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電球って必要かな?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ずいぶん昔、テレビの海外ドキュメンタリーを見た記憶なので出典を明示できないのですが「いつまでも切れない電球がある」という話がありました。普通の電球は長い短いの違いはありますが、長くても数年の間にはフィラメントが切れてしまって新しいものに交換しなくてはなりません。最近の電球は製造方法が規格化されているせいか、切れるまでの持ち時間が驚くほど均一です。同時期に交換した電球が同じ時期に次々と切れたりします。しかし、古い時代に造られた電球の寿命は大きくばらついており、極端に切れやすい電球がある一方でいつまでも切れない電球がある。それも数年と言わず数十年単位で点灯し続けている、というのです。

 まあ、これがどの程度信頼できる話なのかはよく分かりませんが、よほど特別な電球で無い限り、電球の寿命はやはり長くて数年といったところです。電球の寿命は照明器具の寿命より短い。逆に言えばシステムとしての照明で一番耐久性に乏しい部分が電球、もっと限定的に言えば電球のフィラメントだといえるでしょう。電球は、その耐久性の弱い部分をモジュール化した部品であり、これが簡単に交換可能であることが照明を広く普及させるうえで大切だったことは想像に難くありません。電球が切れるたびに業者を呼んで修理を依頼する必要がある、となると照明の導入はひどくコストのかかるものになるでしょうからね。

 さて、以上の議論は電球が切れやすい、という前提で話が進んでいました、現在その前提は崩れているのではないか、というのが今回のポイントです。

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 もちろん、電球は電球で、白熱電球の寿命が急に延びたわけではありません。以前から造られていた蛍光灯電球に加え、現在ではLED電球もできています。そして、LED電球の寿命は40,000時間とも、10年とも言われています。こうなると照明システムの中で「一番耐久性に低い部分」とは言えないのではないでしょうか。多くの照明システムで最初に取り付けたLED電球がシステムの更新時までそのまま利用されることになるとすれば、そもそも交換するための機能は不要だった、と言える。つまり、交換可能な電球を取り付けるのではなく、最初からLEDを照明器具に一体化させてもかまない、ということです。電球のねじ込み部分は交換のために取り付けられたものですし、あの形とサイズも白熱するフィラメントを入れるガラスの加工の都合で決まっていると考えられます。そんな制約を外れて自由に照明を設計できる。携帯電子機器の電池が組み込み式になって設計の自由度が増したように、部品の性能向上は製品の設計の自由度を上げることでより良い製品の開発につながると期待できます。

 もちろん、電球型のLEDは現在すでにある照明器具の省エネルギー化に役立つので生産は続けられるでしょうが、やがては過去のもの、となるのかもしれません。

 

江頭 靖幸

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