豊かな人、貧しい人-推薦図書「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」追記(江頭教授)
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先日こちらの記事で紹介した推薦図書「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」、私の意見ばかりで本の内容の紹介がおろそかになっている様にも見えますので、今回はこの「ファクトフルネス」の印象深い内容について紹介しましょう。
本書では我々の「世界は分断されている、非常に豊かな先進国と極めて貧しい途上国だ」という見方は「分断本能」によって作り出される思い込みである、としてよりリアルな世界の見方として世界の人々を収入毎の4階層に分ける見方が紹介されています。
世界には非常に豊かな人と極めて貧しい人がいるのは事実なのですが、実は世界のほとんどの人はその中間にいる。2017年では非常に豊かなひとは約10億人、極めて貧しい人も約10億人だといいます。のこりの50億人はその中間にいる。この中間層を収入の上下で分けて四階層です。
一番貧しいレベル1の人たちの収入は一日平均2ドル以下。(この金額は購買力平価で補正されています。)最低限の工業製品しか入手できないこの人々の暮らしはリアルな死の危険も覚悟する状態です。これが我々が漠然と描く「極めて貧しい人」のイメージに地番近い暮らしでしょう。この人達が世界に約10億人います。
2番目のレベル2の人たちの収入は一日平均8ドルまでです。このレベルでの生活はそれなりの工業製品を入手していて、不安定ながら電気や水道のインフラにもアクセスできます。確かに貧しいのですが死の危険を意識することはありません。ただし、天候不順で凶作がつづけばレベル1の生活に逆戻りする可能性もあります。このレベル2の人たちは世界に約30億人います。世界で一番多いのはこのレベル2の人たちなのです。
3番目のレベル3の人たちの収入は一日平均32ドルまで。工場で働く人たちは最低でもこのレベルでしょう。安定したインフラがあり、病気になれば病院に行くこともできます。なにより多少の凶作でもレベルダウンの可能性はありません。レベル3の人たちは約20億人います。
さて、最後のレベル4の人たちの収入は一日平均32ドル以上。1ドルを110円として換算すると年収128万円以上。ほとんどの日本人はこのレベルに入るのではないでしょうから、その生活ぶりについては説明は不要でしょう。このレベルの人は世界で10億人です。
豊かな国の人々と貧しい国の人々、私たちとあの人達、そんな2分法は1960年頃、つまり私の生まれた頃の世界に対しては有効な世界イメージを与えていました。しかし、多くの貧しい人々はこの半世紀で次第に豊かになりました。この4分法はその変化を反映したものなのです。今も世界は変化を続けていますから、4分法を念頭に常に知識をブラッシュアップしてゆきましょう。
さて、以上は私の言葉での説明でしたが、皆さんには是非「ファクトフルネス」の本を読んでもっとビビッドな解説に触れて頂きたいと思います。
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