝突が書かれている興味深いマンガです。その同じ作者の経済に関する解説マンガです。

 学習・解説マンガは小中学生の読み物と思っていると、大間違いです。この本は大人でも、いや常識に固まった大人だからこそ,読んだ時に理解や納得が難しく感じられる本です。いろいろな近代・現代経済学の学説を交えて、現在日本の経済状況について、日本の国債(借金)のはなしから、消費税のあり方まで議論しています。

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 「経済」はつくづく怪物です。人間が創り出したものなのに、人間には制御できていないモンスターです。そして、そのモンスターをどのようになつけるのかについて、まだ人類は知恵がたりません。

 我々は中学や高校の歴史や日本史で江戸時代の両極的な経済政策を学びました。ひとつは徳川吉宗と徳川宗春の葛藤です。徳川吉宗は紀州藩の藩主時代に緊縮と節約で藩の財政を立て直し,その後同じ手法で幕府の財政立て直しを行ないました。そして、庶民にも節約と贅沢の禁止を押し付けました。一方の徳川宗春はまったく逆の産業や商業や娯楽の振興により尾張藩をもり立てました。本人を含め、領民にも贅沢を許し、そのため吉宗と反目しました。しかし、どちらのやり方も経済政策としてはそれなりに成功しています。どちらが正しく、どちらが間違っているというものではありません。

 もうひとつは田沼意次の重商政策と松平定信の寛政の改革の葛藤です。これもまた、経済をなつけるために、両極端の手法でそれぞれ経済を立て直しました。

 ここで、注意しなければならないのは、多くの書籍では吉宗や定信の節約・倹約は「正しく」、宗春や意次はあたかも贅沢をする悪者のように扱われていることです。特に田沼意次の政策が破綻したのは天災とテロによるものです。そして、現在は悪いこととされる賄賂もその当時は一般的なことでした。しかし、後世の中学校や高等学校の先生方は、田沼意次が賄賂を受け取ったから悪い奴である。彼は小姓から成り上がったため卑しい考え方をしていた(一方、松平定信は吉宗の孫であり、正当な為政者である)、と教えることすらあります。そのようなバイアス=偏見は危険です。むしろ有能でのし上がってきた意次の方が、世襲に頼った定信よりも優れていると考える方が健全ではないでしょうか。これについては辻善之助「田沼時代」岩波文庫(1980)をお読みください。そして、そのような歪んだ考え方は、昭和の田中角栄のバッシングにおいても見られました。

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2018.10.29

応用化学科BLOGは四周年を迎えました(江頭教授)

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 本学、工学部応用化学科の公式ブログは先日、10月27日で四周年を迎えました。

 2014年の10月27日、

生命の起源の謎を解き明かす不斉誘起反応(山下教授)

医薬品に役立つ有機フッ素化学(片桐教授)

乾燥地植林によるCO2固定はサステイナブルな地球に役立つのか?(江頭教授)

の三本の記事を掲載したのがこのブログのスタートです。

 以下は本ブログの記念すべき記事第一号の画像です。

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 でも実はこの記事、現在は2014年当時とはルックが変わっています。トップの画像などが最初の記事にさかのぼって変更される点はブログならではですね。(もちろん、内容は同じですが。)

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2018.10.26

圧力と気体の伝熱(江頭教授)

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 「魔法瓶」は真空を利用した断熱性の高い保温用の瓶のことです。(「魔法」っていうのはどうかと思いますがね。) 熱は分子の運動だから、熱が伝わるには分子、つまり物質が必要なはず。真空なら熱は伝わらない、という発想の産物ですね。

 さて、真空では熱が伝わらない、ということを前提として、「気体の熱の伝わりやすさ」つまり熱伝導度と圧力の関係はどうなっている、と思いますか?

気圧0の真空では熱伝導度も0になる、ということは熱伝導度は圧力に比例するんだ!

と、その通りであればこんな記事は書かないですよね。期待に反して気体の熱伝導度は圧力にほとんど依存しないのです。

 以前、気体の熱伝導について紹介したのですが、そこで熱の伝わりやすさに関係する三つの要素を挙げました。

 一つは分子の速度。もう一つは分子の熱容量、そして分子が衝突しないで直進できる距離(これを自由行程と呼びます)です。

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2018.10.25

簡単な徴税方法を思いついた、という話(江頭教授)

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 これはずいぶん昔の話、ですが私が子どもの頃というほどではありません。多分消費税が導入された頃でしょうか。税金についての思いついたことがあるのです。

 税金を集めることは大変です。まず公正な税制をつくること。正確に運営するための組織をつくること。全ての国民がその運営に協力することなどなど。どれも理想はあっても実現するのは非常に困難なことです。最近は実際のお金(普通はお札でしょうね)を集めることは少ないと思いますが、例え銀行振り込みでも1人1人納税額を計算して集金するのは膨大な手間がかかります。

 そこで、簡単な徴税方法について。税金を集めることの本当の意味は日本国民からお金を集めることではありません。国民の負担によって政府のいろいろな機能を成り立たせることです。国民から政府に何らかの形で「価値」をもったものが移動すれば良い。いえ、価値が移動すれば良いのであって必ずしも「もの(お金の金額という情報を含む)」が移動する必要は無いのでは。

 もったいぶるのはやめましょう。政府は単純に税金分のお金を印刷して使ってしまえば良いのです。

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2018.10.24

バブル景気の前と後(江頭教授)

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 バブル景気にもいろいろあるのですが、ここで言うバブル景気とは日本に1980年代ごろに起こった「バブル景気」のことを指しています。

 バブル崩壊と言われたのが1991年ですから今の若い人には「歴史のなかの出来事」かと思います。55歳の私はバブル期をまたいで生きてきたのですが、不思議とバブル景気そのものの記憶は薄いのです。大学という世の中の景気をあまり反映しない職場にいたせいでしょうか。学生諸君の就職のし易さを通じて間接的に好景気を感じていただけでした。

 では「バブル」の影響を感じていないのか、というとそういうわけではありません。バブルそのものよりもむしろバブル前後の世の中の雰囲気の変わり方、これには正直驚くばかりです。

 具体例を一つ。以下は統計局のWEBサイトから持ってきた「消費者物価指数(CPI)」のデータ、「持家の帰属家賃を除く総合指数(1947年度~最新年度)」から作ったグラフです。

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2018.10.23

学歴と生涯賃金のはなし(江頭教授)

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 人が一生でもらう賃金の総額、それが生涯賃金です。自分で商売をしている人でなくても賃金以外の収入、たとえば相続などがありますから、生涯賃金=一生で使えるお金、という訳ではありません。でも、普通は生涯賃金が生涯の可処分所得のほとんどを占めるのではないでしょうか。

 厚生労働省が所管する研究機関である労働政策研究・研修機構は労働統計に基づいていろいろな指標を算出し、ユースフル労働統計(労働統計加工指標集)という資料を出しています。このなかに生涯賃金の推計値も示されています。

 いくつかの条件での推計値が示されていますが、「学校を卒業しただちに就職し、60 歳で退職するまでフルタイムの正社員を続ける場合(同一企業継続就業とは限らない)。」という条件での計算では「大学・大学院卒」の男性で2億7千万円となっています。

 これに対して「高校卒」の男性では2億7百万円という結果が。両者を比較すると6千3百万円の差があることになります。

 このデータから「6千3百万円かけてでも大学に進学すべし」と結論づけて終われば大学のPRとしては完璧なのですが、ここは少し考察が必要でしょう。

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2018.10.22

試験会場としての八王子キャンパス(江頭教授)

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 東京工科大学の授業は週5日制。土曜日には基本的には授業はありません。それでもスクールバスは動いていて、課外活動などでキャンパスに人が行き来することが想定されています。でも、日曜日は完全にお休み。その証拠にスクールバスも運休です。

 

 とはいえ、何事にも例外はあります。昨日、10月21日の日曜日は「宇宙の学校」というイベントが開催されていてスクールバスも動いていたのです。

 

 さて、昨日の日曜日、たまたま私もキャンパスに来ていたのですが、なぜかイベントが終わった時間帯にも人の流れが。これは一体…

 

 

 

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2018.10.19

魔法瓶ってどうよ(江頭教授)

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 前回の記事では気体について、熱の伝えやすさの指標である熱伝導度が「温度差を1℃、壁間距離を1mとしたときに流れる熱量」であること、その熱伝導度が気体の場合、分子の熱運動による速さ、分子同士が衝突せずに自由に運動できる距離、そして分子が運びうるエネルギーの指標としての熱容量によって決まるのだ、という説明をしました。

 でもその前に,基本的なポイントの確認を。「温度差を1℃、壁間距離を1mとしたときに流れる熱量」といいましたが、熱が流れるのは気体があるからだ、という点に注目してみましょう。気体そのものが存在しない場合、つまり一定距離の壁の間が真空になっている場合、熱を伝えるものがないため伝熱が進まないだろうということも推察されます。

 さて、この真空による断熱、という現象を利用したのが「魔法瓶」です。二重になったガラスの容器をつくり、二つのガラスの壁の間を真空にする。これで高い断熱性がえられるので、容器に入れたお湯がいつまでも冷えない、あるいは容器に冷たい水をいれておけばなかなかぬるくならない、という「魔法」のように便利な水筒ができあがるわけです。

 

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2018.10.18

分子の重さと熱の伝わりやすさ(江頭教授)

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 以前、こちらの記事で気体の比熱は分子の持っている自由度で決まる、という話をしました。例えばN2とH2は分子の重さは14倍違うのですがほぼ同じ比熱。HeはH2より重くN2より軽いのですが単原子分子なのでどちらよりも比熱が小さいのです。

 なるほど、気体の熱的な性質と分子の重さは関係ないのか...

いえいえ、関係する性質もありますよ、というのが今回のお話。その具体例が熱の伝わりやすさだ、ということです。

 熱の伝わりやすさはどう表現しましょうか。温度の高い壁と温度の低い壁に挟まれた気体を通してどれくらいの熱が流れるのか、熱い壁と冷たい壁の温度差と壁と壁の距離を一定にして比較すれば「熱の伝わりやすさ」の指標ができそうですね。温度差を1℃、壁間距離を1mとしたときに流れる熱量は熱伝導度と呼ばれていて、物質と温度・圧力がきまれば一意に決まる物性値です。(1℃は小さすぎだし1mは長すぎの様な気もしますが...。)

 さて、0℃、1気圧での熱伝導度、気体ではどんな値になるのでしょうか。

 H2 0.1675 W/mK

 He 0.1442 W/mK

 N2 0.0241 W/mK

となります。H2 > He > N2 となって、どうやら分子の重さの逆順に並んでいるようです。

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2018.10.17

年間降雨量と年平均降雨速度は違うのか(江頭教授)

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 いや、同じでしょう。

 と言ってしまえばそれまでなのですが、降雨の速度についてはちょっと不思議な習慣があるようです。「年間降雨量は○○mm」だという言い方は普通なのですが、例えば自動車の「時間あたり平均走行距離は××km」だ、という表現は普通しないのではないでしょうか。「時速××km/h」だ、という言い方が一般的です。

 逆に「年平均降雨速度は○○mm/y」という言い方は聞いたことがありません。そもそも「降雨速度」という表現がきわめて希です。その証拠に「"降雨速度"」をgoogleで検索するとこのブログの記事がトップに来るありさまです。(””を付けない検索では「降雨」and「速度」の文書が多数ヒットします。「降雨速度」と連続して使う事はほとんど無いわけですね。)

 その一方で自動車でも「年間走行距離」という表現はあります。(自動車保険にも関係しています。)

 さて、これはどう考えれば良いのでしょうか。

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2018.10.16

ブログトップページがリニューアル?(江頭教授)

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 今、このブログを見ている皆さんにはどのようにみえているのでしょうか。いつからかはハッキリしないのですが、昨日(2018年10月15日)ごろから下図のようにブログ全体とのタイトルとそれぞれのブログ記事のタイトルが消える、という状態になっていました。

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 はてさて、これは一体なにが...と、思っていたらなんと!ブログのヘッダーの写真が新しくなっていました。

ブログトップページがリニューアル?でもそんな話聞いてないけど...。

そう言えば、果たして皆さんが今どんなトップページを見ているのか、ブログを書いている私には分からないのですね。

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2018.10.15

雨量と降雨速度(江頭教授)

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 今年の夏、異常な暑さに始まって地震や大規模停電まで、いろいろな災害のあった夏でした。なかでも大雨は例年の常識を越えたもので、温室効果ガスによる気候の変動がいよいよ身近な物になって来たのかも知れない、とさえ思わせるものでした。

 と、言うわけで雨の凄さを表したニュースを探してみたのですが、たとえばウェザーニュースの以下の記事はいかがでしょうか。

 うーん、わざわざ「10分間に37.5mm」と書かれているのです凄い雨なのだろうとは思うのですが、あまり実感が湧かないのでは。続けて書かれている「1時間雨量70mm超」に併せて1時間雨量にすると「10分間に37.5mm」は「1時間雨量225mm」となって少し凄い雨感がでてきました。

 では、悪乗りして東京の1年間平均降水量 1528.8mm (1981~2010年の平均)と比べてみましょう。「10分間に37.5mm」の雨が降り続いたとすると1日では 5400mm、1年間では 1,971,000mm つまり 1971m 約2kmとなるのです。実際の平均年間降水量とくらべても千倍以上の開きがあって、これはさすがに「凄い雨」としか言いようがありませんよね。

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2018.10.12

続・ガスの比熱と分子の自由度(江頭教授)

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 以前の記事でエネルギー等配分の法則を使ってガスの比熱をその分子の自由度から計算する方法について解説したのですが、そのときの結論はこの方法が適用できるのは「希ガスか二原子分子程度」ということになりました。

 これは大きな分子では並進と回転だけを考えた分子の自由度の計算が不十分だ、ということです。大きな分子では分子内にも自由度がある。それを無視しては正しい比熱を求めることはできない、というわけです。

 それなら、「分子内の自由度もちゃんと計算すれば良いのでは」という発想がでてくるでしょう。このアプローチはうまく行くのでしょうか?

 結論から言うと、うまくいかない、が答えです。理由は以下の図に。

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2018.10.11

きれいな花には毒がある、のかな?(江頭教授)

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 きれいな花、具体的には「アジサイ」のことです。梅雨の頃、6~7月に咲く花なので少し季節外れかも知れません。何かの切っ掛けで「アジサイには毒があるって本当?」と聞かれてふと答えに詰まってしまったので、少々調べました、というのが今回のお話です。

 アジサイは子どもの頃から身近な植物でしたが、子どもの頃に「アジサイに毒がある」という知識があったようには思えません。でも、今になって言われてみるとどこかで「毒がある」という話を聞いたことがある様にも思います。なんとも微妙な知識なので、ここは一つキチンと調べてみましょう。

 身近な毒については、厚生省で「自然毒のリスクプロファイル」というページを通じて情報提供されていました。アジサイもその中で採りあげられています。

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2018.10.10

ガスの比熱と分子の自由度(江頭教授)

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 やってしまいました。昨日の記事に間違い発見です。

 「二原子分子の気体の定圧比熱は7R、単原子分では5R」と書いてしまったのですが、これは間違い。正確には二原子分子は(7/2)R、単原子分は(5/2)Rですね。(元記事の間違いは先ほどこっそり修正しておきました。)おっと、ここでRは気体定数(8.31J/molK)です。

 さて、この比熱の求め方を皆さんはご存じでしょうか。まず定圧比熱Cpと定積比熱Cvとの間には

 Cp=Cv+R

という関係が成立しています。何故こうなるかについてはまた後で説明するとして、この関係から

 二原子分子の定積比熱は5×(1/2)R、単原子分は3×(1/2)R

となります。この5とか3とか、実は分子運動の自由度なのです。単原子分子なら並進の自自由度、つまりx、y、z座標の三つしか自由度はありません。二原子分子ではこれに分子の中心軸の方向を決めるφーθの二つの自由度(回転の自由度)が加わって五つの自由度があることになります。軸対称ではない分子にはもう一つ中心軸に対する方向の自由度が加わって自由度は6となります。

 自由度と比熱の関係、定積比熱では一つの自由度に対して(1/2)Rの熱容量が割り当てられる計算になっています。温度が1K上昇すると一つの自由度に対して(1/2)Rのエネルギーが増える。つまり、自由度ごとに等しいエネルギーが増えることを意味しています。(これがエネルギー等配分則ですね。)

 さて、定圧比熱の測定値と分子自由度から計算した値を比較したのが以下の表です。

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 実に良く合っている、と途中までは言えるのですが、はてさて二酸化炭素では少々事情が異なっています。二酸化炭素は直線分子ですから自由度は5のはずなのですが、実測される比熱はそれよりやや大きいのですね。

 もう少し大きな分子についてはどうでしょうか?

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2018.10.09

ガスの比熱とマスフローコントローラー(江頭教授)

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 「マスフローコントローラー」については以前もこちらの記事で紹介しています。マスフローコントローラーはガスや液の流量をコントロールするための機器ですが「フロー」コントローラーじゃなくて「マスフロー」コントローラと呼ぶのは何故なのか、というのがそのときのお話。

 まあ、マスフローコントローラー、と書いているのですが、実際にはマスフローメーターについて、ですね。図の様に、本当に流量を調節しているのは電磁弁。フィードバック制御を行うための流量の計測を行っているのがマスフローメーターです。マスフローコントローラーの特性はマスフローメーターで決まります。

 さて、件の記事の中で

 マスフローメーターでの流量測定には伝熱現象を利用しています。ガスが流れると熱が伝わりやすくなる。その熱の伝わりやすさと流れの速さの関係から流量を検出します。伝熱による温度変化を電気抵抗の変化として読み取るのですが、流路の構造や抵抗体のサイズと配置、そしてガスの種類によって熱の伝わりやすさが変化しますから、ガス流量と抵抗との関係を定量的に予測するのは難しい。そこでガスの種類に応じて検量線を作って流量を測ります。

と書いたのですが、今回は実際にやってみた、というお話です。 実験の都合で、N2仕様に調整されていたマスフローコントローラーにArを流して実験したい。本来ならば業者に送り返して再調整するところなのですが、当座の話なので検量線を書いてみよう、ということになりました。

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2018.10.08

紅華祭が開催されています(江頭教授)

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 前回の記事でも紹介した通り、昨日10月7日と本日8日、東京工科大学の学園祭、紅華祭が開催されています。台風の当たり年の本年度は台風25号の影響が気になっていたのですが、幸い初日の7日は快晴に。快晴すぎて少し暑かったかもしれません。今日はもう少し涼しいと良いですね。

 さて、普段の日曜日、本学のキャンパスは特に閉鎖されているわけではありませんが、人が来ることを想定していない状態になっています。具体的に言えばスクールバスが運行していません。でも、学園祭となればメインの交通手段はスクールバスに。当然、昨日も、そして休日の今日もスクールバスは運行しています。これ、普段通りではなく、少し変則的な運行です。

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2018.10.05

八王子キャンパスは紅華祭にむけて準備中(江頭教授)

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 紅華祭とは、東京工科大学と日本工学院八王子専門学校が、毎年10月に合同で開催している学園祭です。工科大学の学際だから「こうかさい」。工科際では味気ないので、「紅華祭」となったのでしょう。秋の学園祭にはふさわしい名前ですね。

 さて、今年の紅華祭は10月7日と8日に開催です。私の世代の常識では学園祭は週末の土日(あるいは金土日)に行われるものですが、休日が週末と連続するようになった最近では土曜日を準備に当てて日曜日と休日(今回は体育の日ですね)を使った開催というのもありなのでしょう。ちなみに月曜日の体育の日の翌日も本学の授業はお休みです。(いえ、私たち教員は別に休みではありませんよ。)

 さて、下の写真は紅華祭のメインステージ。まだ組み上がっていませんが今年は例年よりすこし豪華な気がします。

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2018.10.04

熱しやすく冷めやすい空気(江頭教授)

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 前回、空気と水の密度の違いについて紹介しました。もっと一般的に言えば気体と液体の違い。液体の密度は高いですが気体の密度は小さい。たとえば100℃1気圧で水が蒸発して水蒸気になるとき、1700倍に膨らみ、その密度は1700分の1に減少します。

   単純に言って気体は液体や固体にくらべてスカスカだ、ということになります。それを反映して気体の熱容量も液体と大きく異なっています。おっと、これも条件をハッキリしないといけません。体積基準での熱容量が大きく異なる、ということです。逆に言うと質量基準で考えるとそんなに変わらない(同じではありませんが)という事になります。

 例えば1m3の空気を加熱する場合を考えてみましょう。前回の教訓に従って条件を明らかにしましょう。20℃1気圧で1m3の空気を1℃加熱するのに必要な熱量を計算してみましょう。20℃1気圧で1m3の空気は 41.6 mol になります。 1 mol の2原子分子の定圧比熱は 7/2 R (Rはガス定数)ですから 29.1 J/(K mol) 。 41.6 mol の物質量なら熱容量は1.2×103J/(K m3) となります。

 一方 1m3 の水(これも20℃1気圧)を加熱すにはどのくらいの熱量が必要なのでしょうか。1m3 の水は106g。1gあたり1℃温度を上げるには4.2Jが必要なので 4.2×106J/(K m3) となり、空気の場合の3500倍の差が生じます。

 ちょっとイメージが湧きませんか?

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2018.10.03

水と空気はどっちが重い?(江頭教授)

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 いや、別に「水1トンと空気1トン」みたいなナゾナゾをやりたいわけではありません。普通に考える様に同じ体積での比較、つまり密度の違いのお話しです。水が重いのは考えるまでもないことですが、まずは基本的な情報から。

 水の密度は1mL当たり1g。これはOKですね。では空気はどうでしょうか。空気の密度を求めるには「1molの気体は標準状態で22.4L」ということを覚えていると便利です。空気が酸素20%、窒素80%の混合気体だとすると平均分子量28.8の気体だと見なすことができます。22.4Lで28.8gですから1L当たり約1.3g、1mL当たりなら1.3mgとなります。まさに水より桁違いに軽いわけです。

 さて、ここからが本題。さきほど「標準状態で」と書きましたが、これは0℃1気圧の条件です。室温付近、20℃1気圧では空気はもう少し軽くなりますが、もっと違った条件ならどうでしょう。水が空気より軽くなる条件はあるのでしょうか。

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2018.10.02

履修登録のこと(江頭教授)

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 本学の夏学期の授業、今日から第3週間目に入ります。学生諸君もそろそろ落ち着いて、授業にもリズムができてきた頃でしょう。

 さて、以前も紹介しましたが大学の授業は基本的には選択性になっています。この授業を受けることができませんとか、この授業は受けておく必要がある、といった規則はありますから、完全に選択性と言うわけではありません。しかし、基本が選択性である以上、授業を受けるためには学生諸君が自発的に「自分はこの授業を選択します」と宣言してもらわなくてはならないのです。小学校から高校までのように時間割に書かれた教室に行けば授業を受けたと認定される、という分けではありません。

 学生諸君が授業を選択したことを宣言するための仕組みが「履修登録」です。本学では約1週間の履修登録期間にWEB上で学生が各自の履修する授業を登録することができる様になっています。その期間に体調を崩した人は自宅から登録することも可能です。

 最初の1回は様子見として、2回目、3回目以降は履修する科目を決めてきちんと出席する、履修登録はその決意を表明する機会だ、というえば少々大げさでしょうか。

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2018.10.01

台風一過の八王子キャンパス(江頭教授)

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 本日は2018年10月1日。昨日の夜から今日の早朝にかけて「大型で強い」台風24号による暴風雨が東京をも襲いました。JR各線の運休などの情報もありましたが朝には天気は快晴に。いわゆる台風一過の良い天気になったのですが、果たして八王子八王子キャンパスはどうなっているのでしょうか。

 下の写真は八王子みなみ野駅から本学の八王子キャンパスへとつづく坂道の今朝8時半ごろの様子です。いつもはきれいに清掃されている歩道にたくさんの葉っぱや小枝が落ちています。枯れた様子もない若々しい葉も多く見られます。台風の暴風によって引きちぎられてしまったのでしょうか。

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 八王子キャンパスにも木がたくさんあります。これは大変なことになっているかも、と思いながら正門前まで来たのが以下の風景。銀杏並木の通路は意外によく片付いています。

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 さすが、もう清掃が入ったのか、などと思っていると...

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