歯ブラシ以前の歯磨き(江頭教授)
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先日紹介した「Dollar Street」、世界のいろいろな収入レベルの人たちがどのような生活をしているのか、を多くの写真でイメージさせてくるサイトです。家族のポートレートや住んでいる住宅、調理の様子など生活のいろいろな側面が写真に撮られているのですが、その中の1つが「歯ブラシ」でした。
収入レベルの高い家庭では電動歯ブラシが写っている所もありましたが、最も広い収入層で使われていたのはプラスチック製の歯ブラシ。中所得高位層、中所得低位層では家族1人1人に1本の歯ブラシがありますが、低所得層では家族で共有している、というのが一般的だそうです。(これはハンス・ロスリング博士等の「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」での記述に拠ります。)
とは言えこの「歯ブラシ」、写真だけ見ていると収入レベルの差が大きくてもあまり違いが無い様に見えます。歯ブラシ自体は比較的安価なものである一方で多くの人が切実に必要としてる。だから収入レベルが低いところでも多くの家庭に置かれているのでしょう。逆に収入が少ないからといって歯ブラシにかけるお金を節約するのは、せいぜい家族で1本を共有するぐらいしか手段がない、ということかも知れません。
さて、今回のお題はどうしてもプラスチック製の歯ブラシを手に入れられないひとについて。つまり、プラスチックが発明される以前の昔の人たちがどのように歯の手入れをしていたか、についてです。
「Dollar Street」で低収入の家庭の「歯ブラシ」を丁寧に見てゆくと人の指の写真が出てきます。道具を用いないで指で歯の手入れをする、ということなのでしょう。その手があったか。いや、指があったか、でしょうか。どんなに昔でもこれなら大丈夫ですね。
「Dollar Street」をもっと見てゆくと「歯ブラシ」として植物が写っているケース、木の枝が写っている写真がありました。これは手製の爪楊枝だと思います。これらの家庭では爪楊枝を歯ブラシの代わりに用いている、つまり爪楊枝は歯ブラシの代わりになる、ということです。
爪楊枝は現在では「歯の間に挟まったものを取り除く」という用途に特化しているので金属製でも構わない訳ですが、木製の爪楊枝は先端を噛んでほぐすことで歯ブラシの様に歯を磨くことに使う事もできる、というかそのような使い方が念頭にあったのですね。実際、爪楊枝を噛んで歯を磨く、というやり方はそんなに昔のものではありません。プラスチックの発明自体はそれなりの歴史があるものの、プラスチックが本格的に家庭に導入される様になったのは戦後の事なのですから。
こう考えると世界のほとんどの人々がプラスチックの歯ブラシを使っている、という事実には改めて驚かされますね。
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