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MDGsの主役は誰?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 SDGs(サステイナブル開発目標)の前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)についての説明を続けましょう。2015年に完結したMDGsの成果をまとめた国連広報センターの資料

「ミレニアム開発目標(MDGs)報告2015」 の概要(日本語プレゼンテーション資料)

には以下の図のような表が載っています。どの地域でどの程度MDGsの目標が達成されたか。青の部分が多くて赤が少ない、多くの地域で目標が達成されたのだ、ということが一目瞭然な図です。

 なるほど、アフリカの状況はおおむね順調。アジアは南アジアの開発が遅れ気味なのか…。日本は東アジアの一部だろうが、はて、北アメリカや欧州はどこに…。

 この成果チャートには先進国は含まれていません。それはそうだ、開発目標(Development Goals) なのだから発展途上国 (Developing countries) が対象だろう。

 確かにそれはそうなのですが、だとすればMDGsは私たち先進国に暮らす人間にとって一体どのような意味があるのでしょうか。(いや、あったのでしょうか、と過去形で言うべきですね。)

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 はっきり言って、先進国の一般市民のとって、たとえ MDGs をよく理解して深く賛同していたとしても大してできることは無かったのではないかと思います。自ら貧困問題を解決するために途上国へ赴く、といった行動はなかなか一般市民にできることではありません。となればできることは寄付をする。もっと消極的ですが、自国の政府のODA(政府開発援助)に文句を言わないことぐらいでしょうか。

 そもそも、MDGsの主役、つまり Goal を達成する人たちは発展途上国に人々であり、その推進役は第一にはその国の政府です。国連は先進国の政府は間接的(資金的)にその活動を支援する立場にあるだけで、先進国の市民が直接参加できるようなものではありません。

 国連が自らの目標としてMDGsを設定する。それを受けて各国政府がMDGsに対応した政策をとる。発展途上国の人々には大きな恩恵があったと考えられますが、先進国の一般市民にとってはどこか遠くのお話し。ややシニカルに過ぎる言い方ですが、MDGsにはこのような側面があったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

江頭 靖幸

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