豊かな国、貧しい国、中くらいの国(江頭教授)
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こちらの記事で紹介した人々の生活を収入に応じて4段階に分類する方法、提案者であるハンス・ロスリング博士が著書の「ファクトフルネス」の中で説明しているものです。その中では「1999年頃、わたしは初めて世界銀行の職員に向けて講義を行った」が、「世界銀行が「途上国」と「先進国」という言葉を使うのをやめ、代わりに4つのレベルを使うと公言したのは、最初の講義から17年も経った後だった」と述べられています。
なるほど、最近は世界銀行も4段階で分類するのか、と関心したのですが、同時にどの国がどのレベルなのか、自分が良く知らないことに気がつきました。そこで少し調べた結果を紹介しよう、というのが今回の内容です。
下の表がその結果です。これだけでも充分なのですが、まずは出典の説明を。この表は経済産業省が刊行している通商白書の2015年版からの引用です。この年の通商白書では「今後のグローバルな事業環境に影響を与えうるメガ・トレンド」と題して世界経済についての分析が示されていて、その中で「新興諸国経済の類型化」として示されているのがこの表なのです。白書にはこの表が世界銀行のデータから作られた、と記載されていますから、これもハンス・ロスリング博士の講義の遺産の1つですね。
世界をレベル1「低所得国」、レベル2「下位中所得国」、レベル3「上位中所得国」、そしてレベル4「高所得国」と分類しています。この分類、境界の収入額がハンス・ロスリング博士の「ファクトフルネス」と違って一年当たりの収入がベースになっていますが、一日当たりに直すと2.9ドル、11.3ドル、34.9ドル。「ファクトフルネス」の2ドル、8ドル、32ドルと大体同じです。
では表を見ていきましょう。
さて、欧米諸国と日本はG7として高所得国に入ります。ロシアも、そして中国の中でも香港は別格で高所得国入りしています。ヨーロッパの国々、UAEやサウジなど産油国、それにシンガポール、イスラエルなども高所得国ですね。
チリは高所得国ですがブラジル、アルゼンチンは上位中所得国。南米の国、というぼんやりしたイメージしかなかったので少し意外です。
低所得国はいわゆる我々が普通にイメージする「発展途上国」だと言えます。大きな国としてはバングラデシュ。カンボジア、ミャンマーなど東南アジアの国、コンゴ、エチオピア、ケニアなどアフリカの国々などです。
では私たちがイメージしにくいという中間の国々はどんな国なのでしょうか。
上位中所得国には先に触れたブラジル、アルゼンチンなど南米の国々の他にも中国、そしてマレーシアやタイなどの南アジア諸国、アフリカのチュニジア、アルジェリアや南アフリカなどが含まれています。発展途上国のトップランナーというところでしょうか。
下位中所得国はインド、インドネシア、パキスタンなど南アジアの国々やアフリカの国々が含まれています。これからの成長に期待大です。
えっ、具体的な国名まではなかなか覚えられそうにないって? では最低限ここは覚えておきましょう。上位中所得国に中国、下位中所得国にインド、これだけでかなりの人口がカバーできました。
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