魔法瓶ってどうよ(江頭教授)
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前回の記事では気体について、熱の伝えやすさの指標である熱伝導度が「温度差を1℃、壁間距離を1mとしたときに流れる熱量」であること、その熱伝導度が気体の場合、分子の熱運動による速さ、分子同士が衝突せずに自由に運動できる距離、そして分子が運びうるエネルギーの指標としての熱容量によって決まるのだ、という説明をしました。
でもその前に,基本的なポイントの確認を。「温度差を1℃、壁間距離を1mとしたときに流れる熱量」といいましたが、熱が流れるのは気体があるからだ、という点に注目してみましょう。気体そのものが存在しない場合、つまり一定距離の壁の間が真空になっている場合、熱を伝えるものがないため伝熱が進まないだろうということも推察されます。
さて、この真空による断熱、という現象を利用したのが「魔法瓶」です。二重になったガラスの容器をつくり、二つのガラスの壁の間を真空にする。これで高い断熱性がえられるので、容器に入れたお湯がいつまでも冷えない、あるいは容器に冷たい水をいれておけばなかなかぬるくならない、という「魔法」のように便利な水筒ができあがるわけです。
化学の実験室にもじつはこれと全く同じ原理の道具があります。
写真のデュワー瓶がそれ。私が学生だったころ、研究室で液体窒素を運ぶために利用していました。液体窒素は熱が伝わってくるとどんどん気化してしまうので断熱性の良い容器が必要なのです。当時、このデュワー瓶をみて「これって魔法瓶では」と思った記憶があります。「大学では魔法瓶のことをデュワー瓶」と言うのか。
いやいや、別に意識して言い分けているわけではないと思いますが、いやしくも科学の心髄を極めよう、という研究室で「魔法」瓶はないですよね。
PS: じゃあ、デュワー瓶の「デュワー」って何?と思ったら実は人の名前のようです。
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