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きびしい先生、やさしい先生(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 鬼仏表というものがあります。これは、昔の大学生の間で、単位を取りやすい先生を「仏」、単位を取りにくい先生を「鬼」にたとえて、その評価をまとめた小冊子のことです。最近は楽天が「みんなのキャンパス」で全国規模のWEBページを作っているようですね。

 試しに、私の前の大学での「安全化学」の評価を見ますと、

  内容充実度 ★★★★★

  単位取得度 ★★

でした。なるほどねぇ。

 コメントの中には「精神的に結構きつい講義で、人によっては胃に穴が開きます」とか「とにかく先生はジレンマが大好きで、正解がない問題を生徒にぶつけてレポートを書かせて楽しんでいます」とか好き勝手なことを書いています。

 本学では「学生アンケート」で講義の評価を先生にかえしています。それを元に、各先生は自分の講義の改善を行ないます。でも、それは表の世界のはなし、おそらくウラでは、学生さんの間で、うちの学科の先生の「鬼仏」について、いろいろな噂はなしが飛び交っていることでしょう。

 工科大学応用化学科の各先生は「鬼」でしょうか「仏」でしょうか。それについて、コメントは避けましょう。皆様の評価を待ちましょう。

 さて、私の出身の京都大学理学部有機化学研究室では鬼教授の後任は仏教授、仏教授の後任は鬼教授というパターンがありました。初代の久原躬弦教授は初代日本化学会長を勤められた「鬼」と伝えられています。その次代の小松教授は鬼だったという噂を聞きませんから仏だったのでしょう。三代目の野津龍三郎教授は研究の「鬼」として有名でした。四代目の後藤教授は私の目から見ても好々爺の「仏」でした。その次の丸山教授が私のお師匠様で、典型的な「鬼」でした。この法則は必ずしも私の出身研究室だけではなく、日本の多くの大学の研究室に共通して見られるようです。この法則は、俗に「鬼仏交代論」と呼ばれます。

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 なぜ、このような交代が起こるのかについて、私のお師匠様の言動から推察できます。飲み会のおりに丸山教授は私に「片桐君、大学教員はよい商売だぞ、優秀なら手本になれる。ダメなら反面教師になれる。ワッハッハ」ともうしておりました。また、先々代の後藤先生とのディスカッションの思い出も聞きました。

 若き日の学生丸山が後藤先生に研究のディスカッヨンを申し入れて、1時間ほど研究の進捗状況と問題点を説明し、後藤教授に意見を求めたそうです。後藤先生はしばし考え込み「丸山君、研究は難しいねえ」とおっしゃり、学生丸山がぽかんとしているうちにディスカッションは終わってしまったそうです。そのとき,丸山先生は「こりゃだめだ」と思ったそうです。

 なるほど、皆様,先代の教授の学生に接する態度を意識すると、その反対側に大きく振れてしまうようです。しかし、「鬼」だから避けるべき、「仏」だから慕うべきでもありません。自分の考えを前面に押し出し、学生と常に真剣勝負を繰り広げその中で学生さんの成長をはかる「鬼」も、学生さんを信じて余分な口出しをしない「仏」も、どちらも学生さんを育てたいという思いは同じでしょう。叱って育てるかほめて育てるかですね。

 学生時代、私はその丸山教授の「避雷針」と呼ばれていました。雷は集中的に私の所に落ちていました。それゆえに私は丸山教授からたくさんの大事なことを学んだと思います。ほめられたことは忘れても、叱られて自ら後悔したことは一生忘れません。

 さて、私は学生さんに何を残せるのでしょうか…。

片桐 利真

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