MDGsと国連ミレニアムサミット(江頭教授)
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「サステイナブルな開発目標」(一般には「持続可能な開発目標」ですが、ここではあえてサステイナブルとしておきましょう)の前身として「ミレニアム開発目標」が存在したことを前回紹介しました(こちらは「千年紀開発目標」とは言いませんね)。
この「ミレニアム」という言葉、いまは余り聞かなくなりましたが、1999年から2000年にかけては結構はやっていた言葉で、OSのネーミングからゴジラ映画のタイトルにまで使われる有様でした。1999年が終わって2000年になる、となれば何かすごく「一区切り感」があるのですが、残念ながら2000年は20世紀最後の年、21世紀を迎えるのは2001年になってからです。でも2000年を迎えるに当たって何か言いたい、そんな気持ちが、この「ミレニアム」という言葉には込められていたと思います。
そんな気分で迎えた2000年、9月に行われた国連のミレニアムサミットでの「国連ミレニアム宣言」がMDGsの基となっているといいます。
では、「国連ミレニアム宣言」は具体定期にはどんなないようなのでしょうか。仮の訳ですが「国連ミレニアム宣言」は日本語で外務省のサイトで読むことができます。
ミレニアム宣言は全体で8章からなっています。その章立てを見てみましょう。
- 価値と原則
- 平和、安全および軍縮
- 開発および貧困撲滅
- 共有の環境の保護
- 人権、民主主義および良い統治
- 弱者の保護
- アフリカの特別なニーズへの対応
- 国連の強化
どうでしょうか?
「ミレニアム開発目標」も8個のゴールを設定しているのですが、「ミレニアム宣言」の内容とは直接は対応していません。「ミレニアム宣言」の方がより広い内容であり、「ミレニアム開発目標」は「ミレニアム宣言」の一部、特に「開発および貧困撲滅」を中心としてまとめられたことがわかると思います。
「ミレニアム宣言」の「開発および貧困撲滅」の章には
2015年までに、一日の所得が1ドル以下の人口の比率、及び飢餓に苦しむ人口比率を半減すること、また同期日までに、安全な飲料水を入手できず、またはその余裕がない人口比率を半減することを決意する。
と述べられていて、この部分などは「ミレニアム開発計画」の目標(具体的には目標1、目標7)に対応するものです。
その一方で
重債務貧困国が貧困削減への決意を目に見える形で示すことと引き替えに、重債務貧困国に対する拡充された債務救済プログラムをこれ以上の遅滞なく実施するよう、また、これら諸国の全ての二国間公的債務の帳消しに同意するよう求める。
といった内容も書き込まれています。これは貧しい国の借金棒引き、あるいは破産処理に関するものです。「国連の目標」としてMDGsの一部として掲げるのは憚られたのでしょうが非常に重要な課題であり、サミットの場で確認されていたわけです。
同様に「アフリカの特別なニーズへの対応」という項目も「国連の目標」であるMDGsには含まれていません。この中には政治体制にも関係する申し合わせが含まれている点が問題となったのでしょうか。
「ミレニアム宣言」も「ミレニアム開発目標(MDGs)」もどちらの公にされているのですが、「ミレニアム宣言」はある意味専門家向けの文章であり、MDGsは一般に広く広報されるもの、という性格があります。そう考えると「ミレニアム宣言」の方が国連の本当の目標であった、と考えることもできそうです。
PS:「ミレニアム開発目標」をそのまま「千年紀開発目標」と訳したら、その達成目標は3000年、いや、2999年のはずですね。事実上、何もしない宣言になってしまうところでした。
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