二酸化炭素は水に「大変よく溶ける」事は、中学校の教科書にも記載されている事実です。よく振ったコーラが吹き出すイメージですね。
中学校の教科書には石灰水に二酸化炭素を吹き込むと炭酸カルシウムができ、弱アルカリ性の水溶液に二酸化炭素を吹き込むとフェノールフタレインのマゼンタ色が消えていく様子から、二酸化炭素は水中で「炭酸」になる。そして中和反応により炭酸カルシウムができ、アルカリ性の液体が中和されるとしています。
炭酸そのものの単離はごく最近です。1991年の論文で単離が報告されています。しかし、このH2CO3の炭酸は理論計算によって、水1分子でも存在すると二酸化炭素と水に戻ってしまう、そうです(Angew. Chem., Int. Ed. 1991, 39, 891‒894.)。
ちょっと待った!。これまでの常識と最新の研究結果に矛盾があるぞ。
確かにアルカリ水溶液は二酸化炭素を炭酸の形で固定化するでしょう。この場合は水溶液中に大量の水酸化物イオンがあり、二酸化炭素を炭酸化してさらにその塩をつくるでしょう。しかし、純粋な水は絶縁体として知られています。つまり水酸化物イオンの濃度はごくわずかです。その濃度は1×10-7 mol/L ですね。ごくわずかです。
中学校の二酸化炭素の水への溶解実験はほとんどがアルカリ条件です。フェノールフタレインのマゼンタ色が消えていく実験について言えば、その変色域は、ややアルカリ性側です。フェノールフタレインはpH8.2未満で無色になります。
本当に二酸化炭素は水中で炭酸になって溶け込んでいるのでしょうか?。
水と二酸化炭素から炭酸のできる反応式は
H2O(l) + CO2 (aq) ⇄ H2CO3
ですが、文献では、その平衡定数は25℃で1.7×10-3だそうです(J. Phys. Chem. 1969, 73, 3351–3356)。ということは、純水中に炭酸はほとんどないという事ですね。あれっ?。中学校や高校で習った事とちょっと違うぞ!。