プラスチックのいろいろなリサイクル(江頭教授)
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プラスチックのリサイクルについて、以下の様な話を聞いたことはありませんか?
プラスチックは石油からつくるけれど石油のほとんどは燃料として利用されている。プラスチックのリサイクルをしても節約できるのは石油なのだから、プラスチックをリサイクルするのはやめて燃料として燃やせば良いのでは。
なるほど、一理ありそうです。でも「プラスチック循環利用協会」の資料をみるとプラスチックのリサイクル率(おっと、正確には有効利用率です。この点は後述。)は2016年の統計で84%に達していると言います。やっぱりプラスチックはリサイクルすべきなのでしょうか。それとも日本はリサイクルを重視しすぎて間違った選択をしているのでしょうか。
答えは「リサイクル」という言葉の定義に関わっています。普通「リサイクル」という言葉を使うとき私たちが想像するのは「使用済みのPETボトルをそのままPETボトルとして利用する」というイメージではないでしょうか。例えば「リサイクルショップ」という言葉で使われている「リサイクル」は確かにこのような意味だと思います。でもこれ、正確には「リユース」ですよね。(「リユースショップ」と言うべきかな、と思って検索したら本当にあるんですね。こういう名前。)
「リサイクル」という言葉をリユースと区別するなら、「使用済みPETボトルを溶かしてもう一度PETボトルを新しく作り直す」という意味でしょうか。でも、使用済みのPETボトルにはどうしても不純物が入り込むので、このような「リサイクル」を実現するのはきわめて困難です。実のところPETボトルに限定するなら可能なのですが、他のプラスチックが混ざってしまった場合PETボトルの成分だけを分離してリサイクルするのは非現実的です。
このように厳密な意味でリサイクルを考えると84%がリサイクルされているというデータはにわかには信じがたいことに思えます。
さてこの問題、ポイントは「リサイクル」という用語に「もとのプラスチック製品以外のものとして再利用する」という方法が含まれている、という点にあります。
プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2018」より。
上の表の様にプラスチックのリサイクルは三つに分類されています。一つはマテリアルリサイクル。これが普通に言う「リサイクル」に一番近いものでしょう。リサイクルによって新しいプラスチック製品を作るのですが、ポイントは回収された製品と同じものではない、という点です。鉄道の標識や杭、車止めや衣類のハンガーなど、それほど機能性の求められない製品が作られます。2016年のデータでは廃プラスチックのうち、この「マテリアルリサイクル」をされるのは23%だといいます。
表の次に載っているのは「ケミカルリサイクル」。プラスチックを原料モノマーに分解して新たなポリマー(プラスチック)の原料にする、というプロセスならこれぞリサイクルといえますが、この分類には原料モノマー以外のものをつくるプロセスも含まれています。例えばコークス(石炭の替わりにプラスチックを蒸し焼きにします)、そして高炉還元剤(コークスにせずに直接プラスチックを高炉に投入)なども含まれています。プラスチックをつかって石炭を節約する、という意味では有意義なのでしょう。この「ケミカルリサイクル」の割合は4%に過ぎません。
さて、最後がサーマルリサイクル。サーマルリサイクルはプラスチックを燃料として「リサイクル」することです。焼却して発電に用いられるのが31%、熱として利用されるのは9%、固形燃料やセメント製造に使われているのが17%だといいます。すべてを合計すると58%となり、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルよりずっと大きくなっています。
まとめると、廃プラスチックの23%がマテリアルリサイクルに、4%がケミカルリサイクルに、そして58%がサーマルリサイクルに利用されています。これを合計すると84%。「リサイクル率84%」と言いたいところですがこの資料では「有効利用率」という言葉が使われています。
最初に述べた「プラスチックをリサイクルするのはやめて燃料の代わりに燃やせば良いのでは」という意見、こうしてみると実際にその通りに実践されていたのですね。ただし、「リサイクルするのはやめて」という部分は別。「燃料の代わりに燃や」すことをサーマルリサイクルと読み替えたのです。
そんなのインチキだ、とおっしゃる向きもいるようですが、そもそもリサイクルの定義が曖昧な以上、これはこれで有りでしょう。本質はサーマルリサイクルが資源の節約に有効かどうか、サーマルリサイクルと他のリサイクルではどちらが有利か、という個別具体的な判断です。個々の事業者がその判断を下し、それが積み重なって現状があるのですから、特に問題は無いだろう、と私は考えるのですがいかがでしょうか。
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