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サステイナブルな文化財(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ノートルダム大聖堂で火災が発生した、という情報を知ったのは4月16日のニュースからだったと思います。ヨーロッパの宗教や建築についてほとんど知識も興味も無い私のような人間でもなんとなく存在を知っているノートルダム大聖堂ですから、それが大きく毀損したということに世界の誰もが多かれ少なかれ悲しんでいることでしょう。

 私としては「ヨーロッパの建物は石造り」という先入観が強くて最初は火事が起こること自体が不思議に思えました。まあ鉄筋コンクリートの建物だって火事にはなるわけですから別におかしなことではない、というか当然のことなのかも知れません。そんな程度なので「ノートルダム大聖堂が火災」ということの深刻さが今ひとつピント来ない。では、日本で考えたらどんな事態に相当するのだろう?

 「正倉院が火災に...」それは大変だ!

 「法隆寺が燃えている...」なんてこった!

 「伊勢神宮が灰に...」ええっ!えーっと、それは別に良いんじゃないかな。

いや、もちろん火事があったらそれはそれで大変なのですが、こと伊勢神宮に関して言えば「もう一回造れば良いんじゃない」と言うことになるのでは。

 

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 別に伊勢神宮を軽く見ている訳ではありません。伊勢神宮には「式年遷宮」という制度、というかしきたりがあってそもそも20年に一度は建て替えられることになっているのです。

 この「式年遷宮」のおかげで伊勢神宮は千年近い歴史を持ちながら建物としては新しく、火災に対しても強い耐性を持っています。「燃えない」のではなく「燃えても作り直せる」という意味で強い。他の文化財も火災の後に作り直すことはできますが、それはあくまでも「修復したもの」に過ぎません。ただ伊勢神宮だけが作り直してもなお本物だということが信じられるのだと思います。


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 さて、ここまできて表題の「サステイナブルな文化財」について。どんなに強固な建造物もいつかは壊れてしまうのが世の定めですが、伊勢神宮は単なる木造建築でありながら「式年遷宮」が続けられる限り永遠の寿命を保つことができるのです。では伊勢神宮はサステイナブルなのでしょうか。

 それは日本の社会が「式年遷宮」を続けられる程度の豊かさとゆとりを持ち続けられるかどうかにかかっていると思うのですが、いかがでしょうか。

 

江頭 靖幸

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