雨量と降雨速度(江頭教授)
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今年の夏、異常な暑さに始まって地震や大規模停電まで、いろいろな災害のあった夏でした。なかでも大雨は例年の常識を越えたもので、温室効果ガスによる気候の変動がいよいよ身近な物になって来たのかも知れない、とさえ思わせるものでした。
と、言うわけで雨の凄さを表したニュースを探してみたのですが、たとえばウェザーニュースの以下の記事はいかがでしょうか。
うーん、わざわざ「10分間に37.5mm」と書かれているのです凄い雨なのだろうとは思うのですが、あまり実感が湧かないのでは。続けて書かれている「1時間雨量70mm超」に併せて1時間雨量にすると「10分間に37.5mm」は「1時間雨量225mm」となって少し凄い雨感がでてきました。
では、悪乗りして東京の1年間平均降水量 1528.8mm (1981~2010年の平均)と比べてみましょう。「10分間に37.5mm」の雨が降り続いたとすると1日では 5400mm、1年間では 1,971,000mm つまり 1971m 約2kmとなるのです。実際の平均年間降水量とくらべても千倍以上の開きがあって、これはさすがに「凄い雨」としか言いようがありませんよね。
などと書いたのですが、上記の議論、他の雨との比較はともかく、実は同じ雨の速度を 225m/h とか 5400mm/d、1971m/y など違う単位に書き換えているだけです。凄いという感覚、実は錯覚なのではないでしょうか。
「ビタミンC 2000mg 配合」は凄いのに「ビタミンC 2g 配合」はちょっと残念な気がしたり、「ハーフ」は控えめなのに「ダブルクォーター」にはがっつり感があるとか。本来の物理量は単位が変わってもその内実には全く影響しないのですが、私たちの感覚にはこのようなトリックにだまされる習性があるようですね。
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