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ガスの比熱とマスフローコントローラー(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「マスフローコントローラー」については以前もこちらの記事で紹介しています。マスフローコントローラーはガスや液の流量をコントロールするための機器ですが「フロー」コントローラーじゃなくて「マスフロー」コントローラと呼ぶのは何故なのか、というのがそのときのお話。

 まあ、マスフローコントローラー、と書いているのですが、実際にはマスフローメーターについて、ですね。図の様に、本当に流量を調節しているのは電磁弁。フィードバック制御を行うための流量の計測を行っているのがマスフローメーターです。マスフローコントローラーの特性はマスフローメーターで決まります。

 さて、件の記事の中で

 マスフローメーターでの流量測定には伝熱現象を利用しています。ガスが流れると熱が伝わりやすくなる。その熱の伝わりやすさと流れの速さの関係から流量を検出します。伝熱による温度変化を電気抵抗の変化として読み取るのですが、流路の構造や抵抗体のサイズと配置、そしてガスの種類によって熱の伝わりやすさが変化しますから、ガス流量と抵抗との関係を定量的に予測するのは難しい。そこでガスの種類に応じて検量線を作って流量を測ります。

と書いたのですが、今回は実際にやってみた、というお話です。 実験の都合で、N2仕様に調整されていたマスフローコントローラーにArを流して実験したい。本来ならば業者に送り返して再調整するところなのですが、当座の話なので検量線を書いてみよう、ということになりました。

Mfc_diagram

 実際にArを流してみるとN2よりたくさん流れる様です。最大の流量500SCCMに設定したときは699.3SCCM流れることが分かりました。何点かとって直線性を確認。一次式に当てはめると検量線の傾きは1.39となりました。

 うーん、699.3とか1.39とか。おそらく700と1.4だよなあ。つまり500SCCMのN2と700SCCMのArが等価だ、ということに気がつきました。5:7という数字には思い当たるものがあります。二原子分子のN2の定圧比熱は(7/2)R、一原子分子のArの比熱は(5/2)R。7:5で入れ替わっていますから、これはおそらく比熱の逆数に比例している、ということではないでしょうか。

 ArはN2に比べて加熱されやすい。だから同じ体積のArはN2に比べて少ない熱しか運べない。より具体的にはArはN2の5/7の熱量しか運ぶことができない。だから同じ熱の量を運ぶためにはArはN2の7/5倍流さないといけない。

 こういう理由で同じマスフローコントローラーのセッティングでArはN2の7/5倍流れるのでしょう。この結果が一般的かどうかは分かりませんが、このマスフローの流量は気体の定圧比熱の逆数に比例しているようです。

江頭 靖幸

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