ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの意外な相違点(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
先日の記事ではGPSを利用した自動車の速度測定値と自動車のスピードメータのずれについて考察したのですが、今回は自動車のお話。西オーストラリアにフィールドワークに言った話の続きです。
フィールドワークの現場の一つの農場の中の植林地があります。フィールドワークの開始前に農場主さんに挨拶がてら現場の様子を聞くのですが、今回言われたのは
今年の夏は最初は涼しかったけど今はものすごく暑いんだ(オーストラリアは南半球なので2月末から3月は夏なのです。)
刈り取りが終わった畑も今は完全にカラカラだよ。(この地域では比較的に降雨量の多い冬に農業を行います。)
ところで、今回はどんな車を借りてきたんだい?4WDのディーゼル車かい?
4WDは当然なのですが、今回はディーゼル車ではなくてガソリン車をレンタルしていました。車のクラス、というか大体のサイズは指定できるのですが、レンタカー会社では細かい車種の指定ができません。ディーゼル車は人気が高いらしく今回はガソリン車となったのです。農場主のケンさんにそう話すと
そうかー。じゃあ畑の中には入らないようにしないとなあ。
詳しく聞くと、どうやらガソリンエンジン車が枯れ草の上を走ると野火の原因になることがあるそうなのです。ガソリン車だと車の下の草に火がついて火事になる。ディーゼルエンジン車ならそんな問題はないのだとか。
レンタカー会社の車種選択の画面。ガソリン車かディーゼル車かは選べない仕様になっています。
はて、これは一体どういう理屈なのでしょうか。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違いは点火のメカニズムにあります。空気と燃料を混ぜ合わせ、ガソリンエンジンでは点火プラグによって爆発を引き起こします。ディーゼルエンジンの場合は圧縮することで自然発火させています。ここまでの違いはよく説明されるのですが、それがどのように「下草に火がつくかどうか」に関係するのでしょうか。
高い圧力まで圧縮されるディーゼルエンジンは大気圧にもどって排気されるまでにガソリンエンジンの場合より大きく膨張します。それを考えるとディーゼルエンジンの排気温度はガソリンエンジンよりも低いのではないでしょうか。それがこの違いの原因ではないか、などとドライブ中に考えていたのですが...。
本学工学部の機械工学科の先生にこの話をしたところ、
そりゃ、燃料の違いでしょう。エンジンバーストで燃料が地面に落ちたとき、ディーゼル燃料なら沸点が高くて発火の心配もないですが、ガソリンは火がつきやすいですからね。
なるほど確かに。ガソリンエンジンよの排気温度がディーゼルエンジンより高い、というのは本当だそうですが、でも発火の原因としては枯れ葉にガソリンの方がありそうな原因ですね。
「解説」カテゴリの記事
- 災害発生時の通信手段について(片桐教授)(2019.03.15)
- 湿度3%の世界(江頭教授)(2019.03.08)
- 歯ブラシ以前の歯磨き(江頭教授)(2019.03.01)
- 環境科学の憂鬱(江頭教授)(2019.02.26)
- 購買力平価のはなし(江頭教授)(2019.02.19)