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工学の理想世界とは? (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今日までは三が日、ということで初夢気分でおめでたい話をしたいと思います。今日のお題は「理想の世界」。現実的かどうかを度外視して「工学」の理想が実現した世界を思い描いてみましょう。

 「理学と工学の違いは目的の有無」という点からスタートすれば、工学とは「目標をかなえてくれるもの」となるでしょうか。歴史的に見れば人間の目標は「食う寝るところにに住むところ」の確保でしたから、すべての人に十分な衣食住を保証できる環境を整えることが工学の究極的な目標となると言えそうです。

 ではこの究極的な目標を最も効率的に実現するとしたらどんな世界になるのでしょうか。

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 食料、衣料品、そのほか輸送が可能なものの生産は最適地で行うべきでしょう。食料の生産は日照と降雨量から適地が決まりますね。日照の多い海岸に近い場所。ここでいう「海岸に近い」は大陸の奥ではない、くらいに考えてください。日本なら全部丸ごと海岸に近い場所です。適度な日照と降雨量に恵まれた日本は農業には向いた国だと思います。ただ、土地が平らでないのは機械化には不向きです。段々畑を普通に耕して収穫する4足歩行ロボットトラクターなどがあればそんな困難も解消されるでしょう。

 衣料品やそのほかの日用品はどうでしょうか。化石資源をエネルギー源とするなら産油国に工場を造るのが適切でしょう。砂漠の真ん中で人が住んでいない?ならAIとロボットによる無人工場はいかがでしょうか。退屈な工場労働を進んでしたい人などいないでしょうからね。

 とはいえ、化石資源はサステイナブルではありません。太陽光をはじめとした自然エネルギーを利用すると考えればどうでしょうか。えーっと、やっぱり赤道付近の砂漠がふさわしいのでは。少なくとも日照という点では日本はエネルギー多消費型の産業立地には不向きな場所だと考えられます。

 温帯地域の巨大農場で大量の食糧が生産され、赤道付近に作られた太陽エネルギープラントと自動化工場では大量の工業製品が作り出されています。どちらも全地球に張り巡らされた自動運転物流ネットワークを経由して世界の各地に運び出され、必要な人が必要に応じて消費することができるのです。

 さて、この初夢の世界、皆さんはどう感じるでしょうか。世界のグローバル化が行きつくところまで進めばおそらくこのような世界が実現するのでしょうが、私にはなにか「良い世界」のようには思えないのですが…。子供のころから「一見理想的な社会だが実は…。」という小説を読みすぎたからかもしれませんね。

江頭 靖幸

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