自動車のスピードメータとGPS(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
フィールドワークに便利なタブレット。圏外でも使えるGPSの機能を用いればカーナビとしても優秀、という話をしてきましたが、今回はそのタブレットのGPS機能を使って車の速度が測れる、というお話です。GPSの衛星からの情報は位置情報だけですが位置の時間変化を追跡すれば速度も分かる、というのは簡単な話。実際われわれが使っているMPAS.MEのナビでも車の速度が表示されます。
さて、問題はここから。今年の2月末、西オーストラリアにフィールドワークのために出張したのですが、その際に気がついたこと。
GPSから算出された速度と自動車のスピードメータに表示される速度が微妙にずれている
のです。正確にはGPSで算出された速度よりスピードメータの速度が数%ほど大きく表示されているのです。
別に1割2割違う、という話でもないので気にするような事でもないのですが移動時間の間の暇つぶしに少し理由を考えてみました。
まず、GPSから算出される速度について。GPSが正しく位置を測定していることはちゃんとナビゲータとして利用できることからはっきりしています。時間についても間違いようがないでしょう。そうなると考えられるのはポイントとしては正しく測定されているのに経路としては合っていない、ということ。つまり本当の経路は曲線なのにそれを折れ線で近似しているような状態でしょうか。でも曲線と折れ線を比べれば折れ線の方が短いはず。同じ時間で移動距離が短くなるなら折れ線になってしまうGPSのほうが遅い速度を示すはずです。
では問題はスピードメータにあるのでしょうか。
スピードメータ動作原理については気にしたこともなかったのですが、やはりどこかでタイヤの回転数を計測していて、それにタイヤの周囲長をかけ算して速度を算出しているのではないかと思います。(原理的にはジャイロセンサーを利用することも考えられますが、今のセンサーはどのくらいのレベルなのでしょうか。)
さて、タイヤの回転数を測定しているとしたらその測定値はかなり正確なはずで、こちらに問題があるとは考えにくい。一方で一回転ごとの移動距離の評価にはスリップがあればズレが生じます。もっと言えば、スリップがないとしてもタイヤの周囲長を正しく評価できるのでしょうか。単純に車の自重でタイヤが潰れるだけでタイヤが一回転したときの移動距離は加重無しのときの移動距離とは異なる、異なって短くなると思われます。タイヤの変形を考慮しない場合、実際の移動距離が短くなった分だけ速度を過大に評価するのではないでしょうか。
タイヤの変形を正確に予測したり測定したりするのはかなり難しそうです。その一方で車のスピードを多少過大評価することに大きな問題はなさそうです。(過小評価だと「その気がないのにスピード違反」となってしまいますが。)そう考えると自動車メーカーは正確な速度を表示することよりも過小評価をさけて多少大きなスピードを表示するインセンティブがあるように思います。
さて、正解はどうなのか。私には確かめるすべはないのですが、まあそんな想像をしながらドライブの時間を過ごしたのでした。
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